双子悪魔の奴隷として転生したのにたっぷり愛されて育ちました！

2 十年目の花嫁

4 残った目

　隣国が攻めてきて戦争が起こりそうなとき、魔王は自身の角や指、臓器を躊躇なく引きちぎったという。
　強い魔力の宿った体の断片を譲り渡し、争いではなく協力関係を結ぶことを選んだ。

　命が尽きるまでの千年間のうち、魔王は平和と引き換えに体のほとんどを失った。
　それでも最後まで大切に守っていたのは右と左の目だった。


「どうして目を？」

「たぶん、イケメンの尻を見るためだろうな」

「片目でもおしりは見れるよね？」

「おしりは二つに割れてるから、目だって二つないとダメだって思った……かもねぇ」

「とにかく、魔王は手や足を失いながらも最期まで瞳……オレたちのことだけは守り続けたんだ」

「民の笑顔を見守るために目はどうしても必要だから──ってみんなには説明してたらしいけど、バレバレだったみたいだよ。チャーミングな魔王様って民からの信頼は厚かったらしい」


　魔王は「イケメンの美尻をもっともっと見ていたかった」と言い遺し、亡くなった。


「最期の願いが込められた二つの目玉に、どういうわけか命が宿って、ボクたち双子が生まれたってわけ」


　だから双子の魔力の源は『イケメンの美尻』だ。
　大きくてかたちのいい引き締まった尻を見るたびに力がみなぎるらしい。