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94.5話 魔王を復活させるために

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 一方その頃

「……」

 考え事をしながら、メイランの故郷であるバレス村を歩くフードの男。
 この男の名はカイジス、魔王に仕えし最上位悪魔である。
 トーランの村や、カナリア村……その他にも、数ヵ所の小さな村を壊滅させた張本人だ。
 彼の魔法により、バレス村の中には誰も入れない様にしてある。

「この魔法も完成したと思っていたんだけどねぇ……やはり、魔法のかかりが悪かったのを、すぐに何とかすべきだったねぇ」

 振り返っているのは、自分が操ったと思っていたストームキャットが自分の手から離れてしまった件だ。

「ストームキャットを取り戻す為にあの女を攫うようにと雇った盗賊も壊滅、更にはダイ平原を任せていた魔物の反応も消えた……アイツらはどれだけ私の邪魔をするのかねぇ!」

 カイジスは近くに落ちていた瓶を叩き割る。

「まだ各地には、身を潜ませて力を蓄えさせてるペットは居るけどねぇ……向かわせるべきか、力を蓄えさせるべきか……悩むねぇ」

 カイジスは再度歩き出し、研究施設に入る。
 その中には牢があり、その中には魔力封印された人達が大勢いた……ブルードラゴン、レッドドラゴン、グリーンドラゴン、アースドラゴン……その他にも、操る事に成功した魔物が全て収容されている。
 全員が魔法によりいつでも操れる状態ではあるのだが、覚醒によるドラゴン形態になり続けていると魔力が疲弊し使い物にならなくなるので、普段はこうして人の姿で留置している。

「奴らを確実に仕留める為にも、更なる研究が必要だねぇ」

 カイジスは1人のレッドドラゴンの女を研究室へと連れ込む。
 その研究室の中には、操り人形となっているブルードラゴンの男が助手として研究の手伝いをしていた。
 そこに、お茶を運ぶレッドドラゴンの女が1人……その名はセイラン、メイランの母だ。

「お茶が入りました」
「そこに置いておくんだねぇ」
「かしこまりました」

 セイランも操られた1人なのだが、牢に入れられている人達との違いがあった。
 それは、今出来る最大の操り魔法を行使し、ただ暴れたり操るだけの人形ではなく、カイジスの忠順な下僕として仕えさせる事が出来たのだ。
 しかし、その魔法を行使する際の魔力消費が激しい為、まだ3人にしか行使出来ていない。
 1人目はブルードラゴンのリーダー、ベイローダという女性。
 2人目はアースドラゴンのリーダー、クレイモアという男性。
 そして3人目であるレッドドラゴンの2番手、セイランである。
 何故セイランが選ばれているのかと言われたら、実験の際にレッドドラゴンリーダーであった村長を、実験失敗により使い物にならなくなり処分したからである。
 そして、4人目にする予定だったグリーンドラゴンは、捕まえる前に情報が漏れており、捕獲する前に逃げられてしまっていた。
 セイランはお茶をテーブルに置き、次の指示を待つ。

「お前は、私が研究を終えた後に奉仕する役目を与える、研究が終わるまでにしっかり準備しておくんだねぇ」
「かしこまりました」

 セイランはカイジスの部屋に戻り……カイジスを受け入れる準備を始めた。
 カイジスは次の指示として、ブルードラゴンの男とレッドドラゴンの女を交わらせる。

「ブルードラゴンとレッドドラゴンの交配で……更に私の魔法を組み込めば、私に忠順な新しい……今居るヤツらより強いドラゴンが産み出せるはずだねぇ!」

 魔法により成長具合すら操る魔法を取得しているカイジスは、これで戦力を増やそうとしていたのだ。

「新しいドラゴンの誕生、そしてドラゴンが秘めている覚醒の力、この圧倒的な力により……私は人間をなぶり殺し、人間の魂を集めて魔王様を復活させるんだねぇ!!」

 魔王は数ヶ月前に勇者によって倒された……しかし、魔王の魂が浄化される直前、隙をついて魂と崩壊寸前だった身体を封印する事に成功していたのだ。
 勇者はそれに気付かず、倒したと思い込んでいるはず……ならば、魔王を復活させ、今度こそは魔王の手で世界を……!とカイジスは考えていたのだった。

「待ってるんだねぇ魔王様……すぐに蘇らせるんだねぇ」

 カイジスは封印されている魔王の身体を回復させる実験を繰り返しながら、その時をじっと待つのであった。 
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