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4.クロスするふたり

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「なんかしたらブッ殺すからな」

「なんかって……、たとえば?」

「自分で考えろ。クソが」

「そうですか……。ぼく……ばかだからなぁ……」

 鶴見は少しせつなそうにぽそりとつぶやいた。あたたかいスープを飲んだことでほんのりピンク色にそまった頬が、彼の幼さを引き立たせてくる。

「凛くんはやさしいし、かっこいいし、ちゃんとしてるし、ケンカも強いし、料理もうまくていいなぁ。ぼくにはもったいないぐらいだ」

 鶴見レベルのぐずぐずにダメなやつに褒められてもちっとも嬉しくない。

「……弁当は夕飯とかの残り詰めてるだけだ。それぐらい誰にだってできんだろ」

「ぼくにはできないよ。すごいなぁ」

 褒めるレベルがあまりにも低すぎて、マジで嬉しくない。
 見えすいている。鶴見はそれで俺を乗り気にさせたいのだろう。そんな手に乗るわけにはいかず、怒りにまかせて箸をおいた。
 
「オンナみてぇだろ」

「え?」

「他のやつに言われたんだ。『お前がオンナだったら結婚したかった』って」

「ああ、健太さんですか。気にするだけ損ですよ、そんなの」

「あ?」

 てっきりまたふざけたことを言う気なのだろうと身構えていたが、鶴見はとても真剣だった。

「ぼくはオトコかオンナかでしか他人を愛せないヤツってとてもつまらないと思うんです」

 その視線は相変わらず俺一点には定まらずにふわふわと落ち着かないが、口ぶりはいやにハッキリしていた。おまけにたたみかけるような早口。

「凛くんはいまの凛くんだからステキなわけです。その良さが分からないようなやつは、きっと凛くんが爆裂巨乳のゆるふわ合法ロリ娘だったとしてもカノジョや結婚なんてあり得ないと思います。できたとしても、もてあそばれて泣かされて捨てられて終わりですよ。カラダだけが目的のクズです」


 鶴見の分析はあまりに盲目的だった。──いや、それ以上に的確だった。
 
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