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秩父女子竹槍攻撃隊
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えいえいおう、えいえいおうと声をあげながら、私たちは竹槍を突く訓練をつづけています。
約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。
訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。
「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。
「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」
かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました。
美しいかぐやさんとともに戦って死のう、と私は思いました。
「ごめんなさい、かぐやさん。私はもう弱音なんか吐かないわ」
彼女はにっこりと微笑んで、「さあ、ごはんを食べて、休憩しましょう。午後もまた訓練よ」と言いました。
私たちは握り飯をひとつずつ食べました。
小さなおむすびですが、貴重なお米。よく噛んで食べました。疲れたからだに、塩味が沁みるように美味しい。
1945年秋、大日本帝国軍は米軍の大攻勢を受けて山間に退き、本土ゲリラ決戦を敢行していました。
同年8月6日、米軍は広島に原子爆弾を投下しました。
その後、長崎、横浜、新潟、神戸、仙台、東京、山口、札幌、大阪、横須賀、京都、名古屋、高松、佐世保、大宮などにも原爆が投下され、日本は息の根を止められたかに見えました。
でも、無条件降伏などとうてい受け入れられるものではありません。
私たちは日本人総玉砕の覚悟を持って山野に籠もり、本州、九州、四国、北海道に上陸作戦を開始した米軍を迎え撃ったのです。
秩父女学校に通っていた私は、秩父女子竹槍攻撃隊の一員となって、武甲山中に住み、特訓の日々を送っています。米国陸軍が秩父に進行してきたら、山に誘い込み、白兵戦でひと泡吹かせてやろうと思っています。
えいえいおう、えいえいおうのかけ声とともに特訓を行う私たち。
武甲山中腹の疎林が訓練場です。
ぽつり、と秋雨が降り出し、教官となってくださっているもみじ先生が「今日はここまでね。本降りになる前にトンネルに戻りましょう」と言いました。
私たちは竹槍を持って、トンネルに帰ろうとしました。
しかし、さやかさんがうずくまって、動こうとしません。
みんなの先頭に立って歩いていたかぐやさんも、さやかさんの異変に気づきました。
「どうしたの、さやかさん」
彼女はさやかさんにかけ寄って、声をかけました。私も走って、さやかさんの前へ行きました。
「無駄な努力はもう嫌……」とさやかさんが聞き取れないほどの小さな声を出しました。
「無駄な努力なんかじゃありません。がんばって、非人道的な米軍に目にもの見せてやりましょう」
さやかさんは顔をあげ、かぐやさんを睨みました。
「その非人道的なところがアメリカ軍の強さなのよ。原子爆弾を落としつづけて、日本人を大量に殺している。この秩父にだって原爆が投下されるかもしれない。そうなったらもうおしまいよ。武甲山も放射能にまみれて、住めなくなってしまうわ」
雨がざあざあと降り始めて、私たち全員を濡らしていました。
「竹槍なんかで、米軍に対抗することはできないわ……」
さやかさんの頬を濡らしているのが雨なのか涙なのか、私にはわかりませんでした。
突然、かぐやさんが目を赤くしているさやかさんを抱きしめました。
「そうね。でも、私たちにできることはこれしかないの。貴重な銃は正規兵の方々に使っていただくしかない。私たちは竹槍と大和魂で戦うしかないのよ。私にできることは一緒に死んであげることだけしかないけれど、それだけではだめかしら」
さやかさんはかぐやさんに抱かれてとまどっていましたが、やがて力強く抱きしめ返しました。
「ごめんなさい、かぐやさん。わたくしがまちがっていたわ。お国を守る努力を無駄だなんて、もう二度と言わないわ」
55人いる隊員が全員、泣きながらうなずいていました。
こんなふうにかぐやさんを精神的支柱として、秩父女子竹槍攻撃隊はまとまっていたのです。
約2メートルほどの長さの竹槍をひたすら前へ振り出していると、握力と腕力がなくなってきます。とてもつらい。
訓練後、私たちは山腹に掘ったトンネル内で休憩します。
「竹槍で米軍相手になにができるというのでしょうか」と私が弱音を吐くと、かぐやさんに叱られました。
「みきさん、大和撫子たる者、けっしてあきらめてはなりません。なにがなんでも日本を守り抜くという強い意志を持って戦い抜くのです。私はアメリカの兵士のひとりと相討ちしてみせる所存です」
かぐやさんの目は彼女のことばどおり強い意志であふれていました。
美しいかぐやさんとともに戦って死のう、と私は思いました。
「ごめんなさい、かぐやさん。私はもう弱音なんか吐かないわ」
彼女はにっこりと微笑んで、「さあ、ごはんを食べて、休憩しましょう。午後もまた訓練よ」と言いました。
私たちは握り飯をひとつずつ食べました。
小さなおむすびですが、貴重なお米。よく噛んで食べました。疲れたからだに、塩味が沁みるように美味しい。
1945年秋、大日本帝国軍は米軍の大攻勢を受けて山間に退き、本土ゲリラ決戦を敢行していました。
同年8月6日、米軍は広島に原子爆弾を投下しました。
その後、長崎、横浜、新潟、神戸、仙台、東京、山口、札幌、大阪、横須賀、京都、名古屋、高松、佐世保、大宮などにも原爆が投下され、日本は息の根を止められたかに見えました。
でも、無条件降伏などとうてい受け入れられるものではありません。
私たちは日本人総玉砕の覚悟を持って山野に籠もり、本州、九州、四国、北海道に上陸作戦を開始した米軍を迎え撃ったのです。
秩父女学校に通っていた私は、秩父女子竹槍攻撃隊の一員となって、武甲山中に住み、特訓の日々を送っています。米国陸軍が秩父に進行してきたら、山に誘い込み、白兵戦でひと泡吹かせてやろうと思っています。
えいえいおう、えいえいおうのかけ声とともに特訓を行う私たち。
武甲山中腹の疎林が訓練場です。
ぽつり、と秋雨が降り出し、教官となってくださっているもみじ先生が「今日はここまでね。本降りになる前にトンネルに戻りましょう」と言いました。
私たちは竹槍を持って、トンネルに帰ろうとしました。
しかし、さやかさんがうずくまって、動こうとしません。
みんなの先頭に立って歩いていたかぐやさんも、さやかさんの異変に気づきました。
「どうしたの、さやかさん」
彼女はさやかさんにかけ寄って、声をかけました。私も走って、さやかさんの前へ行きました。
「無駄な努力はもう嫌……」とさやかさんが聞き取れないほどの小さな声を出しました。
「無駄な努力なんかじゃありません。がんばって、非人道的な米軍に目にもの見せてやりましょう」
さやかさんは顔をあげ、かぐやさんを睨みました。
「その非人道的なところがアメリカ軍の強さなのよ。原子爆弾を落としつづけて、日本人を大量に殺している。この秩父にだって原爆が投下されるかもしれない。そうなったらもうおしまいよ。武甲山も放射能にまみれて、住めなくなってしまうわ」
雨がざあざあと降り始めて、私たち全員を濡らしていました。
「竹槍なんかで、米軍に対抗することはできないわ……」
さやかさんの頬を濡らしているのが雨なのか涙なのか、私にはわかりませんでした。
突然、かぐやさんが目を赤くしているさやかさんを抱きしめました。
「そうね。でも、私たちにできることはこれしかないの。貴重な銃は正規兵の方々に使っていただくしかない。私たちは竹槍と大和魂で戦うしかないのよ。私にできることは一緒に死んであげることだけしかないけれど、それだけではだめかしら」
さやかさんはかぐやさんに抱かれてとまどっていましたが、やがて力強く抱きしめ返しました。
「ごめんなさい、かぐやさん。わたくしがまちがっていたわ。お国を守る努力を無駄だなんて、もう二度と言わないわ」
55人いる隊員が全員、泣きながらうなずいていました。
こんなふうにかぐやさんを精神的支柱として、秩父女子竹槍攻撃隊はまとまっていたのです。
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