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19.夏の夢/躊躇い
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向き合えない理由は、もう無くなった。
通じ合えなくてもいい。
一言だけでも想いを放つことができれば……。
きっと満足できる。
――『響くんにあんたの気持ち、さっさと伝えちゃいなさい』
そんなことできるだろうか。俺なんかに。
考えただけで、とても怖いのだ。
今まで育んできた“友情”を破壊してしまうのは。
たとえ、既に歪み始めているとしても――。
天井を見上げたまま、無意識のうちに唇をなぞっていた。人差し指の腹で。その感触に酔いしれてしまうほど何度も何度も。やさしく往復する。
あの日の衝動的なキスは、彼にどう伝わったのだろう。
できることなら、精神的におかしくなった末の行動だと思っていてほしい。そうやって寂しさを肉体で紛らわせてきた最低な男だと思われていい。
裏側の感情にさえ、気づかれなければ――。
どんなに背中を押されたところで、結局、臆病者は臆病者だ。
このまま心を隠していたいのだから、いくら考えたところで先には進めない。
でも、俺は――。
響に会いたい。
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