魔法の遺産

ことのは工房

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第14章

魔王軍の影

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アレンたちは遺跡を後にし、次なる目的地に向けて進んでいた。古代魔法を手に入れたとはいえ、その力を完全に使いこなすにはまだ時間がかかることをアレンは痛感していた。そして、魔王軍の動きがますます活発になっていることが、彼の心を重くしていた。

「アレン、次に行くべき場所が決まったの?」

リリィが問いかけてきた。アレンは少し考えた後、ゆっくりと答える。

「うん、魔王軍の拠点がある場所を調べたんだ。おそらく、次の目的地はそこだろう。」

「魔王軍か…」

カイルが険しい顔をして言った。

「でも、あの魔物たちが今度はどんな敵として立ちはだかってくるのか、予想がつかないな。」

「確かに、あの魔物たちはただの使い魔じゃない…魔王軍そのものの一部だったのかもしれない。」

エドガーが冷静に言うと、アレンは深く頷いた。

「だからこそ、早くその拠点に向かわないといけない。魔王軍が動き出した以上、俺たちもその動きを追わなければならない。」

仲間たちがそれぞれに決意を新たにしていると、突如として空を覆うような轟音が響き渡った。振り向くと、空に黒い翼を広げた巨大な影が迫ってくるのが見えた。

「何だ、あれは…?」

カイルが息を呑んだ。アレンも目を凝らしてその影を見つめる。

「まさか、魔王軍の…?」

その影が近づくにつれ、その正体が明らかになった。それは、巨大なドラゴンのような姿をしており、黒い鱗と赤く輝く目を持つ恐ろしい存在だった。

「ドラゴン…!?」

リリィが驚きの声を上げると、ドラゴンはその大きな翼を広げ、一気に地面に降り立った。その存在感は圧倒的で、周囲の空気が重く、緊張が走った。

「これは…魔王軍の使い魔、ドラゴンの「エリュシオン」か?」

エドガーが冷静に分析する。その名前を聞いて、アレンは少し身構えた。

「エリュシオン…?それが魔王軍のドラゴン?」

「そうだ。このドラゴンは、魔王軍でも非常に高い地位を持つ者だけが使役することができる存在だ。」

リリィが言い終わると、ドラゴンは低い唸り声を上げ、アレンたちに向かってその鋭い爪を振り上げた。

「気をつけろ!」

エドガーが叫ぶと同時に、ドラゴンはその爪を大きく振り下ろしてきた。アレンたちは慌てて飛び退き、爪が地面に突き刺さった瞬間、その衝撃で地面が揺れた。

「くっ…!」

アレンは魔法を解放し、火の精霊を召喚する。しかし、ドラゴンの力はそれを簡単に跳ね返し、さらに攻撃の手を緩めることはなかった。

「このままだと…!」

カイルが剣を構えながら叫ぶが、エドガーが冷静に言った。

「このドラゴンは、ただの使い魔に過ぎない。それよりも重要なのは、このドラゴンが我々に何を伝えようとしているかだ。」

その言葉が終わると、ドラゴンは再び大きく唸り、そして驚くべきことに、その唸り声が言葉のように響き始めた。

「お前たち…魔王軍に仕官するか?」

その声は低く、震えるような音でアレンたちの耳に届いた。リリィは驚き、目を見開く。

「な、何を言ってるの?魔王軍に仕官?」

「魔王軍に仕官し、我が力を得て…共に世界を支配しようとしないか?」

ドラゴンはそう言って、アレンたちに圧倒的な威圧感を放った。その力に圧倒されることなく、アレンは冷静に言った。

「魔王軍に仕官するつもりはない。俺たちは、魔王軍を倒すために戦っているんだ。」

ドラゴンは一瞬、アレンをじっと見つめた後、唸りながらその巨大な体を揺らした。

「ふむ…ならば、覚悟を決めろ。お前たちが俺に立ち向かうというのなら、いかなる力も無駄にはさせん。」

その言葉とともに、ドラゴンは再び爪を振り上げ、今度は火のようなブレスを吐き出した。アレンたちはその攻撃を避けるため、急いで分散して逃げた。

「すごい威力だ…!」

カイルが叫びながら、ブレスをかわす。だが、ドラゴンは次々と攻撃を繰り出し、アレンたちを圧倒していく。

「こんな相手を倒せるのか…!」

アレンは一瞬迷ったが、すぐにその迷いを振り払った。

「いや、俺は負けない。みんな、俺に続け!」

アレンは再び魔法を解放し、力を集中させる。その強大な魔法の力がドラゴンに向かって放たれた。その瞬間、アレンの中で何かが目覚めるような感覚がした。

「行け!」

その魔法がドラゴンに直撃し、強力な衝撃を与える。だが、ドラゴンはそれをものともせず、再び立ち上がった。

「どうした?その程度か?」

ドラゴンは笑うように言うが、アレンの目には決意が満ちていた。

「まだ終わらない。これからが本番だ。」
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