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14.破壊者/いたみ ※
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しおりを挟む「あっ……ああ……!」
指先で傷口を押し広げられると、痛みと共に新しい涙が生まれる。
ケティの言うとおりだ。
俺は、自分だけこの罪から逃れようとしている。
俺は彼に犯された“被害者”なのだから、許されてもいいと心のどこかで考えている。
この夜が明けたら、響に会ってこの傷と痛みを慰めてもらい、兄さんとはいつもみたく穏やかな時間を過ごしたい――などと、思っている。
「このまま逃げたところで、悔やむのは龍広なんだから……」
ケティの寂しげな声が、頭の奥に滑り込んできた。濡れた彼の一部が入ってくるときのように、ずるずると。
「だって、貴方、もうこんなに汚れてるのよ?」
この身体が彼の言葉一つ一つにきつく縛られていく。鎖のように冷たく絡みついていく。
「こんなに汚れ切った身体で、響くんに抱かれて良いはずがないでしょ?」
「……っう!」
今まで必死に守り続けていた希望が、涙で歪み、見えなくなっていく。
ぜんぶケティの言う通りだ。
どんなに綺麗事を並べたって、慰めてもらったって、今までのことが無くなるわけではない。
兄を裏切り、罪を重ね続けた事実は、もう一生消えやしない。
「あたしと貴方は同じなの……。もう、一緒にいるしかないの」
決して許されないことを繰り返してきた。そんな俺が、幸せになれるはずがない。
求めたところで誰かを不幸にするだけ。
きっと響も――。
俺なんかといつまでも一緒にいたら、不幸になる。
肉親を裏切ってしまえる俺は、いつか、響のことでさえも――。
「分かったみたいね、龍広」
「ぐっ……」
「そうよ。龍広のそばにいてあげられるのは、あたしだけ――」
ケティの指先は胸を離れ、下腹部をたどっていく。
「このまま堕ちていきましょ、二人だけで」
「――ひゃっ!」
そして無防備だった俺のものを無理やりに掴み上げた。根元で押さえつけるように強く。痛みを覚えるくらいに。
「うっ……く、……ぅうっ」
湿った冷たい指にしっかりと固定され、まだ何もされていないのにビクビクと震えてしまう。
こちらはもうとっくに許容量を超えているというのに、ケティはまだ物欲しそうに唇をゆるませている。
「……あッ!」
舌先で軽くなぞられただけで俺の身体はその気になってしまう。
そうだ。今夜は彼のものを受け止め続けただけで、まだ、たいして――。
「まっ、……やぁ、ッ!」
包み込んでいた指が下から上へ、押し上げるような往復運動を始める。先端に押し当てられた舌も動き、ずるずると通り過ぎていく。
「そこ、や、あっ! んお、っ……んう、ああ、ぁああああーーーーっ!」
同時に与えられる二つの刺激に、どうしようもなく身悶え、感じるままに絶叫していた。
「……やぁ、ひ、ゃああああっ!」
またこんな声を張り上げてしまう自分を恥じながらも、逆らえない。
時折、痛みすらある刺激に、果たしてこれは愛撫なのか暴力なのか――そんなことすら分からなくなっていく。
愛撫にしては強く、暴力にしては弱すぎて。
もう、どっちだっていい。
もっと壊してくれればいい。
もっと痛めつけて。
もっと辱めて。
それを望んでいるのだから――。
俺の身体は、きっと。
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