魔法の遺産

第7章

迫る影

アレン、カイル、リリィの三人は、魔王軍との戦いに向けて準備を整えるため、さらなる仲間を集める旅を続けていた。これまでの修行と戦いを通じて、少しずつ絆を深めてきたものの、彼らはまだ力不足を感じていた。魔王軍に立ち向かうには、もっと強力な仲間が必要だとアレンは確信していた。

「次はどこへ行くんだ？」

アレンがリリィに尋ねた。リリィは地図を広げ、少し考え込むようにしてから答えた。

「この辺りには、伝説の戦士が住んでいるという噂があります。彼は魔王軍を倒すために戦ったことがあると言われているんです。」

「伝説の戦士？」

カイルが疑いの目を向けながら言った。

「本当にそんな人物がいるのか？」

リリィは微笑みながら答えた。

「噂ではありますが、その戦士の力が本物だという話もあります。私たちの力を強化するためには、あの戦士の力を借りることができれば大きな助けになるでしょう。」

アレンはその話に興味を引かれた。伝説の戦士の力が本物であれば、彼らの戦いにとって非常に重要な存在になるはずだ。

「じゃあ、行こう！その戦士に会いに行くんだ。」

アレンの決意を聞いて、リリィとカイルも頷いた。

「そうだな、行ってみる価値はあるだろう。」

三人はすぐに出発し、伝説の戦士の元へ向かうことになった。道中、彼らは様々な危険に直面しながらも、互いに支え合い、進んでいった。しかし、目的地に近づくにつれて、何か不穏な気配が漂い始めていた。

ある晩、キャンプをしていた時、アレンは不安を感じて目を覚ました。周囲を見回すと、誰もいないはずの森の中から微かな足音が聞こえてくる。

「誰かいるのか？」

アレンは声を潜めて呟いた。リリィとカイルもすぐに目を覚まし、周囲を警戒し始めた。

「気をつけろ。何かの気配がする。」

カイルが言った。その言葉に、アレンはさらに緊張を高めた。足音は近づいてくるばかりで、やがて不気味な影が三人の前に現れた。

「誰だ…？」

アレンが声を上げると、その影はゆっくりと姿を現した。それは、黒いローブに身を包んだ人物だった。顔はフードで隠れており、その存在自体が不気味なオーラを放っていた。

「お前たち、魔王軍に仕える者だな？」

その人物が低い声で言った。アレンは驚きの表情を浮かべ、すぐに反応した。

「魔王軍の者？ どうしてそんなことを…」

「私の名前はダリウス。魔王軍の精鋭部隊に所属している者だ。」

ダリウスと名乗ったその人物は、冷徹な目を光らせてアレンたちを見つめていた。

「お前たちが魔王軍に立ち向かおうとしていることは知っている。だが、ここでその足音を止めてやる。」

アレンはすぐに魔法を構え、カイルも戦闘態勢に入った。リリィは後ろに下がり、精霊の力を準備し始めた。

「くっ…！」

ダリウスが一歩踏み出すと、周囲の空気が一変した。彼の周りには、黒い霧が立ち込め、暗闇の中から鋭い刃が飛び出してきた。アレンはすぐにその攻撃を避け、反撃しようとしたが、ダリウスの動きは異常に素早く、次々と攻撃を仕掛けてきた。

「お前たちのような弱者が魔王軍に勝てるはずがない。」

ダリウスは冷笑しながら言い放った。その言葉に、アレンは怒りを覚えた。

「そんなことない！俺たちは負けない！」

アレンは力を振り絞り、魔法を放った。しかし、ダリウスはそれを軽々とかわし、再び黒い霧を使って攻撃を繰り出してきた。

その時、リリィが精霊の力を呼び起こした。

「精霊よ、我が力となれ！」

リリィが手を広げると、彼女の周囲に精霊たちが現れ、ダリウスの攻撃を受け止めた。その隙に、カイルが素早くダリウスに近づき、一気に剣を振り下ろす。

「これが、俺の力だ！」

カイルの剣がダリウスに迫ったが、ダリウスは冷静にその攻撃を受け流し、カイルを遠くへと吹き飛ばした。

「甘いな。」

アレンはその状況を見て、再び力を振り絞った。

「俺は…負けない！」

アレンの心に宿る力が一気に爆発し、強力な魔法がダリウスに向かって放たれる。だが、その瞬間、ダリウスは一歩後退し、冷ややかな目でアレンを見つめた。

「お前の力も、所詮はこの程度か。」

ダリウスはその言葉と共に、さらに強力な黒いエネルギーを放った。その力に、アレンたちは圧倒され、ひとときの隙を作ってしまった。

「くっ…！」

リリィとカイルも必死に立ち向かおうとしたが、ダリウスの力に押されていく。

「だが、これはまだ試練に過ぎない。」

ダリウスはその言葉と共に、最後の攻撃を放とうとしていた。だが、突然、周囲に強烈な光が現れ、その攻撃を遮った。

「な…？」

その光の中から現れたのは、伝説の戦士だった。彼は堂々とした姿で、ダリウスに向かって歩み寄る。

「お前のような者が、私の前に立つとはな。」

その一言で、ダリウスはひるみ、力を押し込むようにして後退した。

「誰だ…？」

伝説の戦士は静かに言った。

「俺の名前はエドガー。お前が何者であろうと、ここで止めさせてもらう。」