魔法の遺産

第18章

魔王軍の真の力

アレンたちは、魔王軍の拠点へと足を踏み入れた。巨大な鉄の門を抜けると、そこには数多くの魔法陣と呪詛のような力が渦巻いていた。空気が重く、まるで目の前の空間そのものが圧迫されるような感覚を覚える。

「これが魔王軍の本拠地…」

リリィがつぶやく。彼女の顔には不安が浮かんでいるが、アレンはその不安を感じ取ることなく、前へと歩みを進めた。

「どんな敵が待ち受けているか分からないが、後戻りはできない。」

アレンが言うと、カイルやエドガーもそれぞれの武器を構え、警戒しながら進んでいった。だが、進むにつれて、どこか不気味な静寂が広がっていることに気づく。

「静かすぎる…」

エドガーが呟く。その言葉が示す通り、拠点内はまるで誰もいないかのように静まり返っていた。周囲に魔物の気配すら感じられない。だが、それが逆に不安を煽る。

「何かの罠かもしれない。」

アレンはそう言って警戒を強めた。その時、突然、前方に異変が起きた。床に刻まれた魔法陣が光り、地面が割れ、暗闇から無数の闇の手が伸びてきた。手はアレンたちに向かって素早く迫り、触れるとその体力を吸い取るような感覚を引き起こす。

「何だ…この力は！」

カイルが素早く剣を振るい、闇の手を切り落とそうとするが、手はすぐに再生し、次々と襲いかかってきた。リリィもその魔力を使って反撃しようとするが、闇の手が魔力を吸い取っているようで、なかなか効果がない。

「これはただの魔物じゃない…」

アレンがそう呟く。彼は自分の力を使い、闇の手を撃退しようとするが、その力は予想以上に強力で、思うように消し去ることができない。

「どうする！？ このままだと、みんながやられてしまう！」

リリィが焦るが、アレンは冷静に魔法を集中させて考える。闇の力を完全に消し去るには、それに対抗する光の魔法ではなく、もっと強力な魔法が必要だと感じていた。

「今は光だけじゃない…『真の魔法』を使う時だ。」

アレンは古代魔法の書を思い出し、その中の深層にある力を引き出そうとした。その瞬間、彼の体を包んでいた光が膨張し、光の粒子が渦を巻きながら周囲を照らし始める。その力はまるで自然の法則をねじ曲げるような、圧倒的なものだった。

「これだ…！」

アレンの手のひらから放たれた光の波動は、闇の手を一瞬で消し去り、その場を完全に浄化した。闇の力は一切の抵抗を見せることなく消え失せ、周囲は再び静寂を取り戻した。

「すごい…！アレン、あれが…！」

リリィが目を見開いて驚くが、アレンは疲れた表情でその場に立ち尽くす。

「やっと、あの闇の力に打ち勝った…でも、これでは終わらない。」

アレンの言葉に、カイルとエドガーも頷く。彼らが立ち止まった瞬間、さらに深い闇から低い声が響いてきた。

「ふふふ…よくぞ来たな、勇者たちよ。」

その声はどこからともなく響き、アレンたちはすぐに周囲を警戒した。だが、声の主は現れなかった。

「誰だ！？」

アレンが叫ぶと、その声が再び響いた。

「我が名は『ウルディア』。魔王軍の最高司令官であり、貴様らが倒すべき最初の敵だ。」

その言葉が響くと、突然、魔王軍の幹部のような人物が現れた。ウルディアは全身を黒い鎧で包み、目は赤く光り、恐ろしい威圧感を放っていた。

「ウルディア…！」

アレンが名を呼ぶと、ウルディアはニヤリと笑う。

「そうだ。貴様らがここまで辿り着いたのは認めてやろう。しかし、私の力を甘く見るな。お前たちの力では到底勝てぬ。」

ウルディアの手から、闇の魔法が放たれると、その波動がアレンたちに向かって襲いかかってきた。アレンたちは必死にそれを避けようとするが、その威力は想像を超えていた。

「来るな！ アレン！」

リリィが叫び、アレンを守ろうとするが、ウルディアの魔法はあまりにも強力で、どんな防御も通じない。

「これが魔王軍の力…」

エドガーが悔しそうに呟くが、その時、アレンの心の中で何かが燃え上がった。

「まだだ、まだ俺は諦めない！」

アレンは深く息を吸い込み、再び光の魔法を強化し、ウルディアに向かって放った。その光は今まで以上に輝き、ウルディアの魔法に立ち向かう。

「これで終わらせる！」

その言葉と共に、アレンは全力で魔法を放ち、ウルディアの力に挑みかかった。