魔法の遺産

ことのは工房

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第15章

覚醒の力

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アレンは深く息を吐きながら、目の前のドラゴン、「エリュシオン」と対峙していた。ドラゴンの吐く火のようなブレスが大地を焦がし、周囲の空気が震えるように感じる。だが、アレンの心は動揺していなかった。彼の中で、古代魔法の力が渦巻いており、今こそそれを解き放つ時だと感じていた。

「アレン、無理しないで!あのドラゴンはただの使い魔じゃない、魔王軍の中でも特別な存在よ!」

リリィの声が背後から聞こえてきたが、アレンはそれを無視して前に進んだ。

「仕官するつもりはない。俺たちは魔王軍を倒すために戦っているんだ。」

アレンの言葉に、ドラゴン「エリュシオン」はまた低く唸った。

「ふむ…その覚悟、見せてもらおう。」

ドラゴンの巨大な爪が大地を引き裂く音とともに、再び襲いかかってきた。アレンはその爪を避け、素早く反応するが、その速度と力は尋常ではない。どうしても一瞬の隙を作られてしまう。

「どうした、アレン?」

エドガーが叫びながら、ドラゴンに向かって弓矢を放つが、それはあまり効果がないように見える。

「こんな攻撃じゃ、あのドラゴンに傷一つつけられない。」

カイルも剣を振るいながら、呻くように言った。

「その通りだ。このドラゴンの力は、あの魔王軍でも最強の部類だ。」

アレンはその言葉を耳にしながら、ふと書物のことを思い出した。あの書物に記されていた力は、ただ強力なだけでなく、使いこなす者の心と繋がるものだと感じていた。

「この力を…俺が制御すれば…」

アレンの心が決まった。古代魔法を使いこなすためには、ただ力を振るうだけでは足りない。それを深く理解し、自分自身の心と一体化させなければならないのだ。

「みんな、ちょっと待って!」

アレンが叫び、リリィたちはその声に驚いて足を止めた。

「アレン!?」

「今、俺がやらなきゃダメだ。」

アレンは深呼吸し、目を閉じて集中した。心の中で、古代魔法の力を感じ取る。書物の中で学んだ魔法の使い方、そしてその力を制御するための道筋を思い出しながら、アレンは魔法を練り上げていった。

その瞬間、彼の体が光り輝き、古代魔法の力が彼の体内で一体となる。周囲の空気が揺れ、地面が震えるような感覚がアレンの周りを包み込む。

「これが…俺の力!」

アレンはその力をドラゴンに向けて解き放つ。すると、巨大な魔法の波動がアレンの前に現れ、それがドラゴンに向かって一気に突き進んだ。

「この力…!」

エリュシオンはその波動を見た瞬間、少しだけ動揺したような気配を見せたが、すぐにその攻撃を受け止めようとした。しかし、アレンの魔法はドラゴンの力を圧倒するほど強大だった。

「ぐおおおおお!!」

ドラゴンはその魔法の衝撃を受け、空に浮かび上がり、爪を振り上げて必死に防御しようとする。しかし、アレンの魔法は止まることなく、ドラゴンの体に直撃し、その巨大な体が大きく揺れた。

「やったか…?」

アレンが息を飲んで見守る中、ドラゴンは数秒間その場に立ち尽くしていたが、突然、爆発的にエネルギーを放ちながら再び地面に着地した。

「まだ…終わりじゃない!」

その声を聞いて、アレンは顔をしかめた。エリュシオンは完全には倒れていなかったのだ。だが、先ほどの攻撃でドラゴンは明らかに傷を負っている。それがアレンにとって希望となる。

「このまま倒しきる!」

アレンは再び魔法を集中させると、今度はその力をさらに高めてドラゴンに向けて放った。その魔法の波動は、まるで時間を止めるかのような速さでドラゴンに直撃し、ついにエリュシオンの力を完全に封じ込めた。

ドラゴンは大きく崩れ落ち、その体が粉々に砕け散った。

「やった…!」

アレンは疲れた体を支えながら、仲間たちに向かって笑顔を見せた。リリィたちはほっとしたように息をついたが、すぐにアレンに駆け寄った。

「アレン、すごいわ!」

「いや、みんなが支えてくれたからこそ、できたんだ。」

アレンは謙遜しながら、仲間たちに感謝の言葉をかけた。だが、彼の心には次なる戦いへの決意が強く宿っていた。魔王軍が動き始め、今後の戦いがさらに厳しくなることをアレンは感じ取っていた。

「これで終わったわけじゃない。次の戦いが待っている。」

カイルが言うと、アレンはうなずきながら答えた。

「そうだ。魔王軍との戦いは、まだ始まったばかりだ。」

その言葉が終わると、彼らは再び旅路を進み始めた。魔王軍の脅威を打破するため、そして失われた平和を取り戻すため、アレンたちの冒険は続いていく。
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