迅雷少女の配達屋さん~愛され少女の異世界ライフ~

ひょーう.CNP

文字の大きさ
27 / 44
2章 配達のお仕事と垣間見える闇

25話 迅雷少女

しおりを挟む
 私と双剣姫2人で始まった、スパークアクセルによる超スピード追いかけっこ。
 2人は森から出そうになった瞬間に方向転換しているのを見るに、どうやら追いかけっこ範囲は森の中だけらしい。
 それに2人が別方向に逃げるような事もない、木や魔物の避け方はそれぞれ別だけどね。

「はぁ、はぁ……全然差が縮まない」

 スピードを合わせてくれているのか、双剣姫2人との差が広がらなければ縮まりもしない……
 まぁ、前を走ってくれてるおかげで、木々の避け方とかステップのやり方や動き方を勉強出来るからいいんだけどね……
 でも、ちょっとだけ悔しいかも。

「ひゃー!森の中駆け巡るの気持ちいいねー!」
「ねー!」

 そんな事言いながら2人は息を切らす事なく走っている……私はアウトドア派で体力には自信あったんだけど、そろそろ体力がきっつい……

「ねぇーっ、2人共ー!はぁ、体力はっ、大丈夫なのー!?」

 追いかけっこの途中なので、走りながら2人に声をかけた。
 私の声からして息が上がっているのもわかってくれる、はず。

「大丈夫だよー!」
「あっ!香織おねーちゃんにスタミナバフするの忘れてるよ、おねーちゃん!」
「ホントだ!?香織おねーちゃーん!そのままあたしに向かって真っ直ぐ来てーっ!!」
「わ、わかったー!何するのっ??」

 梅香ちゃんが後ろに振り向き、私に向けて手を伸ばしてスキルを発動した。
 桜ちゃんは梅香ちゃんの先導役をして、木にぶつからないように誘導している。

「自己バフ譲渡、スタミナブーストー!てやーっ!」
「!?」

 私にバフが掛けられたのが身に沁みて分かる、さっきまでスタミナ切れで息が上がっていたのにそれが無くなっている。
 バフを譲渡してスタミナブーストが切れてしまった梅香ちゃんは、再度バフを掛け直して桜ちゃんの誘導を解除した。

「こんなバフが!?」
「このバフは解除しない限り魔力が尽きるまで持続するよー!」
「だから気にせず追いかけてきてねー!」

 どうやら2人は、私に会う前からスタミナブーストっていうスキルを使ってスタミナが減らない状況にしていたようだ。
 でも、魔力が尽きるまで走れるなんて……こんな強力なスキルがあっていいの?
 どうしても気になって、私は背中でずっと黙って見守ってくれているクマのぬいぐるみであるみーちゃんに訊ねた。

「みーちゃん、こんな強力なバフなんてあっていいの?」
「そうだね、カオリの言う通り強力なバフではあるんだけど、本来このスキルには大きいデメリットがあるよ」
「大きいデメリット?」
「うん、このスタミナバフの欠点が体力消費の代わりになっている魔力の消費が尋常じゃなく多いんだ、だから一般人には魔力ポーションを使い続けない限り短時間のバフとしてしか使えないんだよ」

 ポーションの種類はソルと服屋に行く前の道具屋さんで聞いているので、それとなく分かる。
 魔力ポーションは魔力を回復させるポーションだね。

「そ、そうなの?ああそっか、だから私やあの2人はこうして長く使えるって事なんだね」
「正解、ウメもサクラもそれを分かっててカオリに譲渡してる」

 なるほど理解した、梅香ちゃんと出会った時に言ってた「香織おねーちゃんの魔力は凄く分かりやすいし!」って言葉、私の魔力量が尋常じゃないくらい多いって事を知っていたから言ってたんだね。
 そう考えると、多分梅香ちゃんか桜ちゃんのどちらかが私とリサと同じ領域の魔力感知を持っていると推測出来る。

「なら、これは2人の魔力が切れるまで戦うか、私が一皮剥けて追いつくのどちらかでしか勝てないね」
「それはカオリ次第かな、双剣姫の思惑を邪魔したくないから私は黙っておくよ、頑張ってカオリ」
「ありがとうみーちゃん!」

 双剣姫2人の動きに注目してみる、あれだけすばしっこく動くには何かしらコツがあるはずだ。
 私は梅香ちゃんの背後に付き、動きを真似てみる。

「おねーちゃん!狙われたよ!」
「来たね香織おねーちゃん!勝負だー!」

 梅香ちゃんの動きが激しくなる、私は何とか梅香ちゃんの動きをコピーする。

「スパークアクセルのステップ中、1歩ごとに移動距離が全然違う……」

 右足で踏み込んだら直ぐに左足を踏み込んで方向転換したり、地面を踏み込んだ際の放電量が毎回違ったりしている。
 となれば、足で地面を踏み込む度に先を見据えてステップの強さ、放電量、そして歩幅を変えて効率良く動いているって事になる。

「凄いな2人共……あんな風に、動いてみたい!」

 まだまだ梅香ちゃんや桜ちゃんのように動く事は出来ない、当たり前だけど……1日じゃ到底2人のような動きなんて出来っこない、でもいくつかコツは掴めるはず!
 私の魔力は無駄に多い、それならば私のやる事は1つだけ!
 ごめんね梅香ちゃん、桜ちゃん、魔力の限界かトリスター王国に帰る時間まで……とことん付き合ってもらうよ!


 追いかけっこを始めて……なんともう3時間経過し、日も傾き始めた。
 私の魔力はまだまだ尽きる様子がない、どれだけ魔力あるの私!?
 それに対して双剣姫の2人は……

「お、おねーちゃん、あたしそろそろ魔力が……」
「う、うん……あたしも尽きそうだよ~」

 2人はあと少しで魔力が切れそうになって集中力も低下している、まぁこんな状態な2人だとしても追いつけないんだけど……
 そろそろ追いかけっこも切り上げたほうが良いかもしれない、城門の時間もあるしね。
 あ、ちなみに追いかけっこ中にレイナ達からコールが来たんだけど、双剣姫が居るという事にびっくりしつつもお泊まりOKと返事か来た、だからこの特訓が終わったらみんなで帰ることになる。

「2人共ー!そろそろ帰るよー!もう限界でしょー?」
「うー、もうちょっと遊びたかったのになー……分かったー!」
「じゃあ、出口まで走って帰ろー!」

 2人は走る方向を変えて大きい1歩を踏み出した、その瞬間……

「危ない!!」

 木々に阻まれて姿が見えていなかった熊の魔物……オウルベアが、2人の目の前に飛び出してきた。

「「あっ!」」

 完全に集中力を切らしていた2人は、反応すら鈍くなってしまっていて剣を抜く事が出来なかった。

「……!」

 私は思いっきり地面を踏みしめ、放電MAXで地面を蹴り飛ばした。
 激しい雷鳴音と共に景色がぐわんと一瞬で変わり……私は、瞬間移動したかのように梅香ちゃんと桜ちゃんの前に出て、オウルベアとぶつかる前に2人を抱き締めた。

「おねーちゃん!?」「危ない!!」

 背後ではオウルベアより鋭利な爪を立てた腕を振り下ろされる、回避は……間に合わない。

「……っ!」

 咄嗟に私は振り下ろされる腕の前に大量の魔力を放出、雷が盾となる。

「グオァァァ!!」

 雷の盾に阻まれ、腕から感電したオウルベア……そしてその僅か0.5秒後に。

「ハァァ!!」

 リサが上空から急降下、オウルベアの首がナイフによりはねられた。

「皆さん!無事ですか!?」
「は、はい……!」
「「大丈夫だよー!」」
「あぁ、良かった……カオリ様、遅くなって申し訳ありません……1秒程間に合いませんでした」

 いや、梅香ちゃんと桜ちゃんの前に立ち塞がったオウルベアを目視で確認してから、救出までに4秒もかかってなかったから充分な気がするけど……。

「いや、倒してくれて助かりました、ありがとうございます!」
「「ありがとうリサ隊長!」」
「いえ、無事なら何よりです。次こそは間に合うように、私も精進致します」

 私達3人のありがとうにリサの顔が少しだけ……緩んだような気がした。
 リサより魔力ポーションを受け取り、私と梅香ちゃんと桜ちゃん3人で飲み干して、森の外へと歩き出した。

「それより香織おねーちゃん!さっきのあれ凄かったね!」
「わ、私必死だったからよく分かんなくて……そんなに凄かった?」
「凄かったよー!シュンッて来たよね!シュンッって!」

 確かに、あの時私は瞬間移動したかのように2人の目の前まで移動し、抱き締めた。
 あの時、魔力全開で踏み込んだら一瞬で移動したんだよね……
 スパークアクセルを全力でやれば再現出来るのでは?と思ったんだけど、それはまた今度検証だね。

「あの時のカオリ様、瞬間移動した時に1本の稲妻が見えました」
「い、稲妻が?」
「はい、私がオウルベアに切りかかろうとした時に見えました。カオリ様が居た場所から、オウルベアの手前までを一直線に」

 私が稲妻になったとでも言うのだろうか?
 自分じゃどんな感じになったのかよく分からなかったから、近い内に誰かに頼んで見てもらおうかな。

「音も凄かったよねー!」
「だねー!まるで迅雷!だったね」
「じ、迅雷……難しい言葉よく知ってるね」
「ゲームに出てくるもん、カオリおねーちゃんは今あたし達と似たような年齢だから……」

梅香ちゃんと桜ちゃんが顔を見合わせた後、頷いてこう言い放った。

「「迅雷少女だね!!」」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...