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83話 俺も怒っている

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 メイランの火魔法上級であるエクスプロージョンノヴァにより、相手の3人は丸焼きとなった。
 火が収まる頃には、既に敵の3人は場外で気絶していた、上限ダメージか気絶で弾き出されたみたいだな。

「メイランお疲れ様、上手くいったな」
「ええ!1発成功するとは思わなかったわ!援護ありがとうコウガ様」
「2人共お疲れっす!」
「ソルトもお疲れ様」
「あの魔法凄かったっすね!さすがメイランっす! 」
「ふふ、ありがとう」

 3人で先程の戦いについて話しながらステージを後にする。
 俺達にやられたあの3人は、俺達が動き出す前に救護班によって運ばれて行ったが、気絶しているだけだから大丈夫だろうって言っていたのが聞こえたので、そのまま戻る事にした。

 入場口に入ると、誰も居ないのを見計らってシェミィが影からニュッと現れる。

「パパ、みんなもお疲れ」
「お疲れ様シェミィ、魔力ありがとうな」
「んーん!全然余裕、魔力も殆ど減ってない」

 シェミィは不思議そうに自分の魔力を感じ取る。
 影から出てきたシェミィの手を取りゆっくり歩く。

「なら良かった、でも無理はしないようにな」
「ん!あと、ついさっき気付いた事がある」
「ん?なんだ?」
「パパとママ2人で契約してから、魔力がパパとママから常に供給されてる感覚がある、変身し続けても魔力が減ってる気がしない」
「そうなのか?まぁ確かに、シェミィやカエデの魔力は常に感じるが……それなら、この姿はずっと維持出来るとみていいのか?」
「離れたらどうなるかは分からない、だけど多分パパとママの傍を離れない限りはずっと維持出来そう、パパは魔力が減ってる感覚ある?」
「いや……特にそんな感覚はないな……」

 どういう事だろう?
 変身し続ける為の魔力が、どれだけのペースで減っていたのかは分からないが……俺もシェミィも魔力が減っていないのはおかしい。
 ならカエデが魔力消費の肩代わりしている?

「どう思う?シェミィ」
「んー……今私達の魔力は1つに纏まって混ざりあってる、これは間違いない。そこから考えるに……魔力の回復力も3人分合算されているとすれば?」
「……なるほど、そういう事か。魔力回復力が3人分だから、変身維持の魔力を賄えている……か」
「そう、そうとしか思えない」

 確かにその線はありそうだ、常に
 2人の魔力を感じるのは1つに混ざりあっている証拠だ。
 魔力の貸し借りには本人同士の意思疎通がいるのは変わりないっぽいけどな。
 ……もしや俺の魔力回復力って……高いのでは?こんな所にも目に見えないような調整入れてたのかレアさんや……

 そういえば、シェミィって何故こんなに知性があるんだ?
 元はただのストームキャットだったはずだよな……?
 んー……分からないが、まぁ気にする程でもないか?知性あるお陰で助かってるんだしな。
 ある程度納得した所で応援席へ戻る。

「ご主人様、みんなもお疲れ様!」
「コウガさん、お疲れ様です!」

 みんなからお疲れ様の言葉を掛けてもらいつつ席に着席。
 そして、先程話題にでた魔力の話をカエデにしてみると。

「私の魔力も減ってる所か、ご主人様とシェミィからの魔力のお陰で常に潤ってるよ」
「やっぱりか、シェミィの言ってたやつで確定っぽいな」
「って事は……これからずっとシェミィとお話出来るね!」
「ん!楽しみ!」

 シェミィといつでも話せるようになった事に喜ぶ2人。
 こうして皆で色々話ながらも試合を観戦していたのだが、結局パパ呼びママ呼びは変えられないという結論に至った。

「コウガさんがパパ……ふふ」

 ミツキが何故か微笑む顔をしていたが、気にしない事にした。

 そして昼休憩の時間になった。
 みんなで囲んで食べるお弁当はほんと美味しい、ミツキとヴィーネの努力の結晶なのもあるが、やはり元の世界の食事は凄く心が満たされる。

「おやおや、やっぱり美味しそうな物を食べてますねぇ!」

 急に声が聞こえて振り返ると、この大会で司会をやっているミーサーが立っていた。

「ミーサーさん、お疲れ様です」
「やほやほミッツー!」

 ミッツーとはミツキの事らしい、かなり親しい仲であるようだ。

「な、なんでミーサーさんがここに?」
「いやー美味しそうな匂いがしまして、やっぱり日本食はいいですよねぇ!」
「……もしや、俺も流れ人なのに気付いて?」
「もちろんです!あの強さに見た目、それにミッツーとこんなに仲良さげなんですから、間違えませんよー」
「まぁ、ミーサーさんもおなしゃすって言い出すから、すぐ分かりましたよ」
「やっぱりです?同郷に会うには、やはり向こうの言葉が有効じゃないですか」
「確かに」

 俺もミーサーが流れ人だと気付いたのはその言葉だったからな。

「コウガさん、司会しながら見てましたが、やっぱり凄いですねぇ」
「そ、そうか……?」
「戦闘の腕前もそうですけど、女の子に関しては両手に花どころか選り取りみどりじゃないですか!私は参加者の情報を一応仕事上知ってますが……登録時にコウガさんの周りに居なかったセシルさんやエリスタさんまで今連れ込んでるではないですか!それにこの白い子は誰ですか!犯罪の匂いがしますよ!?」

 しまった……この子がシェミィだって言っても信じて貰えるわけがない……しかも、変身させる訳にもいかないよな……

「い、いや!こ、これには訳がだな……!」
「いや、言わなくても分かりますよ!異世界転生と言えば……そう!!!ハーレム!!!!!ハーレムを作るおつもりでしょう!!!!……ハッ!私も危ない!?」

 ミーサーは自分の胸を隠すように腕をクロスさせて隠す。

「いや、ねぇよ……ハーレムなのは認めるが……」

 思わず普段使わない言葉を使ってしまった、まぁハーレムなのは否定しようがないからな。

「まぁ、冗談は置いといて……私が来た本当の理由をお伝えします。個人戦第3位となりましたので、大会運営から冒険者ギルドを経由して報酬が入って来ます、その受け取りを明日以降に冒険者ギルドへ来てもらう必要があるのでお伝えしますね」
「あっ、はい分かりました!」

 報酬なんてあったのか、その辺見てなくて知らなかった。

「では、これにてドロンッ!すさささささ!」

 ミーサーは忍者風なだけの、なんちゃって走りで去っていった。

「……何だか面白い人だったね、ご主人様」
「そ、そうだな……何だが同郷として恥ずかしい気がする……」
「ま、まぁミーサーはそういう人ですから……根は良い人ですよ、面白いですし」
「それは分かる」

 ミーサーの乱入がありつつも昼食を食べ終わると、昼休憩も終わったようで団体戦がどんどん進んでいった。 
 次の試合が俺達の番なので控室に居るのだが、次戦うPTはシード枠だったので俺達の二回戦の相手は誰なのか、名前を見ただけでは分からなかった。

「次戦うやつはだれだろうな?」
「分からないけれど、次は骨がある相手だと嬉しいのだけれどね」
「そうっすね、順当にいけば3回戦がやばいっすから……」

 3回戦に当たるのは、恐らく個人戦1位と2位がいる騎士団だろう。
 負けに行くつもりは無いが……実力的には厳しいだろう、でも今出せる精一杯を出すためにも次の試合でしっかり動いておきたい。
 モニターを見ると丁度試合が終わったようだ、しかしながら対戦相手が控室には来なかった。

「さて、いくか!」
「「了解!」」
「シェミィも、頼んだぞ」
「ん!」

 俺達は入場口からステージまで上がっていくと、対戦相手が居たのだが……

「「あっ!!あの時の!!」」

 見ると、ノイシュに来た際に奴隷だと言って侮辱してきた人族2人と鬼人族女のPTだった。

「……っ」

 カエデに身体を真っ二つに引き裂かれた男は、顔が真っ青になってしまっていた。

「よくものこのこと私達の目の前に現れたわね……!!許さないわよ!!!」

 メイランが翼を広げて威嚇する。

「ひっ……」

 ずんずんと対戦相手に迫っていくメイランを、俺は静止させた。

「その辺にしといてやれメイラン」
「コウガ様……でもっ……」
「続きは試合が始まってからだ」

 可愛い俺の仲間たちを侮辱したあの3人を睨みつけ、魔力を放出し纏わせる。

「……!」
「俺も内心では怒ってんだよ、続きは……始まってからだ」
「……はい!コウガ様!」
「自分も、本気でいくっす……」

 俺達3人の殺気は、ただでさえ怖気ついていた相手を更に委縮させた。

「さぁ、何やら不穏な空気ですが……団体戦2回戦第5試合、そろそろ始めたいと思います!!構えてください!」

 俺はナイフを握る、メイランは翼を広げ、ソルトは集中力を高めていく……ソルトは極限集中で速攻を決めるつもりだ。

「それでは試合開始します!レディーーーーッ、GO!!!」
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