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62話 過去と忠誠
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17年前、トライデント王国よりずーっと北にあるトカラミア山脈の奥地、そこにはドラゴン族だけで形成された村バレス村があるの、私はそこで産まれたわ。
バレス村には火を使うドラゴン族が住んでいて、ドラゴン内ではレッドドラゴンと呼ばれていたわね。
近辺には他の村もあるのだけれど、あまり仲は良くなかったわ。
他の村では風を使うグリーンドラゴン、水を使うブルードラゴン、土と馴染みがあるアースドラゴンが居て、いつも小競り合いが絶えずいつも喧嘩ばかりしていたの。
ドラゴン族は他種族にはない秘密がある、『覚醒』による急成長と、それによりドラゴン形態になれるという物よ、これはブルードラゴン達も同じね。
前にも話したけど、父母共にドラゴン族で、私の母セイランは覚醒によるドラゴン形態になれるのだけど、私の父ビルドが覚醒済でもドラゴン形態になれないタイプだったわ。
ちなみに、覚醒は18歳から始まるのよ、私は17歳だからもう少しね。
今から半年前、ブルードラゴンとの小競り合い中に異変が起きたの。
空が急に暗くなってブルードラゴン達の様子がおかしくなったの、人型だったブルードラゴン達が急に苦しみだし、全員ドラゴン形態になって攻撃してきた。
私達レッドドラゴンも、なれる人はドラゴン形態になって応戦した。
私の母はレッドドラゴンの中で村長の次の2番目に強かったのだけれど……ブルードラゴンのリーダー、ベイローダが尋常じゃない力を出してきて、村長と母は敗れてしまったの。
これで私達ドラゴン形態になれない組は降伏、束縛されたわ。
その後、男女に分けられた上に年齢別でブルードラゴン達の牢獄へ収容されたわ。
男性はどうなったか分からないけれど、女性の母達世代は実験か何かに連れて行かれた。
そして、15歳以上の女性達は……あまり言いたくはないけど、性の捌け口にされたわ……ブルードラゴン達や、何故か一緒に居た人間に。
私は必死に抵抗して下だけは守ったけど……ほとんどの子は抵抗出来ず犯されたわ。
散々遊ばれた後……私達は14歳以下の子達と共に奴隷として売られてしまったの。
ブルードラゴン達を貶める為に戦争を吹っ掛けてきたって嘘をつかれて、犯罪奴隷者の子供として……ね。
私は拠点を移動し続ける奴隷商に売られて各国を回ったわ……そうして回っている内に私に幸運が巡ってきた。
トライデント王国に来た時にガルム様に出会った、そしてガルム様に私を買っていただいたの……どうやらドラゴン族の話を知っていたようなのよね、それで『気休めにもならないと思いますが、私の所で心の傷を癒しなさい』って言われたのよ。
ちなみに、ソルトと出会ったのはその時ね。
そしてガルム様の元で数ヶ月過ごしている内に、更なる幸運が巡ってきた。
それがコウガ様に出会った事だった……
「これが、私の奴隷になる前からコウガ様に買ってもらうまでの経緯よ」
「そんな事が……あったのか」
カエデと似たような事になっていたなんて……
話の中でブルードラゴンに混じって人間が居たという話……もしやフードの男と関わりが?
「メイラン、ありがとうな話してくれて」
「いえ、確かに辛い過去だけれど……今はコウガ様やみんなが居るから大丈夫よ。そして……コウガ様達が目指してるドラゴンを操るフードの男……もしかしたら私達のドラゴン族の話に関わってるのではないかと思ってるの」
俺と思う所は一緒だったみたいだ、繋がりがないっていう方が疑わしいだろってくらいに。
「俺もそう思った。何だか……出会うべくして俺達は出会ってるような気がするよな、俺とカエデとメイランと」
「そうね、そう思うわ」
これが運命だと言うならば、俺のすべき事は1つだ。
必ず、あのフードの男は倒さねばならない……
「メイラン、辛い出来事があったんすね……自分より辛い思いしてるっす……」
メイランの過去を聞いて、ソルトは驚きと共に自分がこの後話す事に不安を覚えた。
「……私は、これから話すソルトと比べるつもりはないわよ?ソルトだって辛い思いしたんでしょう?」
「それは……そうっすけど」
「なら、比べるのは止めましょう。ソルトがどんな人生を歩んでたって、コウガ様は受け入れてくれるわ、ね?コウガ様」
「もちろんだ」
「ご主人……メイラン……ありがとうっす、じゃ話すっすね……」
自分は前にも話したように、トライデント王国から南に行った先にあるサイラ砂漠のオアシス地帯、そこで栄えた砂漠の国シャイラって所で自分は産まれたっすね。
父も母も砂狼族で、今も生きてるはずっす。
父はシャイラの騎士だったっすから、たまに連れられて王城に入る事もあったんすけど……12歳の頃っすね、王女シャーリィと出会ったのが奴隷になる最初のきっかけだったっす。
シャーリィと出会ってから自分達は仲良くなり、たまにっすけど隠れて会ってたりしてたんすよね。
でも、シャーリィは王女……本来なら近寄れるような存在じゃないっす、でも仲良くなった自分は強くなって騎士としてシャーリィを守りたいって思って師匠の元に弟子入りしに行ったんすよね、それが14歳の頃っす。
1年鍛えて15歳になった誕生日、シャーリィと隠れて会ってた時に事件が起きたっす……
夜、王城から抜け出したシャーリィと自分で一緒に歩いていた時、男数人に囲まれてシャーリィを人質に攫われてしまったっす……
助けようとしたっすけど、人質にされたら動こうにも動けず……
連れ去られた後、自分は直ぐに騎士団に連絡して師匠と共に助けに向かったっす。
結果を言えば助けられて、連れ去った奴らを捕まえる事には成功したっすね、師匠のお陰でっすけど。
それでシャーリィを連れ帰ってる時に騎士団と鉢合わせたっす、そこで自分は騎士団に取り押さえられたんすよ。
現女王であるケイリィ女王から言い渡された罪名は誘拐、王女シャーリィを城の外へ誘き出して誘拐の手助けをしたっていう罪状っす。
シャーリィは自分の為に必死に違うと言い続けてくれたっすけど、残念ながら自分は奴隷に落とされたっす……
ただ、幸運だったのは奴隷に落とされて自分を受け持ったのがガルムさんだったっす……そこだけが唯一の救いだったっすね。
そして1週間かけてシャイラからトライデント王国に来て、2週間くらい経った頃っすかね……
ガルムさんから聞いた話なんすけど、女王ケイリィが殺されたって聞いたっす。
ガルムさんの隠密部隊が調べた所、王女シャーリィを狙ったのは女王ケイリィが目的だったらしかったっすね。
王女シャーリィを連れ去って取り返す際に、シャーリィの影に細工をして、そこに残党である影使いが潜んでいたそうっす。
それでシャーリィとケイリィが近寄った際に影から残党が飛び出してケイリィを殺したっす。
残党は捕らえられて処刑されたっすけど、自分のしていた事でまさか女王が殺される事になるなんて……思ってなかったっすよ……
そして王女シャーリィは女王となり、今も頑張ってると思うっす。
1ヶ月経った頃、シャーリィから手紙が届いたっす。
連れ去り事件の事やケイリィが殺された事も書いてあったっすけど、ソルトを恨んではいない、逆に仲良くしてくれてありがとう、ソルトの帰りを待っていますって書いてくれてて……嬉しかったっすけど、素直には喜べなかったっす。
自分が強ければ、攫われる事なんてなかったっすから……
なんで、罪滅ぼしじゃないっすけど……自分は一回り強くなってからシャーリィに会いに行こうと思ったっす。
「これが自分が奴隷になった理由っす」
「なるほど……自分のせいで国を揺るがす大事件になってしまった、と……」
これは相当ソルトからしたら辛いだろう……
女王シャーリィがソルトを憎んでおらず、逆にソルトを慕っているのが幸いだが……事情を知る騎士団や国民はソルトの事をどう思っているか……考えるだけで胸が苦しくなる。
「ソルト……貴方も貴方で大変な事になっていたのね」
「まぁ……そうっすね」
背後から静かに聞いていたティナとレインとツバキも、2人の話を聞いて胸の苦しさが伝わってくるような険しい顔をしていた。
俺はソルトの主として、何かしてやれる事はないだろうか?
ソルトは強くなってからシャーリィに会いに行くと言っている、そなら俺はそれを応援したい。
今は北に旅をしているので、シャイラには向かえない……なので、今のこの旅が終わってソルトが強くなった時に、1番にシャイラに向かおうと思う。
「ソルト、フードを追い掛ける旅が終わったら……真っ先にシャイラに行こう」
「ご主人……良いんすか?」
「あぁ、気持ちとしては今すぐに奴隷から解放してシャイラに向かわせたいと……」
「嫌っす!!!」
「!?」
言葉を遮るようにソルトが声を上げた。
「ご主人から離れるなんて嫌っす!!!自分ずっとご主人と居たいっす!!!奴隷のままで良いっす!!」
「なっ……」
奴隷のままでいいって……本当にか……?
「一緒に居るとしても、奴隷のままじゃなくてもいいんじゃ……」
「この奴隷の証、これでご主人と繋がってるって感じれるっす、もちろん心から繋がるつもりっすけど……目に見えてご主人の物なんだって1番よく分かるのがこれなんす……初めてご主人と出来た繋がりがこれっす、だからこのままで良いんす!!」
「……」
俺はびっくりして周りにいるみんなの顔を見る、メイランもティナもレインもツバキも、みんなが頷いていた。
ソルトの肩に手を置いたティナはしゃがんで語りかけた。
「ソルト殿、私達も主に対する気持ち、ソルト殿と同じ想いだよ、そうだろう?レイン、ツバキ」
「うん」
「そうね」
今思えば、この3人もミツキの奴隷だ……確か長い間一緒に居るはず、なのに奴隷から解放していないのはこれだからか……!
「ソルトも言うようになったじゃない、私も同じ気持ちよ?コウガ様」
この場全員から各主への想いを聞いた俺は、メイランとソルトにちゃんと応えなくては、と思った。
「2人共……本当に良いのか?俺のわがままにたっぷり付き合ってもらうぞ?」
「もちろんっす、臨む所っすよ。自分は……ご主人が好きっす。何処までも、果までも付いていくっす」
「私も、コウガ様に誓いを立てたあの日を胸に、ずっとお仕えするわ」
カエデとメイランに立てた誓いのように、俺はソルトに誓いを立てる。
「ソルト、俺とずっと一緒に居る事を誓ってくれるか?メイランも、前の誓いに揺らぎはないか?」
「もちろんです、コウガ様」
「誓うっす、自分はご主人と共に歩んで行くっす!!みんなと一緒に!!!」
『加護、忠誠の誓いを取得しました』(ソルト)
『加護、一途な想いが強化されました』(メイラン)
『加護、メイランとの絆が強化されました』(コウガ)
『加護、ソルトとの絆を取得。条件クリアにより変身スキル強化、個体名ソルトの種族へ変身した際、砂狼族の性質引継ぎ及び個体名ソルトの取得スキルの発動が可能になりました。変身スキル発動します』(コウガ)
「!」
俺は砂狼族に強制変身した。
「ご主人、これが例の……」
「あぁ、カエデやメイランの種族に変身するやつだ」
「良かった、自分も……みんなと一緒になれたっすね」
俺はソルトの頭を撫でる、ソルトは気持ちよさそうにしながら俺に抱きついたのだった。
バレス村には火を使うドラゴン族が住んでいて、ドラゴン内ではレッドドラゴンと呼ばれていたわね。
近辺には他の村もあるのだけれど、あまり仲は良くなかったわ。
他の村では風を使うグリーンドラゴン、水を使うブルードラゴン、土と馴染みがあるアースドラゴンが居て、いつも小競り合いが絶えずいつも喧嘩ばかりしていたの。
ドラゴン族は他種族にはない秘密がある、『覚醒』による急成長と、それによりドラゴン形態になれるという物よ、これはブルードラゴン達も同じね。
前にも話したけど、父母共にドラゴン族で、私の母セイランは覚醒によるドラゴン形態になれるのだけど、私の父ビルドが覚醒済でもドラゴン形態になれないタイプだったわ。
ちなみに、覚醒は18歳から始まるのよ、私は17歳だからもう少しね。
今から半年前、ブルードラゴンとの小競り合い中に異変が起きたの。
空が急に暗くなってブルードラゴン達の様子がおかしくなったの、人型だったブルードラゴン達が急に苦しみだし、全員ドラゴン形態になって攻撃してきた。
私達レッドドラゴンも、なれる人はドラゴン形態になって応戦した。
私の母はレッドドラゴンの中で村長の次の2番目に強かったのだけれど……ブルードラゴンのリーダー、ベイローダが尋常じゃない力を出してきて、村長と母は敗れてしまったの。
これで私達ドラゴン形態になれない組は降伏、束縛されたわ。
その後、男女に分けられた上に年齢別でブルードラゴン達の牢獄へ収容されたわ。
男性はどうなったか分からないけれど、女性の母達世代は実験か何かに連れて行かれた。
そして、15歳以上の女性達は……あまり言いたくはないけど、性の捌け口にされたわ……ブルードラゴン達や、何故か一緒に居た人間に。
私は必死に抵抗して下だけは守ったけど……ほとんどの子は抵抗出来ず犯されたわ。
散々遊ばれた後……私達は14歳以下の子達と共に奴隷として売られてしまったの。
ブルードラゴン達を貶める為に戦争を吹っ掛けてきたって嘘をつかれて、犯罪奴隷者の子供として……ね。
私は拠点を移動し続ける奴隷商に売られて各国を回ったわ……そうして回っている内に私に幸運が巡ってきた。
トライデント王国に来た時にガルム様に出会った、そしてガルム様に私を買っていただいたの……どうやらドラゴン族の話を知っていたようなのよね、それで『気休めにもならないと思いますが、私の所で心の傷を癒しなさい』って言われたのよ。
ちなみに、ソルトと出会ったのはその時ね。
そしてガルム様の元で数ヶ月過ごしている内に、更なる幸運が巡ってきた。
それがコウガ様に出会った事だった……
「これが、私の奴隷になる前からコウガ様に買ってもらうまでの経緯よ」
「そんな事が……あったのか」
カエデと似たような事になっていたなんて……
話の中でブルードラゴンに混じって人間が居たという話……もしやフードの男と関わりが?
「メイラン、ありがとうな話してくれて」
「いえ、確かに辛い過去だけれど……今はコウガ様やみんなが居るから大丈夫よ。そして……コウガ様達が目指してるドラゴンを操るフードの男……もしかしたら私達のドラゴン族の話に関わってるのではないかと思ってるの」
俺と思う所は一緒だったみたいだ、繋がりがないっていう方が疑わしいだろってくらいに。
「俺もそう思った。何だか……出会うべくして俺達は出会ってるような気がするよな、俺とカエデとメイランと」
「そうね、そう思うわ」
これが運命だと言うならば、俺のすべき事は1つだ。
必ず、あのフードの男は倒さねばならない……
「メイラン、辛い出来事があったんすね……自分より辛い思いしてるっす……」
メイランの過去を聞いて、ソルトは驚きと共に自分がこの後話す事に不安を覚えた。
「……私は、これから話すソルトと比べるつもりはないわよ?ソルトだって辛い思いしたんでしょう?」
「それは……そうっすけど」
「なら、比べるのは止めましょう。ソルトがどんな人生を歩んでたって、コウガ様は受け入れてくれるわ、ね?コウガ様」
「もちろんだ」
「ご主人……メイラン……ありがとうっす、じゃ話すっすね……」
自分は前にも話したように、トライデント王国から南に行った先にあるサイラ砂漠のオアシス地帯、そこで栄えた砂漠の国シャイラって所で自分は産まれたっすね。
父も母も砂狼族で、今も生きてるはずっす。
父はシャイラの騎士だったっすから、たまに連れられて王城に入る事もあったんすけど……12歳の頃っすね、王女シャーリィと出会ったのが奴隷になる最初のきっかけだったっす。
シャーリィと出会ってから自分達は仲良くなり、たまにっすけど隠れて会ってたりしてたんすよね。
でも、シャーリィは王女……本来なら近寄れるような存在じゃないっす、でも仲良くなった自分は強くなって騎士としてシャーリィを守りたいって思って師匠の元に弟子入りしに行ったんすよね、それが14歳の頃っす。
1年鍛えて15歳になった誕生日、シャーリィと隠れて会ってた時に事件が起きたっす……
夜、王城から抜け出したシャーリィと自分で一緒に歩いていた時、男数人に囲まれてシャーリィを人質に攫われてしまったっす……
助けようとしたっすけど、人質にされたら動こうにも動けず……
連れ去られた後、自分は直ぐに騎士団に連絡して師匠と共に助けに向かったっす。
結果を言えば助けられて、連れ去った奴らを捕まえる事には成功したっすね、師匠のお陰でっすけど。
それでシャーリィを連れ帰ってる時に騎士団と鉢合わせたっす、そこで自分は騎士団に取り押さえられたんすよ。
現女王であるケイリィ女王から言い渡された罪名は誘拐、王女シャーリィを城の外へ誘き出して誘拐の手助けをしたっていう罪状っす。
シャーリィは自分の為に必死に違うと言い続けてくれたっすけど、残念ながら自分は奴隷に落とされたっす……
ただ、幸運だったのは奴隷に落とされて自分を受け持ったのがガルムさんだったっす……そこだけが唯一の救いだったっすね。
そして1週間かけてシャイラからトライデント王国に来て、2週間くらい経った頃っすかね……
ガルムさんから聞いた話なんすけど、女王ケイリィが殺されたって聞いたっす。
ガルムさんの隠密部隊が調べた所、王女シャーリィを狙ったのは女王ケイリィが目的だったらしかったっすね。
王女シャーリィを連れ去って取り返す際に、シャーリィの影に細工をして、そこに残党である影使いが潜んでいたそうっす。
それでシャーリィとケイリィが近寄った際に影から残党が飛び出してケイリィを殺したっす。
残党は捕らえられて処刑されたっすけど、自分のしていた事でまさか女王が殺される事になるなんて……思ってなかったっすよ……
そして王女シャーリィは女王となり、今も頑張ってると思うっす。
1ヶ月経った頃、シャーリィから手紙が届いたっす。
連れ去り事件の事やケイリィが殺された事も書いてあったっすけど、ソルトを恨んではいない、逆に仲良くしてくれてありがとう、ソルトの帰りを待っていますって書いてくれてて……嬉しかったっすけど、素直には喜べなかったっす。
自分が強ければ、攫われる事なんてなかったっすから……
なんで、罪滅ぼしじゃないっすけど……自分は一回り強くなってからシャーリィに会いに行こうと思ったっす。
「これが自分が奴隷になった理由っす」
「なるほど……自分のせいで国を揺るがす大事件になってしまった、と……」
これは相当ソルトからしたら辛いだろう……
女王シャーリィがソルトを憎んでおらず、逆にソルトを慕っているのが幸いだが……事情を知る騎士団や国民はソルトの事をどう思っているか……考えるだけで胸が苦しくなる。
「ソルト……貴方も貴方で大変な事になっていたのね」
「まぁ……そうっすね」
背後から静かに聞いていたティナとレインとツバキも、2人の話を聞いて胸の苦しさが伝わってくるような険しい顔をしていた。
俺はソルトの主として、何かしてやれる事はないだろうか?
ソルトは強くなってからシャーリィに会いに行くと言っている、そなら俺はそれを応援したい。
今は北に旅をしているので、シャイラには向かえない……なので、今のこの旅が終わってソルトが強くなった時に、1番にシャイラに向かおうと思う。
「ソルト、フードを追い掛ける旅が終わったら……真っ先にシャイラに行こう」
「ご主人……良いんすか?」
「あぁ、気持ちとしては今すぐに奴隷から解放してシャイラに向かわせたいと……」
「嫌っす!!!」
「!?」
言葉を遮るようにソルトが声を上げた。
「ご主人から離れるなんて嫌っす!!!自分ずっとご主人と居たいっす!!!奴隷のままで良いっす!!」
「なっ……」
奴隷のままでいいって……本当にか……?
「一緒に居るとしても、奴隷のままじゃなくてもいいんじゃ……」
「この奴隷の証、これでご主人と繋がってるって感じれるっす、もちろん心から繋がるつもりっすけど……目に見えてご主人の物なんだって1番よく分かるのがこれなんす……初めてご主人と出来た繋がりがこれっす、だからこのままで良いんす!!」
「……」
俺はびっくりして周りにいるみんなの顔を見る、メイランもティナもレインもツバキも、みんなが頷いていた。
ソルトの肩に手を置いたティナはしゃがんで語りかけた。
「ソルト殿、私達も主に対する気持ち、ソルト殿と同じ想いだよ、そうだろう?レイン、ツバキ」
「うん」
「そうね」
今思えば、この3人もミツキの奴隷だ……確か長い間一緒に居るはず、なのに奴隷から解放していないのはこれだからか……!
「ソルトも言うようになったじゃない、私も同じ気持ちよ?コウガ様」
この場全員から各主への想いを聞いた俺は、メイランとソルトにちゃんと応えなくては、と思った。
「2人共……本当に良いのか?俺のわがままにたっぷり付き合ってもらうぞ?」
「もちろんっす、臨む所っすよ。自分は……ご主人が好きっす。何処までも、果までも付いていくっす」
「私も、コウガ様に誓いを立てたあの日を胸に、ずっとお仕えするわ」
カエデとメイランに立てた誓いのように、俺はソルトに誓いを立てる。
「ソルト、俺とずっと一緒に居る事を誓ってくれるか?メイランも、前の誓いに揺らぎはないか?」
「もちろんです、コウガ様」
「誓うっす、自分はご主人と共に歩んで行くっす!!みんなと一緒に!!!」
『加護、忠誠の誓いを取得しました』(ソルト)
『加護、一途な想いが強化されました』(メイラン)
『加護、メイランとの絆が強化されました』(コウガ)
『加護、ソルトとの絆を取得。条件クリアにより変身スキル強化、個体名ソルトの種族へ変身した際、砂狼族の性質引継ぎ及び個体名ソルトの取得スキルの発動が可能になりました。変身スキル発動します』(コウガ)
「!」
俺は砂狼族に強制変身した。
「ご主人、これが例の……」
「あぁ、カエデやメイランの種族に変身するやつだ」
「良かった、自分も……みんなと一緒になれたっすね」
俺はソルトの頭を撫でる、ソルトは気持ちよさそうにしながら俺に抱きついたのだった。
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