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険しい顔になった青さんに私は心から笑いながら聞いた。
「今回の契約、御社と増田ホールディングスの間の契約でもなければ増田清掃との契約でもありませんよね?」
「・・・・・・。」
「契約書の名義人は加藤の“家”の当主、私の父になっているはずです。」
「・・・・・・。」
「青さんは妥協案を口頭で提示し父もそれに了承したはずですが、父は青さんが契約書に捺印をする前に言ったはずです。」
「・・・・・・。」
「私の御社での業務についての最終的な判断は全て青さんに任せる、と。
口約束でも契約は成立しますよね、青さん。」
「・・・・・・。」
「私はどんなに汚いことでも出来ます。」
「・・・・・・。」
「私は普通の女ではないので、出来ます。」
「・・・・・・。」
「私は普通の女ではないから青さんに秘書生命を懸けられた。
だから、このおマ○コ以外のことならどんなに汚いことでも出来ます。」
「・・・・・・。」
「お兄ちゃんは私には秘書の仕事はさせてくれない。
“余計な仕事が増える”と言って、私には秘書としての業務をさせてくれなかった。」
「・・・・・・。」
「やらせてください、青さん。
私も秘書の仕事がしたい。」
「・・・・・・。」
「秘書が増田清掃でする仕事は“掃除”ではなく“清掃”。
見える部分だけを綺麗にする掃除ではなく、見えない部分まで綺麗にする清掃。
私にやらせてください、清掃を。」
怖いくらい険しい顔で私のことを見下ろす青さんが、黙っていた口をやっと開けてくれた。
そして・・・
「俺には到底理解出来ない。」
そう言って・・・
それから、床を見下ろしながら大きな大きな溜め息を吐いた。
“やっぱりダメだったか・・・。”
それが分かり、自分の無力さに心底嫌気が差した時・・・
「俺の会社では今は清掃まではやってない。」
青さんが床を見下ろしながらもしっかりとした声でそう言って、ゆっくりとだけど私のことを真っ直ぐと見下ろしてきた。
「そこまでやる時間もなければ人員も確保出来ない。」
「はい。」
「ミツヤマの案件、掃除はもう済んでる。」
「はい・・・。」
「亜里沙からの紹介だったしな、清掃までやってやりたいと思っていた所にあいつから連絡が来た。」
「はい。」
青さんの言葉にしっかりと頷くと、青さんは私のことをジッと見下ろして・・・
それから、小さくだけど悲しそうな顔で笑いながらやっぱり顔を逸らした。
「どんなピロートークだよ、これ。
・・・鎌田のお姉様からの教え、ピロートークは絶対にしろってやつ、初めて守れなかった・・・。」
「素晴らしいピロートークですよ。
感激して泣きそうです。
青さんから聞いていた数々のピロートークよりも遥かに実りのあるピロートークです。」
「うるせーよ・・・。」
「ごめんなさい、私はこういう奴です。
なので私への気持ちは忘れてください。
それで奥さんになった人との間にノンノンを授かってください。」
「そういう話じゃなかっただろ・・・。
俺の嫁さんにっていう話だっただろ・・・。」
「青さんの私への気持ちも清掃しないといけないなって思ってます。」
「やっぱり・・・ドン引きしただろ?」
「そうじゃないですって。」
「だから会いたくなかったんだよ・・・。
会うのはお前がボケたくらいが丁度良かったのに・・・。」
顔を逸らしたままの青さんがまた私に大きな背中を向け、それからすぐに部屋の扉へと歩いて行ってしまった。
「ミツヤマの件は明日の朝話す。」
最後の言葉はそんな言葉で、部屋の扉は閉まった。
かと思ったら、また部屋の扉が開いて。
「“お兄ちゃん”に俺がみこすり半だった報告まですんなよ!!!!?」
「みこすり半だったとは言わないよ。」
“3回くらいだったとは言うかもしれないけど”
そう続けようとしたのに、部屋の扉は勢い良く閉まった。
「今回の契約、御社と増田ホールディングスの間の契約でもなければ増田清掃との契約でもありませんよね?」
「・・・・・・。」
「契約書の名義人は加藤の“家”の当主、私の父になっているはずです。」
「・・・・・・。」
「青さんは妥協案を口頭で提示し父もそれに了承したはずですが、父は青さんが契約書に捺印をする前に言ったはずです。」
「・・・・・・。」
「私の御社での業務についての最終的な判断は全て青さんに任せる、と。
口約束でも契約は成立しますよね、青さん。」
「・・・・・・。」
「私はどんなに汚いことでも出来ます。」
「・・・・・・。」
「私は普通の女ではないので、出来ます。」
「・・・・・・。」
「私は普通の女ではないから青さんに秘書生命を懸けられた。
だから、このおマ○コ以外のことならどんなに汚いことでも出来ます。」
「・・・・・・。」
「お兄ちゃんは私には秘書の仕事はさせてくれない。
“余計な仕事が増える”と言って、私には秘書としての業務をさせてくれなかった。」
「・・・・・・。」
「やらせてください、青さん。
私も秘書の仕事がしたい。」
「・・・・・・。」
「秘書が増田清掃でする仕事は“掃除”ではなく“清掃”。
見える部分だけを綺麗にする掃除ではなく、見えない部分まで綺麗にする清掃。
私にやらせてください、清掃を。」
怖いくらい険しい顔で私のことを見下ろす青さんが、黙っていた口をやっと開けてくれた。
そして・・・
「俺には到底理解出来ない。」
そう言って・・・
それから、床を見下ろしながら大きな大きな溜め息を吐いた。
“やっぱりダメだったか・・・。”
それが分かり、自分の無力さに心底嫌気が差した時・・・
「俺の会社では今は清掃まではやってない。」
青さんが床を見下ろしながらもしっかりとした声でそう言って、ゆっくりとだけど私のことを真っ直ぐと見下ろしてきた。
「そこまでやる時間もなければ人員も確保出来ない。」
「はい。」
「ミツヤマの案件、掃除はもう済んでる。」
「はい・・・。」
「亜里沙からの紹介だったしな、清掃までやってやりたいと思っていた所にあいつから連絡が来た。」
「はい。」
青さんの言葉にしっかりと頷くと、青さんは私のことをジッと見下ろして・・・
それから、小さくだけど悲しそうな顔で笑いながらやっぱり顔を逸らした。
「どんなピロートークだよ、これ。
・・・鎌田のお姉様からの教え、ピロートークは絶対にしろってやつ、初めて守れなかった・・・。」
「素晴らしいピロートークですよ。
感激して泣きそうです。
青さんから聞いていた数々のピロートークよりも遥かに実りのあるピロートークです。」
「うるせーよ・・・。」
「ごめんなさい、私はこういう奴です。
なので私への気持ちは忘れてください。
それで奥さんになった人との間にノンノンを授かってください。」
「そういう話じゃなかっただろ・・・。
俺の嫁さんにっていう話だっただろ・・・。」
「青さんの私への気持ちも清掃しないといけないなって思ってます。」
「やっぱり・・・ドン引きしただろ?」
「そうじゃないですって。」
「だから会いたくなかったんだよ・・・。
会うのはお前がボケたくらいが丁度良かったのに・・・。」
顔を逸らしたままの青さんがまた私に大きな背中を向け、それからすぐに部屋の扉へと歩いて行ってしまった。
「ミツヤマの件は明日の朝話す。」
最後の言葉はそんな言葉で、部屋の扉は閉まった。
かと思ったら、また部屋の扉が開いて。
「“お兄ちゃん”に俺がみこすり半だった報告まですんなよ!!!!?」
「みこすり半だったとは言わないよ。」
“3回くらいだったとは言うかもしれないけど”
そう続けようとしたのに、部屋の扉は勢い良く閉まった。
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