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空鳥綾乃
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ボクの見た目は美少年っぽい。
髪の毛はショートカットで、半分は黄色に染めている。染める位置は美容院に行くたびに変わる。今は右半分が黄色。
まもなく映画がクランクインする。映画撮影中はこの髪の色を維持しなくちゃ。
ボクは女の子にモテる。
今は日本文学科の同級生で、文芸部所属の女の子、空鳥綾乃によく話しかけられている。
綾乃はドンキュッバンなスタイルの持ち主で、顔もかわいいので男の子にモテそうだが、彼氏を作らず、ボクとよく遊んでいる。友だちだと思っているけど、彼女がガチのレズビアンだったらどうしよう。
ボクは親友だと思っていた女の子から告られて、困ったことがあるんだよね。そのことはこの私小説の冒頭に書いた。
綾乃とお茶している。ボクはチョコレートパフェとコーヒー。綾乃はドリアンパフェと紅茶。ドリアンの奇妙な匂いにボクは困惑している。
「それ、美味しいの?」
「餃子の餡に少し砂糖を混ぜたような味かな? 美味しいよ」
「それが美味しいという綾乃の舌が不思議だよ」
「ドリアンは果物の王様と言われているのよ。食べてみる?」
綾乃はサイコロみたいに切られたドリアンを一つスプーンですくって、あーんと言ってボクに差し出した。パクリ。
「まじゅい」
「ぷははは。慣れればやみつきになるよ」
ボクはチョコパフェで口直し。ドリアンを二度と食べる気はない。
「文芸部は最近どう?」
「楽しいよ。元SF研の村上くんって男の子が入部してきた」
「そっちに行ったか。文芸部は定員オーバーなんて言ってたのに、嘘だったんだな」
「誰がそんなこと言ったの?」
「新入部員勧誘の時期に、確かエレナさんとかいう人に言われた。ボクは最初、文芸部に入りたかったんだよ」
「絵玲奈先輩かぁ。あの人は女の子に嫌われてるよ。嫉妬深くて、男が大好きなビッチ」
「村上くんは文芸部でうまくやってるの?」
「たぶん。可愛い男の子だよね。先輩女子から可愛がられてるよ」
「ボクが日本と中国が戦争するシナリオを書いたら、ガチギレして、SF研は反中思想の好戦的団体だって叫んで、退会したんだよ」
「なにそれ。ウケる」
「ボクは反省してる。反戦思想のシナリオのつもりなんだけど、中国人に対してはもっとセンシティブに扱うべき問題だった」
「輝がヒロインの映画を撮るんだよね。早く見たいな。輝は銀幕でも絶対に映えるよ。女優になれるかもしれないねぇ」
「ボクは小説家になりたいんだよ」
「小説家志望は腐るほどいるわ。わたしだってその一人。よほど光る才能を持っていないとなれない。輝は少なくとも外見に関しては、女優の素質が抜群にあるよ」
「綾乃だってかわいい」
「輝は理解していない。きみの中性的な魅力がどれほど稀有なものか。ダイヤモンドの原石という言葉では足りない。たとえばわたしは輝の虜だ。きみはスーパーノヴァだ」
「綾乃の比喩がわからない。あの、立ち入ったことを訊くけど、正直に答えなくてもいいけど、綾乃はレズビアンなの?」
「わたしはバイセクシュアルよ」
「つまり、男も女も愛せる人?」
「そう。わたしは男とも女ともセックスしたことがある」
「ちょっ、声が大きい!」
「ぷははは。輝、顔が赤いよ。もしかして処女?」
「そうだよ。声を小さくしてってば」
「きみの処女を奪いたい」
「ボク、帰る」
「冗談だよ。輝には愛情と友情の両方を感じている。きみは友情を持ってわたしと接してくれればいい。強姦なんて美しくない真似は絶対にしないから安心して」
「まったく安心できない」
「きみがボクと付き合ってくれるなら、浮気はしない。でも今の状態のままなら、別の恋人を作るかもしれない」
「早く恋人を作ってよ」
「セフレならいるんだけどね」
「っ! どうして恋人にならないの?」
「わたしを気持ちよくしてくれるんだけど、愛せないから。輝がダイヤモンドならセフレには石英程度の魅力しかない」
「ボク、綾乃と会わないべきかな」
「それは困るよ。友だちとして遊んでほしい」
「ボクは男性を愛する女だよ。好きな人だっている」
「SF研の会長さんが好きだって言ってたよね。見たことある。あの人格好いいね」
「奪らないでよ」
「きみのものなの?」
「まだちがう」
「告れば?」
「いいタイミングがあれば。でも今告ってもフラれる気がする」
「輝をフるなら、会長さんには恋愛センスがない。ネアンデルタール人的愛情の持ち主なのかもしれない」
「その独特な比喩は綾乃の小説にも表れているのかな」
「たぶん。いや絶対にあるね」
「綾乃の小説が読みたい」
「わたしは長編小説を完結させたことがないの。短編は平凡な出来で、輝には読ませたくない」
「ボクと同じだ。共感するよ。綾乃とはときどき会う必要があるかも。癒される」
「ぷははは。愛してくれていいのよ」
「それはないから」
空鳥綾乃はボクの大切な友だちだ。
髪の毛はショートカットで、半分は黄色に染めている。染める位置は美容院に行くたびに変わる。今は右半分が黄色。
まもなく映画がクランクインする。映画撮影中はこの髪の色を維持しなくちゃ。
ボクは女の子にモテる。
今は日本文学科の同級生で、文芸部所属の女の子、空鳥綾乃によく話しかけられている。
綾乃はドンキュッバンなスタイルの持ち主で、顔もかわいいので男の子にモテそうだが、彼氏を作らず、ボクとよく遊んでいる。友だちだと思っているけど、彼女がガチのレズビアンだったらどうしよう。
ボクは親友だと思っていた女の子から告られて、困ったことがあるんだよね。そのことはこの私小説の冒頭に書いた。
綾乃とお茶している。ボクはチョコレートパフェとコーヒー。綾乃はドリアンパフェと紅茶。ドリアンの奇妙な匂いにボクは困惑している。
「それ、美味しいの?」
「餃子の餡に少し砂糖を混ぜたような味かな? 美味しいよ」
「それが美味しいという綾乃の舌が不思議だよ」
「ドリアンは果物の王様と言われているのよ。食べてみる?」
綾乃はサイコロみたいに切られたドリアンを一つスプーンですくって、あーんと言ってボクに差し出した。パクリ。
「まじゅい」
「ぷははは。慣れればやみつきになるよ」
ボクはチョコパフェで口直し。ドリアンを二度と食べる気はない。
「文芸部は最近どう?」
「楽しいよ。元SF研の村上くんって男の子が入部してきた」
「そっちに行ったか。文芸部は定員オーバーなんて言ってたのに、嘘だったんだな」
「誰がそんなこと言ったの?」
「新入部員勧誘の時期に、確かエレナさんとかいう人に言われた。ボクは最初、文芸部に入りたかったんだよ」
「絵玲奈先輩かぁ。あの人は女の子に嫌われてるよ。嫉妬深くて、男が大好きなビッチ」
「村上くんは文芸部でうまくやってるの?」
「たぶん。可愛い男の子だよね。先輩女子から可愛がられてるよ」
「ボクが日本と中国が戦争するシナリオを書いたら、ガチギレして、SF研は反中思想の好戦的団体だって叫んで、退会したんだよ」
「なにそれ。ウケる」
「ボクは反省してる。反戦思想のシナリオのつもりなんだけど、中国人に対してはもっとセンシティブに扱うべき問題だった」
「輝がヒロインの映画を撮るんだよね。早く見たいな。輝は銀幕でも絶対に映えるよ。女優になれるかもしれないねぇ」
「ボクは小説家になりたいんだよ」
「小説家志望は腐るほどいるわ。わたしだってその一人。よほど光る才能を持っていないとなれない。輝は少なくとも外見に関しては、女優の素質が抜群にあるよ」
「綾乃だってかわいい」
「輝は理解していない。きみの中性的な魅力がどれほど稀有なものか。ダイヤモンドの原石という言葉では足りない。たとえばわたしは輝の虜だ。きみはスーパーノヴァだ」
「綾乃の比喩がわからない。あの、立ち入ったことを訊くけど、正直に答えなくてもいいけど、綾乃はレズビアンなの?」
「わたしはバイセクシュアルよ」
「つまり、男も女も愛せる人?」
「そう。わたしは男とも女ともセックスしたことがある」
「ちょっ、声が大きい!」
「ぷははは。輝、顔が赤いよ。もしかして処女?」
「そうだよ。声を小さくしてってば」
「きみの処女を奪いたい」
「ボク、帰る」
「冗談だよ。輝には愛情と友情の両方を感じている。きみは友情を持ってわたしと接してくれればいい。強姦なんて美しくない真似は絶対にしないから安心して」
「まったく安心できない」
「きみがボクと付き合ってくれるなら、浮気はしない。でも今の状態のままなら、別の恋人を作るかもしれない」
「早く恋人を作ってよ」
「セフレならいるんだけどね」
「っ! どうして恋人にならないの?」
「わたしを気持ちよくしてくれるんだけど、愛せないから。輝がダイヤモンドならセフレには石英程度の魅力しかない」
「ボク、綾乃と会わないべきかな」
「それは困るよ。友だちとして遊んでほしい」
「ボクは男性を愛する女だよ。好きな人だっている」
「SF研の会長さんが好きだって言ってたよね。見たことある。あの人格好いいね」
「奪らないでよ」
「きみのものなの?」
「まだちがう」
「告れば?」
「いいタイミングがあれば。でも今告ってもフラれる気がする」
「輝をフるなら、会長さんには恋愛センスがない。ネアンデルタール人的愛情の持ち主なのかもしれない」
「その独特な比喩は綾乃の小説にも表れているのかな」
「たぶん。いや絶対にあるね」
「綾乃の小説が読みたい」
「わたしは長編小説を完結させたことがないの。短編は平凡な出来で、輝には読ませたくない」
「ボクと同じだ。共感するよ。綾乃とはときどき会う必要があるかも。癒される」
「ぷははは。愛してくれていいのよ」
「それはないから」
空鳥綾乃はボクの大切な友だちだ。
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