釣りガールズ

みらいつりびと

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第36話 成績

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 中間試験の答案用紙が採点されて返ってきた。
 美沙希は国語、社会、英語は平均よりやや上といった点数。
 しかし理数系はだめだった。数学、物理、化学が平均以下。特に物理はひどく、赤点をギリギリでまぬがれている。
 カズミは逆に、理数系の点数がいい。
 しかし国語、社会、英語は平均以下。特に英語が悪く、こちらも赤点ギリギリ。
 昼休み、ふたりは答案用紙を見てため息をついていた。

 それを見ていたのが、立花真央だ。
 彼女はすべての科目でトップクラスの点数を取っている。
「あらまあ、あまりかんばしくない点数ね」
「数学とか物理とか意味不明。こんなものはできなくても、釣りができれば生きていける」
「文章読むのが得意じゃないんだよね。日本語も不自由なのに、外国語とか意味不明。こんなものはできなくても、愛があれば生きていける」
「大学に進学する気はないの?」
 真央の指摘はきびしい。
「大学って美味しいの?」と美沙希は言い、「美味しいわよ。4年間のモラトリアム」と即答する真央。
「理数系の学部なら進学できる」とカズミは言い、「英語はどこの学部の試験でも必須よ」と返す真央。
 美沙希は眉間にしわを寄せ、カズミは再びため息をつく。
 ちなみに美沙希は学校に少し慣れ、クラスメイトと多少は会話できるようになっている。

「勉強、教えてあげようか?」
「どうせそれも社交辞令なんでしょ」
「これは社交辞令じゃないわ。なんなら、今日の放課後からでもいいわよ」
 真央は真顔で言った。
 彼女はクラス委員長として、懸命に教室の中で生きようとしている美沙希と彼女をささえているカズミを支援したいと考えていた。
 美沙希とカズミは真央の顔を見上げた。
「教えて、委員長」と美沙希は言った。
「教えてくだせえ、真央様」とカズミは言った。
「いいわよ。では、放課後教室に残っていること。ふたりまとめて面倒を見てあげる」
「あれ? ということは、今日の池釣りは中止?」
「あたりまえでしょ」
「いや~。釣りに行けないなんていや~」
 駄々をこねる美沙希。
「じゃあ、勉強やめる?」
「うう、やる」

 というわけで、美沙希とカズミは真央に勉強を教えてもらうことになった。
 目標は期末試験で全教科平均以上の点数を取ること。
 この日だけでなく、月曜日から金曜日まで、毎日2時間みっちりと3人は放課後の教室で勉強した。
「委員長に教えてもらって、数学が嫌いじゃなくなった」
「真央様に教えてもらって、英語が読めるようになってきた」
 ふたりの釣りガールは真央に頭が上がらなくなった。 
 彼女たちは相談して、毎日真央にジュースとお菓子を差し出すことにした。
 真央は「いただくわ」とさらっと言って、お菓子を食べながら、指導をつづけた。

 土日、勉強から解放されてフィールドに出る美沙希とカズミ。
 メリハリがついて、釣りも好調。
 6月中、ふたりともノーフィッシュはなかった。   
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