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運動部JK。天真爛漫@前編
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夜の帳が落ちている地方の市内。都会然とした風はあまり無く、田舎町と言われても反論できないレベルの風景だった。
午後十一時過ぎ。金曜日。
会社帰りのことである。
「お疲れですか? 風俗はいかがですか?」
甲斐成吾が横断歩道で青信号になるのを待っていると、左耳に明るくて甘い声が届いた。
アイドルにでも話しかけらた気分になり、たじろぎながら体を向ける。
一メートルくらい離れたところ。
身長が百七十センチある成吾の胸の位置に青い髪があった。染めているのだろうが地毛のように自然で美しい長髪だ。
その持ち主は若い女の子。整った眉とまつ毛。そしてカラーコンタクトを入れているのか青い瞳をしている。顔は今まで見たこともないくらい整った造形で、綺麗だった。
可愛い装飾が成されたミニスカドレス衣装は今にも歌って踊り出しそうな印象を受ける。剥き出しの首回りや、肩から腕、ブーツと丈の短いスカート間にある脚は性的興奮を誘った。
成吾はごくりと生唾を呑み込む。
「ぼ、僕に言っているのかい?」
瑞々しい容姿をした女の子は成吾を見て笑顔を咲かせた。
「はいっ! おにーさんに言ってますよっ!」
「お、おにーさんって……」
自分は今年で三十五。兄夫婦の娘からはついこの間「おっさんじゃん」と言われていた。
女の子は、JKである姪っ子と大して歳が変わらないように見える。そんな子から「おにーさんと」と呼ばれ、面映ゆさと嬉しさが重なった。
「え、えーっと……風俗、だったっけ」
「はいっ! セックスハウスに来ませんかっ?」
声を潜めて訊ねたら、周りに余裕で聞こえるボリュームで返してきた。
「こ、声が大きいよ……っ」
周りには自分と同じサラリーマンやOL、私服の若者が何人かいる。
あいつ風俗の勧誘受けてるよ、なんて思われるのは恥ずかしかった。
まあこんな華美な衣装を纏う女の子に話しかけられている時点で、この場から逃げ出したい衝動に駆られるのだけど。
「大丈夫ですよーっ。むしろおにーさんの方こそ声を落としてくださいね♪」
キョドる成吾に向けて、女の子が唇前で人差し指を立てる。片目をつむってお茶目にウィンクしてきた。
「ご説明しますと、わたしの姿は今おにーさんにしか見えていませんし、声も聞こえていないんです。そーいう魔法をかけているんです」
「ま、魔法……?」
いきなり凄い単語がでてきた。そういえば女の子の姿は、ステッキでも持たせれば魔法少女に見えてしまう。
「あーっ、信じていませんねーっ?」
女の子がむくれて言って、
「ではでは見ていてくださいね」
にっこり笑むと、パタパタ小走りで付近を回る。サラリーマンやOL、若者の前でくるっとターン&決めポーズをして帰ってきた。
青になる信号。前にも後ろにもいる人たちは、何事もなかったかのように横断歩道を渡っていく。
成吾だけが一人残る。
「どうでしたかっ? 誰も反応しなかったでしょっ?」
「……う、うん」
いやでも魔法なんて……。
そんなふうに納得し切れずにいると――
「えへへっ、これで信じましたよね!」
女の子が膝を追って、顔を股間に寄せてきた。
「な、何をして……!?」
くんくん。小ぶりな鼻がニオイを嗅ぐ。
「わぁ~っ。おにーさん、溜まってるんじゃないですかぁ~?」
顔を上げて、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「分かりますよぉ~。量的にそうですね、五日間慰めてませんね」
「っ!?」
当たりだった。
最近仕事が忙しく、残業続きで、休日出勤まである程だった。だからナニをする暇も気力も無かった。家に帰ったらシャワーを浴びて夕食を取りベットにばったりで、そのくせ会社に行くとアソコが騒ぎ出し仕事中ムズムズする。今も可愛い女の子が股間に顔を寄せているとあって、元気さを主張し始めていた。
「それも、魔法の力だって言うのかい?」
「いえいえ。ただ単にわたし、鼻がいいんですよぉ~。ちなみにぃ~っ、おにーさんのお財布に入ってる金額も当てれますよ~?」
「ほんとに?」
「はい。ちょっと失礼しますねー」
女の子が左ポケット、つまるところ財布の膨らみに顔を近づける。色気のあるうなじが丸見えの位置になり、チ×コがめきめき固くなった。
「えーっとぉー38467円ですねー」
財布を取り出して確認してみたら、その通りだった。
いったいどういうトリックなんだろう?
したり顔で立ち上がる女の子。
やや前屈みで深い谷間を強調する。薄桃色の唇が嬌笑した。
「うちの風俗、一時間三万円なんですよー。おにーさんのお財布事情なら十分足りますねーっ」
三万円。大好きなJKが出てくるAVやアニメブルーレイディスク、グッズ類に使おうと考えていたお金だ。
とはいえ勧誘してくる女の子から察するに、風俗のレベルは相当高いと見た。それだけの金額を費やすだけの価値はあるんじゃないか。
「どうです? ヤリませんか?」
「……そう、だね。そういう気持ちになってきたよ」
ビジネスバックで隠しているものの、成吾の牡槍は完全にズボンを押し上げていた。五日分のを早く出したいと叫んでいる。
「そうですか! では行きましょうっ、セックスハウスへ!」
青髪青瞳の女の子がくるんっと身をひるがえす。ミニスカートがぴらーっとめくれ上がり……てっきり見えても良いものを履いているのかと思えば、股に食い込む白いショーツが覗いた。
隙だらけで無防備な背中を、成吾は追って歩く。
魔法だのとおかしな一面はあるものの、素晴らしい夜を過ごせそうだ。
***
「着きましたよ!」
そんな威勢の良い掛け声は、歩いて数十分の路地裏にある古びた建物前で聞くことになった。
青髪青瞳の女の子がにこやかな笑みを浮かべ『セックスハウス』なる風俗店を背にしている。
「ここが、店……?」
「はいっ!」
とてもそうは見えない。はっきり言ってボロ屋だ。板が劣化してところどころ剥げているし、窓ガラスは全部無くなっている。激しい雨風に遭えば、いつ崩れてもおかしくない状態だった。おまけに看板一つない。ただの空き家だと言われた方がしっくりくる。
そしてここは風俗街ではなかった。都市部から離れた位置にあり、ジメジメと陰気な空気がある。好んで寄り付きたい場所ではない。
店を名乗るなら建物も立地も、客のことを考えてほしいものだった。
「さあさあどうぞ!」
そんな成吾の内心に気づかず、女の子が腕を掴んで引っ張る。木の扉を開けて中へ。すると頭が一瞬、クラッと揺れる感覚があって――
「ひ、広……っ、ていうか、えっ、えっ……!?」
ボロっちい建物に入ったと思ったのに、中は高級ホテルのロビーみたいに豪奢なところだった。
広々とした円状のフロア。天井で暖色系のシャンデリアが無数に煌めき、綺麗に磨かれたタイル床に反射する。フロントから少し離れた位置には絨毯。その上には革張りのソファーと艶のあるテーブルが設置されており、くつろげるスペースとなっていた。フロント横から緩いカーブを描く階段の上――二階には扉がずらりと並んでいる。
「……」
ソファーの上で誰か寝ていた。仰向けでだらしない恰好。
はっきりとは見えないが、長い黒髪をした少女であることは分かった。
そちらに気を取られていると、女の子が成吾から手を放して――
「ようこそセックスハウスへ! お客様が望む女性を魔法で作り出し、提供させていただきます!」
そんなことを明るく言ってのけた。
「魔法、ね……」
自分以外には見えない女の子。ボロ屋かと思えば高級ホテルのロビー。不可思議な出来事は『魔法』の存在を信じるに充分足りた。
「あちらのフロントで理想の女性をお伝えください。口頭でも書面でも大丈夫ですが、頭にあるイメージを魔法で抜き取ることも可能ですよ」
ぺこりと女の子が一礼する。
「では私。案内人のルルーナ・サーファイスでした。お帰りの際、またお迎えに参りますね」
最後ににっこり笑って、ルルーナと名乗った女の子はふさぁと霧散した。光の粒子がシャンデリアの明かりに照らされ、やがて溶けるように消えていく。
「えぇっ……!?」
目の前にもうルルーナの姿はなかった。
「……」
仕方なくカウンターへ向かうも、混乱で足取りは遅い。非現実的な出来事が体を強張らせている。
「らっしゃいお客さん。ここじゃあどんな女だって用意できるよ」
カウンターに立っていたのは紅髪の女性だった。肩より上でボリュームを放つそれに黒薔薇の髪飾りが艶美に咲く。
赤いドレスの胸元ははち切れんばかりに膨らんでいた。豊満な柔肉によって生まれた谷間が見下ろせる。
おそらくルルーナよりも年上だろう。肢体の色っぽさがそう思わせた。けれど決して老けているわけではなく、若々しい美貌と美肌を誇っていた。
「口頭で注文するかい? それとも紙に書いて注文かい? 一番確実なのはあたしが頭を覗くことだがどうする?」
「頭を覗くっていうのは具体的にはどういう……?」
「お客さんがイメージした人物を魔法で覗いて、それを抜き取るのさ。害はないから安心しな」
「はあ……。えっと確認なんですけど……ここは魔法で理想の人を作って、その……ヤレるんですよね?」
「そうだよ」
「性格とかも、決められるんですか……?」
「できるよ。これもイメージしたっていいし、口頭や書面で注文したっていい。不安なら全部やって、確実なオーダーを取りな」
「分かりました。じゃあすみませんが、全部お願いします」
「承ったよ。こっち寄って、頭傾けて、理想の人物をイメージしな」
言われた通りにすると女性の手が伸びてくる。頭を両側から挟み込んだまま十秒くらい静止して、やがて「終わったよ」と言って離れた。
「次はペンと口を使ってアタシに説明だね。くっくっく、ほれほれ破廉恥な要望を包み隠さず教えてみな?」
最初の挨拶から思っていたことだけど、接客らしからぬ言動だった。恥ずかしさに包まれつつペンと口で説明し終わる。
「よーく分かったよ。さてお次は場所の設定だ。お客さん、プレイするならどこがいい?」
たぶんそれも魔法でやってくれるんだろう。
「……学校の、教室で」
「時間は?」
「……放課後。夕方でお願いします」
「りょーかい。料金は三万円ね」
少し躊躇ったものの、魔法で満足なプレイができると信じて支払った。
「それじゃあ二階に上がって、三番の部屋で待ってな。すぐにお客さんが頼んだ風俗嬢を向かわせるからよ」
女性の視線が成吾の後ろ、ソファーやテーブルのあるくつろぎゾーンへ移った。
「ニーナ、仕事だよ!」
「……うぃー」
気だるげな声。
長い黒髪の少女がソファーから起き上がり、眠気眼を指で擦りつつ、とてとて歩いてきた。
「……フレディア、声大きい」
ぼやいて、紅髪の女性とフロントの奥へ引っ込んでいく。どうやら紅髪がフレディア、黒髪がニーナという名前らしい。
午後十一時過ぎ。金曜日。
会社帰りのことである。
「お疲れですか? 風俗はいかがですか?」
甲斐成吾が横断歩道で青信号になるのを待っていると、左耳に明るくて甘い声が届いた。
アイドルにでも話しかけらた気分になり、たじろぎながら体を向ける。
一メートルくらい離れたところ。
身長が百七十センチある成吾の胸の位置に青い髪があった。染めているのだろうが地毛のように自然で美しい長髪だ。
その持ち主は若い女の子。整った眉とまつ毛。そしてカラーコンタクトを入れているのか青い瞳をしている。顔は今まで見たこともないくらい整った造形で、綺麗だった。
可愛い装飾が成されたミニスカドレス衣装は今にも歌って踊り出しそうな印象を受ける。剥き出しの首回りや、肩から腕、ブーツと丈の短いスカート間にある脚は性的興奮を誘った。
成吾はごくりと生唾を呑み込む。
「ぼ、僕に言っているのかい?」
瑞々しい容姿をした女の子は成吾を見て笑顔を咲かせた。
「はいっ! おにーさんに言ってますよっ!」
「お、おにーさんって……」
自分は今年で三十五。兄夫婦の娘からはついこの間「おっさんじゃん」と言われていた。
女の子は、JKである姪っ子と大して歳が変わらないように見える。そんな子から「おにーさんと」と呼ばれ、面映ゆさと嬉しさが重なった。
「え、えーっと……風俗、だったっけ」
「はいっ! セックスハウスに来ませんかっ?」
声を潜めて訊ねたら、周りに余裕で聞こえるボリュームで返してきた。
「こ、声が大きいよ……っ」
周りには自分と同じサラリーマンやOL、私服の若者が何人かいる。
あいつ風俗の勧誘受けてるよ、なんて思われるのは恥ずかしかった。
まあこんな華美な衣装を纏う女の子に話しかけられている時点で、この場から逃げ出したい衝動に駆られるのだけど。
「大丈夫ですよーっ。むしろおにーさんの方こそ声を落としてくださいね♪」
キョドる成吾に向けて、女の子が唇前で人差し指を立てる。片目をつむってお茶目にウィンクしてきた。
「ご説明しますと、わたしの姿は今おにーさんにしか見えていませんし、声も聞こえていないんです。そーいう魔法をかけているんです」
「ま、魔法……?」
いきなり凄い単語がでてきた。そういえば女の子の姿は、ステッキでも持たせれば魔法少女に見えてしまう。
「あーっ、信じていませんねーっ?」
女の子がむくれて言って、
「ではでは見ていてくださいね」
にっこり笑むと、パタパタ小走りで付近を回る。サラリーマンやOL、若者の前でくるっとターン&決めポーズをして帰ってきた。
青になる信号。前にも後ろにもいる人たちは、何事もなかったかのように横断歩道を渡っていく。
成吾だけが一人残る。
「どうでしたかっ? 誰も反応しなかったでしょっ?」
「……う、うん」
いやでも魔法なんて……。
そんなふうに納得し切れずにいると――
「えへへっ、これで信じましたよね!」
女の子が膝を追って、顔を股間に寄せてきた。
「な、何をして……!?」
くんくん。小ぶりな鼻がニオイを嗅ぐ。
「わぁ~っ。おにーさん、溜まってるんじゃないですかぁ~?」
顔を上げて、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。
「分かりますよぉ~。量的にそうですね、五日間慰めてませんね」
「っ!?」
当たりだった。
最近仕事が忙しく、残業続きで、休日出勤まである程だった。だからナニをする暇も気力も無かった。家に帰ったらシャワーを浴びて夕食を取りベットにばったりで、そのくせ会社に行くとアソコが騒ぎ出し仕事中ムズムズする。今も可愛い女の子が股間に顔を寄せているとあって、元気さを主張し始めていた。
「それも、魔法の力だって言うのかい?」
「いえいえ。ただ単にわたし、鼻がいいんですよぉ~。ちなみにぃ~っ、おにーさんのお財布に入ってる金額も当てれますよ~?」
「ほんとに?」
「はい。ちょっと失礼しますねー」
女の子が左ポケット、つまるところ財布の膨らみに顔を近づける。色気のあるうなじが丸見えの位置になり、チ×コがめきめき固くなった。
「えーっとぉー38467円ですねー」
財布を取り出して確認してみたら、その通りだった。
いったいどういうトリックなんだろう?
したり顔で立ち上がる女の子。
やや前屈みで深い谷間を強調する。薄桃色の唇が嬌笑した。
「うちの風俗、一時間三万円なんですよー。おにーさんのお財布事情なら十分足りますねーっ」
三万円。大好きなJKが出てくるAVやアニメブルーレイディスク、グッズ類に使おうと考えていたお金だ。
とはいえ勧誘してくる女の子から察するに、風俗のレベルは相当高いと見た。それだけの金額を費やすだけの価値はあるんじゃないか。
「どうです? ヤリませんか?」
「……そう、だね。そういう気持ちになってきたよ」
ビジネスバックで隠しているものの、成吾の牡槍は完全にズボンを押し上げていた。五日分のを早く出したいと叫んでいる。
「そうですか! では行きましょうっ、セックスハウスへ!」
青髪青瞳の女の子がくるんっと身をひるがえす。ミニスカートがぴらーっとめくれ上がり……てっきり見えても良いものを履いているのかと思えば、股に食い込む白いショーツが覗いた。
隙だらけで無防備な背中を、成吾は追って歩く。
魔法だのとおかしな一面はあるものの、素晴らしい夜を過ごせそうだ。
***
「着きましたよ!」
そんな威勢の良い掛け声は、歩いて数十分の路地裏にある古びた建物前で聞くことになった。
青髪青瞳の女の子がにこやかな笑みを浮かべ『セックスハウス』なる風俗店を背にしている。
「ここが、店……?」
「はいっ!」
とてもそうは見えない。はっきり言ってボロ屋だ。板が劣化してところどころ剥げているし、窓ガラスは全部無くなっている。激しい雨風に遭えば、いつ崩れてもおかしくない状態だった。おまけに看板一つない。ただの空き家だと言われた方がしっくりくる。
そしてここは風俗街ではなかった。都市部から離れた位置にあり、ジメジメと陰気な空気がある。好んで寄り付きたい場所ではない。
店を名乗るなら建物も立地も、客のことを考えてほしいものだった。
「さあさあどうぞ!」
そんな成吾の内心に気づかず、女の子が腕を掴んで引っ張る。木の扉を開けて中へ。すると頭が一瞬、クラッと揺れる感覚があって――
「ひ、広……っ、ていうか、えっ、えっ……!?」
ボロっちい建物に入ったと思ったのに、中は高級ホテルのロビーみたいに豪奢なところだった。
広々とした円状のフロア。天井で暖色系のシャンデリアが無数に煌めき、綺麗に磨かれたタイル床に反射する。フロントから少し離れた位置には絨毯。その上には革張りのソファーと艶のあるテーブルが設置されており、くつろげるスペースとなっていた。フロント横から緩いカーブを描く階段の上――二階には扉がずらりと並んでいる。
「……」
ソファーの上で誰か寝ていた。仰向けでだらしない恰好。
はっきりとは見えないが、長い黒髪をした少女であることは分かった。
そちらに気を取られていると、女の子が成吾から手を放して――
「ようこそセックスハウスへ! お客様が望む女性を魔法で作り出し、提供させていただきます!」
そんなことを明るく言ってのけた。
「魔法、ね……」
自分以外には見えない女の子。ボロ屋かと思えば高級ホテルのロビー。不可思議な出来事は『魔法』の存在を信じるに充分足りた。
「あちらのフロントで理想の女性をお伝えください。口頭でも書面でも大丈夫ですが、頭にあるイメージを魔法で抜き取ることも可能ですよ」
ぺこりと女の子が一礼する。
「では私。案内人のルルーナ・サーファイスでした。お帰りの際、またお迎えに参りますね」
最後ににっこり笑って、ルルーナと名乗った女の子はふさぁと霧散した。光の粒子がシャンデリアの明かりに照らされ、やがて溶けるように消えていく。
「えぇっ……!?」
目の前にもうルルーナの姿はなかった。
「……」
仕方なくカウンターへ向かうも、混乱で足取りは遅い。非現実的な出来事が体を強張らせている。
「らっしゃいお客さん。ここじゃあどんな女だって用意できるよ」
カウンターに立っていたのは紅髪の女性だった。肩より上でボリュームを放つそれに黒薔薇の髪飾りが艶美に咲く。
赤いドレスの胸元ははち切れんばかりに膨らんでいた。豊満な柔肉によって生まれた谷間が見下ろせる。
おそらくルルーナよりも年上だろう。肢体の色っぽさがそう思わせた。けれど決して老けているわけではなく、若々しい美貌と美肌を誇っていた。
「口頭で注文するかい? それとも紙に書いて注文かい? 一番確実なのはあたしが頭を覗くことだがどうする?」
「頭を覗くっていうのは具体的にはどういう……?」
「お客さんがイメージした人物を魔法で覗いて、それを抜き取るのさ。害はないから安心しな」
「はあ……。えっと確認なんですけど……ここは魔法で理想の人を作って、その……ヤレるんですよね?」
「そうだよ」
「性格とかも、決められるんですか……?」
「できるよ。これもイメージしたっていいし、口頭や書面で注文したっていい。不安なら全部やって、確実なオーダーを取りな」
「分かりました。じゃあすみませんが、全部お願いします」
「承ったよ。こっち寄って、頭傾けて、理想の人物をイメージしな」
言われた通りにすると女性の手が伸びてくる。頭を両側から挟み込んだまま十秒くらい静止して、やがて「終わったよ」と言って離れた。
「次はペンと口を使ってアタシに説明だね。くっくっく、ほれほれ破廉恥な要望を包み隠さず教えてみな?」
最初の挨拶から思っていたことだけど、接客らしからぬ言動だった。恥ずかしさに包まれつつペンと口で説明し終わる。
「よーく分かったよ。さてお次は場所の設定だ。お客さん、プレイするならどこがいい?」
たぶんそれも魔法でやってくれるんだろう。
「……学校の、教室で」
「時間は?」
「……放課後。夕方でお願いします」
「りょーかい。料金は三万円ね」
少し躊躇ったものの、魔法で満足なプレイができると信じて支払った。
「それじゃあ二階に上がって、三番の部屋で待ってな。すぐにお客さんが頼んだ風俗嬢を向かわせるからよ」
女性の視線が成吾の後ろ、ソファーやテーブルのあるくつろぎゾーンへ移った。
「ニーナ、仕事だよ!」
「……うぃー」
気だるげな声。
長い黒髪の少女がソファーから起き上がり、眠気眼を指で擦りつつ、とてとて歩いてきた。
「……フレディア、声大きい」
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