Sランクの男は如何でしょうか?【R18】※番外編更新中

キミノ

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第3章

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 暗い気分のまま帰宅すると、自室のテーブルに紙が綺麗に折られて置いてあった。

 こんなもの出るときにあったかな・・・

 不信感を抱きつつも紙を開くと、たった一行だけワープロ打ちされていた。




――――――――――


貴女は利用されています。


――――――――――





 ざわざわと心臓に虫が歩き回るような不快感が走った。

 
 誰がこんなものを? 利用? 何もない自分に利用価値など?


 ぐるぐると疑問が頭を巡るが、今の落ちた気分を更に暗くするだけだった。普段は特に悩む性格では無いが、落ち込むときは落ち込んでしまう。気分転換にお風呂に入るが、かかとの痛みで気分が晴れることは無かった。




 お風呂を出ると、スマホに着信履歴が残っていた。画面には【大谷貴臣】と映し出されている。


トゥルルルル
「・・・あ、社長。すみません、折り返し遅くなりました」

『風呂だったんだろう。___腹は空いているか?』

「__あまり」

『_____すぐ迎えに行く。着替えておけ』

「あ、ちょっ(ツーツーツー)


 通話の切れてしまったスマホは数秒で画面が暗くなり、自分の淀んだ顔が画面に映し出された。こんなにも順風満帆なのに、何を悩むことがあるのだろう。

 大きくため息をついて自室に向うと、今朝には無かったドレスがかかっていた。ピンクベージュのドレスは胸から上がレースになっていて、ガサツな沙也加でも女子力がアップした様に見えた。ドレッサーの前に座り簡単にメイクをしたが、ドレス負けした自分の顔がいつもより貧相に見えた。

 なんでこんな私に、何もかも与えてくれるんだろう・・・





「___おい。行くぞ」

 振り返るといつの間にか帰宅した貴臣が扉の所に立っていた。何時もの様にピリっとかっこいいスーツの上に、ネイビーのコートを羽織る姿も沙也加の胸を高鳴らせた。

「あのぅ・・・私、スタイル良くないのでこのドレスが勿体無いです」

「それを判断するのは私だ」


 二の足を踏んでいると、厚手のストールを頭から被せられた。

「うわっ、ぷ・・・な、なんですか?」

 突然真っ暗になった視界に慌てると、ぎゅっと抱き締められた。首元と腰に巻き付いた腕が、ぎゅうぎゅうと更に締め付けてくる。たったそれだけなのに、それだけなのに、胸が苦しい。

「昨夜も言ったろう?」

 耳元で掠れた声が聞こえる。

「何をでっ、ひゃああっ」

 乱暴にストールを剥がされて至近距離で貴臣と目が合った。不満そうに結ばれた唇は何を思っているかを語ってはくれそうに無い。

「くだらん。行くぞ」



 そのまま腕を引かれて玄関に行くと、かかと無しタイプのパンプスが用意されていた。

「このパンプス・・・怪我に気を使ってくださったんですか?」

「___たまたまだ」




 そう言って先を歩いて行く貴臣の背中が愛しく感じた。思わず零れる笑みを抑えながら、一階まで直通専用のエレベーターで降りると、漆黒のリムジンに乗せられて滑るように発車した。


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