魔法の遺産

第4章

試練の時

アレンはリリスとの修行を重ね、徐々にその力を高めていった。毎日、厳しい訓練が続き、時には疲れ果てて倒れ込むこともあった。しかし、彼は決して諦めなかった。魔王軍との戦いが迫っていることを自覚し、強くなることを心から望んでいた。

ある日、リリスはアレンに言った。

「今日は特別な試練を与える。」

「試練？」

アレンは不安げにその言葉を聞いた。リリスは冷静に続けた。

「お前がどれだけ成長したかを確認するためだ。お前の魔法の力だけでは、この先の戦いには勝てない。だから、今日はその力をさらに引き出す方法を学ばせる。」

「どうすればいいんだ？」

リリスはアレンを見つめ、その目には何か決意のようなものが込められていた。

「お前の力を試すため、まずは一度だけ私を倒してみろ。」

アレンは驚き、目を見開いた。

「いきなり、倒せっていうのか？それは無理だ…！」

リリスは軽く笑うと、手を前に差し出して言った。

「私を倒すことができなければ、お前は魔王軍に立ち向かう資格がない。」

その言葉に、アレンは心が引き締まるのを感じた。リリスは強い魔法使いであり、彼女に勝つことは簡単ではない。しかし、それでもアレンは挑戦する決意を固めた。

「分かった、やってみる。」

アレンは覚悟を決め、両手を広げて呪文を唱え始めた。

「光よ、我に力を！」

光の魔法が彼の手から放たれ、リリスに向かって飛び込む。しかし、リリスはそれを簡単にかわし、アレンの顔に微笑みを浮かべながら言った。

「その程度では、私を倒すことはできない。」

アレンは再び魔法を放つが、リリスはその全てをかわしていく。その動きはまるで風のように軽やかで、アレンの力が全く通じないことを実感する。

「くっ…！」

アレンは自分の魔法が効かないことに焦りを感じ、次第に攻撃の手を緩めることになった。リリスはその様子を冷静に見守りながら、次第に歩み寄ってきた。

「力を使うことだけが魔法使いではない。真の力は、その力をどう使いこなすかにかかっている。」

リリスが一歩踏み込むと、アレンはその距離を保とうと後退し、次の魔法を唱えようとした。しかし、その瞬間、リリスは素早くアレンの前に立ち、手を振り上げた。

「もう終わりだ。」

リリスの一撃がアレンに直撃し、彼は地面に倒れ込んだ。身体全体に痛みが走り、息が荒くなる。

「う…うう…！」

「これが現実だ。」

リリスは冷静に立ち、アレンに手を差し伸べることはなかった。アレンは地面に手をつき、ゆっくりと立ち上がろうとする。

「まだ…まだ戦える！」

アレンは目を見開き、再び立ち上がった。身体の痛みを感じながらも、彼は心の中で決意を固める。リリスが言った通り、彼はただ魔法を使うだけでは戦えない。それを理解した今、彼は新たな決意を胸に抱いていた。

「俺は、絶対に諦めない！」

その瞬間、アレンの手のひらから新たな光が放たれる。それは、これまでのものとは違う、強く、鋭い光だった。アレンはその力を感じ取ると、リリスに向かって放った。

リリスはその光を見て、驚いた表情を浮かべる。

「これは…！」

リリスは素早くその光を受け止めようとしたが、その光は彼女の予想を超える速度で迫っていた。ギリギリでそれを避けたリリスは、やや息を飲みながらアレンを見つめる。

「お前、ついにその力を引き出したな。」

アレンはその光が自分の力であることを実感し、心の中で歓喜を覚える。

「できた…！」

リリスはその光を再度見つめ、静かに言った。

「これで、少しは魔王軍に立ち向かえるかもしれない。だが、まだ足りない。」

アレンは少し肩を落としたが、リリスはそのまま続けた。

「お前がさらに強くなるためには、心を鍛えることが必要だ。ただ魔法の力を使うだけでは、何も変わらない。」

「心を鍛える…？」

「そうだ。お前はまだ、自分の力を完全に信じていない。その心の迷いを取り除くことが、次のステップだ。」

アレンはその言葉に深く頷いた。確かに、彼はまだ自分の力に対する不安を感じていた。だが、この試練を通じて、少しずつその不安を乗り越えようとしている自分がいることを感じ取った。

「分かった。もっと強くなるために、心も鍛えなきゃいけないんだな。」

リリスはアレンに向かって微笑んだ。

「その通り。今はまだその力を完全に引き出すことはできないが、必ずできるようになる。次の試練は、それだ。」

アレンは決意を新たにし、次の修行に挑むことを心に誓った。魔王軍との戦いはますます厳しくなり、彼に課せられた試練は続いていく。