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14.破壊者/いたみ ※
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しおりを挟む「……龍広」
頭の上でケティの声が聞こえた。
彼は俺を抱き起こすと、後ろから腕を回してきた。
半分眠っている身体には、うまく力が入らない。ただ身をまかせるしかなかった。
「そんなに、泣かないで……」
ケティは肩にアゴを乗せて、両の腕に、ぐっ、と力を入れてくる。
「離したくなくなっちゃう」
「……っ」
「龍広はこれからもずっと、あたしと一緒よ」
その声は今までになく優しい。
「いいでしょ」
左手は胸をまさぐり、突起を撫で上げてくる。傷ついているそこは快感と共に痛みを産む。
「っ、あ……!」
「貴方はもうとっくにあたしのものなんだから」
「……んんっ……」
「心も頂戴。全部……全部、欲しいの。頂戴な」
「やぁ、……」
「返事は?」
「――アッ!」
爪先で弾かれ、身体が無残に反応し、ひくっ、と跳ねる。
その拍子に目頭からは雫がこぼれた。温度の無い、涙が。
「ほら、早くして」
「っ……、い、……ぁ……」
――響に、逢いたい。
気がつくと、俺は首を振ろうとしていた。けれども力を失った身体。拒絶の動きにはならぬほど、髪がかすかに揺れるだけだった。それでも、
「……い、や、……だっ……」
これ以上、ひれ伏すのは嫌だった。
「あら。どうして?」
「ひっ、び……」
「報われない想いがそんなに大事? あたしなら、ずっとこうしてそばにいてあげられるのに」
まるで傷口を舐めるように、首筋から耳にかけて舌を這わせてくる。
「ふぁあ……んっ!」
前のめりになって逃げようとしたが、胸の上にある手がそれを許さない。
ケティの唇は耳たぶを食み、中に舌を挿し入れ、吐息を吹きかけてくる。
「ねぇ。あたしのこと、そんなに嫌い?」
「……っ」
「嫌いなのね」
「ちがっ……、おっ、……俺は……、たっ……拓海、兄さ……、……ッ!」
その瞬間、胸の突起を両方同時にひねり上げられる。
「あうぅ!」
「拓海が何だって?」
ケティは明らかに苛立ち始めていた。やさしかった声が一転して乱暴なものへと変わっていく。
「いまさら拓海がなんだって言うの」
「んっ――!」
肉の粒を潰すかのようにぐりぐりと動かしてくる。
「……やっ! もう、っ……裏切り……た、くな……ッ……やああっ!」
たとえ何度重なり合っても、俺とケティは身体の関係でしかない。
でも兄さんにとっては、とても大切な人で――。
「ハハッ」
ケティはまるで他人事のように笑いだす。
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