【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました！

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女将さんからその言葉を渡された後の車内は無言だった。
私も何も言わなかったし女将さんも何も言わなかった。



私があと1歳でも若かったら言い返していたと思う。



”私だって幸せな後悔が出来るような人生を送りたかった"と。



”そんな”家"に生まれたかった"と。



”私が生まれた”家"は普通の”家"ではない"と。



”女将さんには絶対に分からない"と。



”私の”友達"ならそんなことは絶対に言わない"と。



”青さんだって絶対に言わない"と。



言い返したい言葉は沢山あったけれど、どの言葉も私は口から出すことなくこうも思った。



”60歳まで生きた人生の先輩である女将さんからの言葉は、簡単に言い返せるような言葉ではないな"と。



「女将さんの言葉の本当の意味が分かるのは、青さんが死んでしまった後なのかもしれない・・・。」



中身は全然変わらないまま30歳になってしまったと思っていたけれど、そうも思えた私は結構大人になれているのかもしれない。
そう思いながら、製糸場の前から遠くの空を眺める。
青さんが戻っていった東京へと続く空を。



「中に入るには向こうからだよ！」



少し離れた所にいる女将さんが向こうの方を指差しながら教えてくれた。



でも、私は首を横に振る。



「その中からではなく、きっと此処からアエさんという人の道は私達の”家"まで続いていたから、此処で良いんです！！」



製糸場の外から東京へと続く道を見詰める。



「此処が良いんです・・・。」



そう呟いた瞬間、思い出した。



”アエさん・・・！！！
何でいなくなっちゃうの・・・・！！！？"



小学校へ上がる直前、アエさんが”あの家"からいなくなると知り、私は号泣しながらアエさんに抱きつきアエさんのお腹に向かって叫んだ。



そんな私の頭をアエさんはギュッとしてくれ、いつもと同じように背中を優しく撫でてくれた。



”アエは何処にも行きませんよ。"



”嘘つき・・・！！！
アエさんはこの家からいなくなっちゃうって聞いたもん・・・！！！
何でいなくなっちゃうの・・・！！！？
お父さんとお母さんが悪い子だから！？
おばあちゃんのことが嫌い！？
お兄ちゃんのことが・・・ノンノンのことが嫌い・・・！？
この”家"のことが・・・・・・嫌い・・・？"