魔法の遺産

第16章

闇の先に

アレンたちは、ドラゴン「エリュシオン」を倒した後、しばらくその場で休息を取った。戦いの余韻が残る中、仲間たちはそれぞれに疲れを感じていたが、次の目的地に向かうため、すぐに再び旅路を進める決意を固めていた。

「アレン、大丈夫？」

リリィが心配そうにアレンに声をかける。アレンは少し疲れた様子で振り返り、微笑んだ。

「ああ、大丈夫だよ。ただ、少し体がきついだけだ。」

「無理しないで、もっと休んだ方がいいんじゃない？」

「いや、今は進むべき時だ。魔王軍が本格的に動き出している。俺たちが立ち止まっている間にも、あいつらはさらに力を増しているかもしれない。」

アレンの言葉に、リリィはしばらく黙って考え込んだ。確かに、魔王軍の脅威が日増しに強くなっているのは、誰の目にも明らかだった。

「それに、今ならあのドラゴンの情報を持っている。魔王軍の次の動きを予測する手がかりにもなるかもしれない。」

エドガーが冷静に言った。その言葉に、仲間たちはうなずきながら再び出発の準備を整えた。

「よし、それじゃあ行こう。」

アレンが先頭に立ち、仲間たちはその後に続く。だが、彼らが向かう先には、思いもよらない困難が待ち受けていた。


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数日後、アレンたちはついに魔王軍の拠点へと近づき始めていた。その拠点は、広大な森の奥深くにあり、周囲には何もないかのような静けさが広がっていた。しかし、その静寂は何か不穏なものを感じさせていた。

「ここが魔王軍の拠点…」

カイルが言いながら、周囲を警戒している。その目線の先には、暗く重たい雲が空を覆い、気温も異常に低くなっていた。アレンは何かがおかしいと感じながら、さらに進んでいった。

「どうした、アレン？」

リリィがアレンに声をかける。アレンは一瞬立ち止まり、耳を澄ました。

「何か…気配がする。」

「気配？」

「うん、何か…大きな力を感じる。」

その時、突然、空が一瞬で真っ暗になり、何か巨大な影が迫ってきた。アレンは反射的に魔法を構え、リリィたちもそれに続く。しかし、その正体は予想外のものであった。

「なんだ、あれは…！」

目の前に現れたのは、魔王軍の強大な兵器の一つである、巨大な機械の兵士だった。鋼鉄の鎧に包まれたその兵士は、異常な速さでアレンたちに迫り、その巨大な槍を突き刺しながら、吠えるような音を上げた。

「くっ…！」

カイルがすぐに剣を構えて迎え撃とうとするが、その機械の兵士は次々と攻撃を仕掛けてきた。その槍の一撃一撃が非常に強力で、アレンたちは避けるのが精一杯だった。

「待て、落ち着け！」

エドガーが冷静に叫ぶ。

「こいつは魔物ではない、機械だ。攻撃のパターンを見極めて反撃するんだ！」

アレンたちは一度後退し、攻撃のタイミングを見計らった。その兵士の槍が地面を叩いた瞬間、カイルが飛び込んで斬りかかるが、その鎧の表面をかすりもしない。

「硬すぎる…！」

「機械だからこそ、弱点があるはずだ。集中して攻撃の隙を狙え！」

エドガーが指示を出し、アレンたちはその言葉に従って再度攻撃を繰り返した。アレンは魔法を使い、機械兵士の動きを止めようとしたが、その効き目は薄かった。だが、次第に機械兵士の動きに隙間が見えてきた。

「今だ！」

カイルが叫び、アレンは一瞬の隙をついて、強力な魔法を放つ。その魔法の波動が機械兵士に直撃し、ついにその鎧がひび割れて、内部の機構が露出した。

「これで終わりだ！」

カイルが剣を一気に振り下ろし、機械兵士の核心を突いた。その瞬間、機械兵士は大きな爆発を起こし、アレンたちはその爆風を避けて飛び退いた。

「ふう、危なかった…」

カイルが息をつきながら、アレンに向かって言う。

「だが、こいつらだけではないだろうな。」

アレンはその言葉に頷きながら、再び進む決意を固めた。

「間違いない。これは魔王軍が仕掛けた一つの罠だ。まだまだ試練が待っている。」

そして、彼らは再び進み続ける。魔王軍の拠点が近づくにつれ、さらに強力な敵が待ち受けていることを、アレンたちは覚悟していた。闇の中に隠された真実を知るため、彼らの冒険は続いていく。