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63話 Aランクの戦い

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 ソルトとの絆を手に入れて、メイランとの絆が強化された。
 加護が強化されるなんて思いもしなかったが、目に見えない絆が強くなったってのが分かるのはなんだが嬉しい気分になる。

「コウガ殿、何やら雰囲気が少し変わったようだが……?」
「これは、加護を手に入れた際の強制変身なんだ。今まではカエデの狼人族の姿だったんだが、今はソルトの砂狼族の姿に変わってる」
「なるほど、同じ狼だから違いが分からないな……」

 種族をあまり知らない人からしたら、確かに違いは分かりにくいだろうな。
 厳密に言えば毛の量と質が違うのだが……

「全然違うわよ!私の耳の毛とソルトの耳の毛をよく見てみなさいティナ!」

 レインが説教する時のような顔をしてティナに詰め寄った。
 レインの急変に驚いたティナだったが、レインの耳とソルトの耳に顔を近付けて見比べる。

「むむ……?うーむ」
「ひゃう!」
「えっ、ちょ……ふぁっ……息が、くすぐったいっす……」
「あ、あぁすまない!気になってつい……」

 2人して耳に息がかかって声が漏れてしまって恥ずかしそうにしている。
 狼になってみて分かったんだが、人の時よりも聴力が鋭くなって感覚も敏感になるんだよな。
 風が入ってきたりゴミや砂が入るとムズムズしてくる時がある。

「結局違いが毛の量くらいしか分からなかったぞ……」
「もうそれでいいわ……実際違うし」

 レインが追求するのを止めたようだ、まだ顔の赤みが取れていない。
 俺は砂狼族から狼人族へ変身を戻して問い掛けた。

「さて、これからどうしようか?」
「んーどうするっすか?ティナさんのAランクタンクを2人で崩す練習でもするっすか?」
「む?私は構わないぞ!団体戦なら大体タンクが居るからな、どう崩すか模索してみろ。お互いの技とか動きも確認し合いながらやってみるといい」

 ティナは長剣と盾を準備して身体を解しにかかる。

「そうね、ティナを抜けたら勝てないタンクなんて多くないわ、ティナの強さと盾の崩し方を私達が実演して見せてあげるから参考にしなさい」

 すると、ツバキが武器を取ってレインと共にティナと対峙する。
 レインは最初から素手で行くようだ。

「む、2人が相手か……なら本気出してもいいな?」
「ええ、私達も本気で行くわよツバキ!」
「承知!準備はいい?ティナ」
「いつでもいいぞ、掛かってこい!」

 ティナは盾をどしっと構えて、レインの特攻に備える。

「行くよ、レイン」
「おっけー!」

 ツバキは闇の空間を生み出して、そこからめちゃくちゃでかい手裏剣を出てきた、それにレインが触れると風が手裏剣に纏い出す。
 レインがいつも身体に纏わせているやつを手裏剣に移したって感じか。

「風来……大風車!」

 ツバキが風の纏う大きな手裏剣をティナに向けて放った。

「コウガ様!ツバキさんと手裏剣が魔力で繋がってるわ!」
「糸か!?」
「いえ!魔力だけで作られた糸よ!」

 真っ直ぐ投げられた手裏剣が右往左往自由に動き出す。

「自由に動く手裏剣、毎度思うが相手にすると厄介だな!」

 ティナは斜め上方向から迫る手裏剣を盾で弾き飛ばそうとするが、手裏剣に纏う風が盾で弾けて物凄い風圧が生まれる。

「ぐうぅぅ!重いっ!だが負けん!!シールドバッシュ!」

 シールドバッシュは盾を突き出して対象を突き飛ばす技だ。
 ティナはスキル、シールドバッシュの力技で手裏剣と風圧を空へ突き飛ばす。
 風圧が弾けたと思えば、ソルトが背を低くしたままティナのすぐ側にまで駆けていた。

「くっ……分かっていても止められない!」

 大風車を弾き飛ばすのに力を使っていたので、レインが迫っていたのは分かっていたが防ぐ事が出来なかった。

「風よ、私に力を貸して!爆裂波!」
「ぬうっ!」

 シールドバッシュを斜め上の上空へ向けて放っていた事により、盾の下まで潜り込む事に成功していたレインは盾に向けて爆裂波を放った。
 爆裂波は空気を圧縮した玉を弾けさせて前方に衝撃を飛ばす技のようだ。
 衝撃が発生し、盾が空へと吹き飛ばされる。
 盾が吹き飛んだのを見たツバキが、吹き飛ばされた手裏剣を再度コントロールし、盾に糸を巻き付けて回収する。

「く、くそっ!盾が!」

 盾を吹き飛ばした衝撃によりティナも吹き飛ばされていたが、両足と片手で着地して地滑りするも持ち堪える。

「今よ!」

 そこにレインが風による加速でティナに迫る。

「盾が無くなろうと、まだ私は負けん!ふん!」
「きゃっ!」

 ティナの身体から衝撃波は発生してレインが吹き飛び、ティナの身体は赤いオーラに包まれた。
 レインは空中で体勢を制御して着地する、そしてバックステップしてツバキに合流する。

「敵にするとあれの威圧感って半端ないわね」
「うん、何度も相手してきたけど未だに慣れない」

 2人は力を解放したティナと向き合って睨み合う。
 仕掛けたのはティナだった。

「大地よ、私にも力を貸してくれ」

 ティナが地面に手を置くと、土がどんどん変形して盾の形を型どっていく。

「ご主人、土から盾が出来ていくっす!」
「あぁ、土魔法を応用するとあんなのまで出来るんだな、しかし元は土だ……耐久性はどうだ?」

 ティナは完成した盾に溢れ出る赤いオーラの力を盾に流し込む。

「やっぱり硬さを気にしてるわね、1回見せてあげましょうか……ふっ!」

 レインはティナに迫って渾身の一撃を土で出来た盾にぶち込み、バク宙するとレインの飛んだ後ろから火の玉付きのクナイが飛んできており、クナイが盾に弾かれた瞬間に爆発する。
 爆発により黒煙が上がったがすぐ視界がクリアになる、土の盾は崩れることなく存在していた。

「耐久面も問題なしか、あれは凄いな」

 土魔法をしっかりと操る事が出来れば、俺もあのような事が出来るようになるんだろうか?
 出来るなら習得してみたい。

「ツバキ!」
「分かってる!」

 ツバキは闇の空間より、御札を大量に取り出した。

「火を宿す、感知して弾ける爆薬となれ……散らばれ!」

 ツバキが御札に魔力を流してから大量に空へ放つと、それぞれがティナの元へ飛んでいき、ティナの周りの地面に散りばめるように設置された。

「感知して弾ける爆薬……地面に設置……もしかして地雷か!?」
「ご主人、地雷ってなんすか?」
「地雷ってのは、俺の前世にあった爆弾の1種だ……要するに地面に散らばったあの御札を踏んだり手をついたりすると、爆発する」
「「!?」」

 ソルトとメイランは目を見開いて驚いていた。

「なっ……爆発したらティナさんが危ないっす!」
「ソルト!問題ないわよ!」
「えっ?」

 レインは戦闘中なので、視線はティナに向けられたままだが答えてきた。

「良いから見てなさい!」

 ティナは1歩踏み出し、地雷御札を踏む。

「「「あっ!」」」

 ティナは爆発に巻き込まれるが、びくともしていない。

「嘘だろ、なんだあの硬さは」

 あの赤いオーラは防御力を上げているみたいだ。
 ティナは地雷を潰しにかかる。

「蒼破連弾!」

 ティナは蒼破を周囲に撒き散らし、設置した地雷をどんどん破壊していく。

「ツバキ!後30秒くらい!?」
「うん、もう少し!」

 レインはツバキに秒数を確認してティナへ向かっていく。
 ツバキは闇の空間に手を入れて何かをしている、何か大きい術や道具を用意しているのだろうか?
 レインはティナが破壊した地雷後を足場にして、未発動地雷を避けながらティナに連撃を加えるが全て土盾でガードされる。
 あれだけの耐久力があるのにレインの連撃を盾でガードする意味はあるのか……?
 あのオーラが魔力だと仮定すれば、魔力で固めた盾なら大丈夫だが、生身を魔力で守るとその分魔力が失われる?いや、分からないな。

「さすがに2対1はきついっ……な!」
「そりゃそうよね、そろそろ例のあれが来るわよ?私の相手にしてていいの?」
「この連撃の中にあれをどうにかしろと?言ってくれるなレイン」

 2人は話しながら攻防を繰り広げている。
 そして30秒経ち、レインが上空へ飛び上がるとツバキより放たれたヌンチャクの鎖部分がティナを巻き付ける。
 ヌンチャクの先端には御札が1つ貼られていた。

「くっ、これで終わりか」
「ドレインマジック……」

 ツバキが用意していたのは、魔力を奪う札だった。
 魔力を奪う札は魔力を込めて起動させるのに1分掛かるハイリスクハイリターンな御札。
 効果時間がかなり短く、戦闘内で起動させないと間に合わないので1人では使えない。
 しかし、チーム戦で隙を無くせるのであれば、1人は魔力切れ近くまで弱体化させられる奥義みたいなものだった。
 ティナの魔力が失われていき、赤いオーラが解除された地点でドレインマジックも解除され、戦いは終了した。
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