双子悪魔の奴隷として転生したのにたっぷり愛されて育ちました！

2 十年目の花嫁

3 尻のために

「いただきまーす！」

　我慢できずにケーキを頬張った。
　見た目通りのふわふわ食感。口に入れた瞬間にスポンジからじゅわっと甘い蜜があふれてきて、お花畑の香りに全身が包まれるようだった。
　ぼくは夢心地のままリテナを見る。おいしいケーキを作ってくれたお礼を早く言おうと思った。
　だけど、目と目が合うなりプイッとそっぽをむかれてしまった。やっぱり反抗期なのかも。

　コニーの淹れてくれたお茶もとても美味しくて、何杯もおかわりした。途中、お茶に入れるフレーバーとして薬らしき小瓶をこっそりすすめられたけど、リテナのことばを思い出して断った。
　コニーは基本やさしいけど、いろいろと注意しなきゃいけないのかも。



　ケーキをお腹いっぱい食べたら少し眠くなってきて、ベッドに戻って二人のお話を聞いた。

「ベルくんがなるべく早くこの国のことを分かるように、絵本をつくったの。気に入ってもらえたら嬉しいな」

　コニーはぼくの頭を撫でて、大きな絵本を開いた。
　長い長い黒髪の男の人が、青色と黄緑色の瞳を輝かせて微笑んでいる──。

　彼こそがフェンダール国を千年間支配し続けた魔王フェニレフ=ジ=レュンだ。強大な力を持つ魔族でありながら、人間に育てられ、心から人間を愛していた。

「人間のなかでも、美しい尻を持つイケメンをなによりも大切にしていたの」

「尻のために平和を維持する無類の尻好きだった。まったく、変なヤツだ」