迅雷少女の配達屋さん~愛され少女の異世界ライフ~

ひょーう.CNP

文字の大きさ
4 / 44
1章 異世界に来た

3話 人との出会い

しおりを挟む
「ヘルメット……?間違いない、ヘルメットだ!!」
「えっ!?」

 日本語でヘルメットと連呼した鎧の女性。
 ヘルメットがこの世界にもあるのか?と思ったが、何故か少し驚いた様子……まさか。

「も、もしかして……日本の人っ!?」
「あぁそうだ!君もだろう?」
「……!は、はい!!」

 良かった、初めて出会った人が日本人だった!

「レイナの同郷の人ね?」
「そうだ、すまないが少し周りを見ておいてくれるか?」
「了解」

 2人が話す言語も日本語だった、良かった……ちゃんと言葉が通じる。

 ここに来た際は、どうにかしなきゃって気持ちで頭をフル回転させてきたが、ここに来て初めての安心感に緊張の糸が切れる。

「良かった……初めて人にっ、出会えたっ……」

 涙が溢れてくる、止まらない……
 それを見た鎧の女性は、上の鎧を外してこちらに近付いてきた。

「その様子だと、ここに来たばかりみたいだな。見た目的にまだ10代か……?よく生き延びた、頑張ったな」

 鎧の女性が、優しく私を抱き締めて背中をさすってくれる。

「ゔっ、ひっぐ……うわぁぁぁぁ!!」
「よしよし」

 もう1人の獣耳と尻尾が生えている人が周囲の警戒をしてくれているので、鎧姿だった女性に暫く胸を借りる事となった。
 ひとしきり泣いて、数分程で落ち着きを取り戻した。

「ぐずっ、すみません……」
「気にするな、1人で不安だっただろうからな……取り敢えず自己紹介しておくよ。私はレイナ、君と同じ日本人で向こうでは城本玲奈という名前だった。今は冒険者ギルドに所属しているよ、君の名前は?」
「わ、私は美園香織です」
「カオリと言うのか、よろしくな」
「は、はい!よろしくお願いします!」

 落ち着いた私からゆっくり離れ、鎧を再度装着したレイナ。
 そして入れ替わるように獣耳尻尾の冒険者がこちらにくる。

「私はソル、レイナとは違ってこの世界で生まれ育った狼人族よ、よろしくね」
「美園香織です!よ、よろしくお願いします!」

 改めて異世界に来たんだなって、ソルの獣耳と尻尾をみて思う。
 少しだけでも良いからもふもふしたいかも、凄く気持ちよさそう。

「カオリ、歩けるか?」
「あ、はい!歩けます!」
「この辺りは魔物が多くて夜になると危険なんだ、この森を抜けるにも日没までには間に合わない、だから魔物の少ないエリアまで移動して野営する、いけるか?」
「や、野営……この森の中で、ですか?」

 スライムやオオカミのようなモンスター……いや、レイナ曰く魔物か?がいっぱい居る所で一夜過ごす、そう考えると少し怖くなって震えてしまう。
 震えている事に気付いたレイナが、私の手を握ってくれる。

「大丈夫だ、私達が守るよ」
「……はい」

 ソルを先頭に、野営場所を目指して森の中を歩き出した。

「あの放電、カオリがやったのか?」
「多分ですけど、そうだと思います」
「多分?」

 曖昧な返事に首を傾げるレイナ。

「私、雷の完全耐性と雷属性を持っているんですけど、何故か使う事が出来なくて……でも、オオカミに襲われた時に怖くなって叫んだらバチバチッと音がして、オオカミがあんな事に」
「咄嗟にしか使う事が出来なかったって事か!?こちらに来る際に、神から能力を授かって使い方説明を受けているはずじゃ!?」

 レイナが凄く驚いていた、何でかは分からないけど……有り得ないって言いたげな顔をしていた。

「……え?私、気付いたらこんな森の中にいたんですけど……」
「なっ!?き、記憶喪失とかは!?」
「いえ、日本に居た時の事も、目覚めた時の事も、ここに来るきっかけも全て覚えています。ですが、能力を授かるだとか、神に会ったとかは全く……」
「そんな、バカな」

 信じられないと言わんばかりの驚愕の顔をしているレイナ。
 能力を授かる、やっぱり小説等でよく見た異世界転生でレイナはここに来たのだと伺えた。

「レイナさんは、神から能力を授かって来たんですか……?」

 私は逆にレイナの言葉が信じられなくて聞いてしまった。
 それを聞いたレイナはハッ!とてバツの悪そうな顔をする。
 レイナは能力を授かって来たのに、私は何もなしでここに来たのだから。

「あっ、す……すまない!転生に関する話が聞いていた事とは違ったみたいなんだ、本当に申し訳ない!!」
「い、いえ……レイナさんは悪くないです。多分ですけど、私は要らない子……なんです」

 またしても涙が溢れてくる。
 私、学生の頃は泣き虫だったけど、卒業してから泣かなくなって強くなったと思ってたんだけどなぁ……

「私は……きっと神にすら見放されて、こんな森の中に捨てられ……たんです……ゔっ」
「っ……」

 何か思う所があったのか、レイナが握りしめた拳が震えだし、空を見上げて叫んだ。

「おいミルム!!一体どうなっているんだ!!!あの時私に言ったのは嘘だったのか!?転生者の一部は、こうして処理するような真似をしていたのか!?お前達は!!!」

 凄まじい怒りと共に叫び声が森の中に響いた。
 すると、レイナの少し上くらいで急に光り出して人が現れた。

「レイナ!!」
「おいミルム!これはどういうことだ!?」
「あ、貴方が……ミルム様!?」

 ソルは、ミルムという神が姿を表したのを見て、信じられない顔をしていた。

「レイナ!落ち着いてよ!説明するから!!」
「落ち着いていられるか!!こんな若い子に死ねと言うのか!!!」
「だから!説明するから落ち着きなさいよ!!私達だって初めてのケースでパニックになってるのよ!」
「レ、レイナ!怒鳴ったって解決しないわよ!」
「くっ……」

 レイナはミルムとソルに抑えられ、説明を聞く事になった。
 レイナを落ち着かせた後、ソルに私の頭を抱き寄せられ、大丈夫大丈夫と背中をさすられながら落ち着かせてくれた。

「今から天界がどうなっていて、カオリが何でこうなってしまったのか、分かる範囲で説明するよ」

 このミルムの話によると。
 転生される魂は神と天使が住まう天界へと連れてこられ、担当の神様が1人付くみたい。
 ミルムもレイナにそう説明していたので、神とは会っていないという私の発言を受けて、ミルムが嘘をついたのか!?とレイナは勘違いしてしまったらしい。
 話を戻して、私は稲妻のようにビシャンという音をたてながら高速で天界を通過して、この世界〖ヴィクトヘルム〗へダイレクトに移動してしまったという。
 今までにこんな事は1度もなかったとミルムは語る。
 そして、これに気付いた天界は今大慌てしている……という状況らしい。
 本来であれば、今のミルムという神のように転生後の転生者と神託以外でコンタクトを取るのは禁忌とされており、普通は転生の際にサポートをしてその後は見守るのが仕事らしいんだけど……

「私がこうして禁忌を犯してまでレイナとこの子の前に現れたのも、罰せられて神で無くなる事も覚悟の上で来た……だって、私もレイナと同じ気持ちでカオリを助けたかったから」

 ミルムは私に近付いて、私の頬を優しく撫でた。

「ごめんなさい、折角の転生なのに辛い思いをさせた」
「ひっぐ……ぐずっ……」

 私は泣きながらもミルムの顔を見る、きっとぐしゃぐしゃな顔をしているはずだ。

「担当じゃないから、これも本当はダメなんだけど……もう私は罰せられて神ですら無くなる身。だから、貴方が安心してこの世界を生きて楽しめるように……特別に力を与えるよ」

 私の頬を触れているミルムの手から、温かい物が流れ込んでくる……
 身体の中にある何かが活性化している、そんな気がした。

「事情があって戦いに関する能力は付けられなかった、だから戦いとは別の有能スキルと腰に付けてる物入れを無限収納で時間停止付きの袋アイテムに変えたから、詳しくは後でステータスや持ち物を見て確認してみてほしい。
 後、その雷属性も貴方の使い方次第で、強い攻撃手段にも防御手段にも移動手段にもなるからしっかり自分の物にしてほしい、その為の力《魔力》もちゃんと付与してあげたから」
「ゔん、ありがどう……ぐずっ」

 ミルムがそっと私の頬を撫でた後、レイナの頭を手で撫でてから空へ浮いていく。

「すまない……ミルム、私のせいで神落ちさせてしまう事になるとは……」

 レイナは怒りに任せてミルムを呼び出してしまった結果、彼女が神でなくなってしまう事を悔やんでいた。

「良いよ、私も悔いはないから。レイナの担当になってずっと見守ってきたけど……心優しい子で、見ていて温かい気持ちになった、レイナの担当になれて良かったよ」
「ミルム……私の道は、間違っていなかっただろうか?」
「うん、神である私からしても文句ないよ」
「そうか……良かった」

 レイナは悲しい顔をしていた、転生の際にお世話になり見守ってくれていた存在が居なくなるという喪失感からかもしれない。
 ミルムへ手を伸ばすと、手を握ってくれる。

「レイナ、1つだけ頼んでいい?」
「あぁ、何でも言ってくれ」
「カオリは担当の居ないイレギュラー、そして6神である私はもうすぐ消える……出会う事はないと思うけど、レイナには私に代わる新しい神が付くはず。
 でも、この世界に存在できる神は6人、そして6神の担当人数は1人ずつという絶対的な決まりがあって、多分カオリには担当を付けられない。
 だから、私の代わりにレイナがカオリを見守り助けてあげて欲しい」
「分かった、カオリがこの世界で立派に生きていけるように、私が面倒をみよう」
「……頼むよ」

 レイナに自分の願いを託し、少しだけ力を分け与える。
 そして、握っていた手を離しすぅーっと空へ昇っていく。

「あっ……」
「行かなきゃ……さよなら。レイナ、カオリ……貴方達の転生生活に、幸あれ」

 ふわっと光が彼女を包むと、もうそこにはミルムの姿はなかった。

「ミルム!!!」

 手を伸ばし、消えていった神の名を呼んだ声は……もう、ミルムには届かない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

傾国の魔女が死んだら、なぜか可愛いお姫様に転生していた。

夜のトラフグ
恋愛
 ーー帝国の人々を五百年間、震え上がらさせた魔女が討たれた。その吉報が国中に届いたとき、時を同じくして、城にそれは可愛いお姫様が生まれていた。  誰も知らない。そのお姫様が、討たれた魔女の生まれ変わりであることを。  魔女の生まれ変わりと周囲の心温まる交流物語。を目指します。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...