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燕の比翼密やかに 二
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「子供いて、匹耦と、どうしてる?」
仕事中――部屋で回されてきた新入りの選抜試験についての書類を眺めていると疲れてきた。これは大事な仕事だが、大事なだけに、俺としては飛ぶほうがずっと楽だ。隣の机の文官リンドウも、似たようなのに判を捺すのに飽きてきているのが分かったので訊ねる。こいつも子持ちだった。訝しげに眉を上げた。
「なんだ藪から棒に。仲良くやっとるが」
「いや……夜さ、子供いたらそういうことできなくないかって」
「あー、そういう話かい……」
もっと分かりやすく言えば伝わった。リンドウは笑って肩を竦める。
「寝てる間にする」
「起きるだろ」
「莫迦、起きないようにこっそりやるんだよ。うるさくしなきゃ平気だろ」
答えはそんなんで、全然為にならなかった。俺は黙った。咄嗟に上手い返しが思いつかなかったし、本気で困っているので、誤魔化さずもう少し食い下がりたかった。
「……うるさいのか?」
「る、さくはない、けどさ……」
うるさい。俺が。声抑えるのなんて無理。マキが声出すようにしてくるんだから。
絶対起きる。昔、親が致してるところに出くわしてしまった日のことも思い出した。俺ももう知った年だったから見なかったふりをしたが、あれは暫らく気まずかった。サイカチはそうもいかないだろう。起きて、なにしてんの! って聞いてくるに違いない。交合いどころじゃない。
リンドウは、うるさいのか……という顔をしていた。ぱん、と机をひっ叩く。
「マキのこと想像すんなよ!」
「しとらんしとらん。させるな」
「ともかくそれで困ってるんだよ、なんか知恵ないか」
「知恵ったってな……」
そこで、女たちがやってくる声が廊下から聞こえるのに口を閉じた。自分たちも集まるとかしましいくせに、こういうときには耳敏く、やらしい話して、なんて言われるのだ。この書類も他にも回さなきゃならんし、さっさと読まないと。くだらん話してないで……いや俺には大事な話なんだけど。
こそっと、立ち上がるついで横に来て、リンドウは言った。
「まあ、素直に誰かに頼むのがいいんじゃないか。子供、昼はまだ露家にいるんだろう? 夜も一晩くらい見てくれって、頼んでみたらどうだ」
「んー……」
俺は曖昧に返事をする。
昼間は確かに、俺もマキも務めがあるから、元いた家で世話をしてもらってたりする。孤児や、近所の家の子が集まって過ごす大きな露家だから、そういう親は結構多く変わった話じゃない。
でも、なあ。サイカチは俺らが引き取った子なんだから務めから帰ったらちゃんと見てやりたい。露家の主になんか思われたら嫌だし。こんなことで。
でもそう言ってたらいつまで経っても、できないわけで。
――晩に、サイカチを寝かしつけてマキを窺う。こっちも寝てやがる。それに、手の届くところにはいるけれどやっぱり、サイカチの前じゃ無理だった。
息を吐いて二人の寝顔を眺める。なんか似てる。可愛いったらありゃしない。
仕事中――部屋で回されてきた新入りの選抜試験についての書類を眺めていると疲れてきた。これは大事な仕事だが、大事なだけに、俺としては飛ぶほうがずっと楽だ。隣の机の文官リンドウも、似たようなのに判を捺すのに飽きてきているのが分かったので訊ねる。こいつも子持ちだった。訝しげに眉を上げた。
「なんだ藪から棒に。仲良くやっとるが」
「いや……夜さ、子供いたらそういうことできなくないかって」
「あー、そういう話かい……」
もっと分かりやすく言えば伝わった。リンドウは笑って肩を竦める。
「寝てる間にする」
「起きるだろ」
「莫迦、起きないようにこっそりやるんだよ。うるさくしなきゃ平気だろ」
答えはそんなんで、全然為にならなかった。俺は黙った。咄嗟に上手い返しが思いつかなかったし、本気で困っているので、誤魔化さずもう少し食い下がりたかった。
「……うるさいのか?」
「る、さくはない、けどさ……」
うるさい。俺が。声抑えるのなんて無理。マキが声出すようにしてくるんだから。
絶対起きる。昔、親が致してるところに出くわしてしまった日のことも思い出した。俺ももう知った年だったから見なかったふりをしたが、あれは暫らく気まずかった。サイカチはそうもいかないだろう。起きて、なにしてんの! って聞いてくるに違いない。交合いどころじゃない。
リンドウは、うるさいのか……という顔をしていた。ぱん、と机をひっ叩く。
「マキのこと想像すんなよ!」
「しとらんしとらん。させるな」
「ともかくそれで困ってるんだよ、なんか知恵ないか」
「知恵ったってな……」
そこで、女たちがやってくる声が廊下から聞こえるのに口を閉じた。自分たちも集まるとかしましいくせに、こういうときには耳敏く、やらしい話して、なんて言われるのだ。この書類も他にも回さなきゃならんし、さっさと読まないと。くだらん話してないで……いや俺には大事な話なんだけど。
こそっと、立ち上がるついで横に来て、リンドウは言った。
「まあ、素直に誰かに頼むのがいいんじゃないか。子供、昼はまだ露家にいるんだろう? 夜も一晩くらい見てくれって、頼んでみたらどうだ」
「んー……」
俺は曖昧に返事をする。
昼間は確かに、俺もマキも務めがあるから、元いた家で世話をしてもらってたりする。孤児や、近所の家の子が集まって過ごす大きな露家だから、そういう親は結構多く変わった話じゃない。
でも、なあ。サイカチは俺らが引き取った子なんだから務めから帰ったらちゃんと見てやりたい。露家の主になんか思われたら嫌だし。こんなことで。
でもそう言ってたらいつまで経っても、できないわけで。
――晩に、サイカチを寝かしつけてマキを窺う。こっちも寝てやがる。それに、手の届くところにはいるけれどやっぱり、サイカチの前じゃ無理だった。
息を吐いて二人の寝顔を眺める。なんか似てる。可愛いったらありゃしない。
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