456 / 693
29
29-14
しおりを挟む
青さんも勝てないと言うなら私も勝てなくて当たり前だった。
「竜也はプロのパパなんだよ・・・。
目を覚まさない嫁さんに、婚姻届を出すことも出来なかった嫁さんに、毎日毎日・・・朝も昼も夜もリンゴを剥きに行ってた。
食べる所が全然ないリンゴになるらしくて、”目が覚める前に上手になってないと"って言いながら。
子どもが危ないって連絡が来ても、あいつ絶対にしっかりと前を向いててさ。
”パパの俺が諦めたら子どもも絶対に諦めちゃうから"とか言ってさ。
めちゃくちゃ強いパパだなと、プロのパパだなといつも思ってた。
あいつは嫁さんと子どものことで1回も俯いたことがなかった。
1回も俯いたことはなかったけど・・・嫁さんが目を覚ましたって連絡が来た時は、号泣してた。」
青さんの目に少しだけ涙が浮かんでくる。
「あいつらの婚姻届、証人欄の1人は俺の名前なんだよ。
もう1人はあいつらの高校の教師で。
嫁さんの欄だけ空欄のその婚姻届を毎日毎日眺めててさ。
あいつの嫁さん、幸せな女だなと思うよ・・・。」
「そうだね・・・。」
「多分さ・・・多分、あいつの嫁さん・・・、見た目で分かるような何か・・・何か、障がい残ってるっぽいんだよな・・・。」
「そうなんだ・・・。」
「多分、子どもも・・・。
子どもについては最近やっと入院とかはしなくなったけど、よく入院してて。」
「そうだったんだ・・・。」
「うちの”掃除屋"の連中で仲の良い奴らには結構普通に写真を見せてるっぽいけど、俺には1度も写真を見せてこないんだよな・・・。
多分、見た目で分かるような障がいが残ったんだなと思って・・・。」
「そう・・・・・なんだ・・・・。」
”え、私がさっき見た写真、めちゃくちゃ元気そうな奥さんと子どもだったけど・・・。
2人ともジャージを着て、なんか高速道路の下みたいな所でバスケットゴール前で写真撮ってたけど・・・。"
頭の中でもう1度さっき見た写真を思い出してみるけれど、やっぱり2人とも特に見た目で分かるような障がいはなかったように思う。
「子どもから初めて”パパ"って呼ばれたのは結構後でな、あいつその時の話を今でも言うもんな。
俺も自分のことのように嬉しくてちょっと・・・結構泣いて、俺は・・・竜也のことも竜也の嫁さんのことも子どものことも、かなりな身内みたいに勝手に思ってる・・・。
あんな状況の中での婚姻届に、親でもなく姉貴でもなく憧れの義理の兄貴でもなく、俺に証人欄を頼んできたくらいの可愛すぎる奴だし。
でも・・・竜也にとっては俺ってマジで他人なんだなと思うと無性に寂しくなる時がある。」
「そ・・・・・・だよね・・・・。」
うっすらと泣いているような青さんに、念の為聞いてみた。
「青さんってさ、人妻のことを口説いたことあったりする?」
「竜也はプロのパパなんだよ・・・。
目を覚まさない嫁さんに、婚姻届を出すことも出来なかった嫁さんに、毎日毎日・・・朝も昼も夜もリンゴを剥きに行ってた。
食べる所が全然ないリンゴになるらしくて、”目が覚める前に上手になってないと"って言いながら。
子どもが危ないって連絡が来ても、あいつ絶対にしっかりと前を向いててさ。
”パパの俺が諦めたら子どもも絶対に諦めちゃうから"とか言ってさ。
めちゃくちゃ強いパパだなと、プロのパパだなといつも思ってた。
あいつは嫁さんと子どものことで1回も俯いたことがなかった。
1回も俯いたことはなかったけど・・・嫁さんが目を覚ましたって連絡が来た時は、号泣してた。」
青さんの目に少しだけ涙が浮かんでくる。
「あいつらの婚姻届、証人欄の1人は俺の名前なんだよ。
もう1人はあいつらの高校の教師で。
嫁さんの欄だけ空欄のその婚姻届を毎日毎日眺めててさ。
あいつの嫁さん、幸せな女だなと思うよ・・・。」
「そうだね・・・。」
「多分さ・・・多分、あいつの嫁さん・・・、見た目で分かるような何か・・・何か、障がい残ってるっぽいんだよな・・・。」
「そうなんだ・・・。」
「多分、子どもも・・・。
子どもについては最近やっと入院とかはしなくなったけど、よく入院してて。」
「そうだったんだ・・・。」
「うちの”掃除屋"の連中で仲の良い奴らには結構普通に写真を見せてるっぽいけど、俺には1度も写真を見せてこないんだよな・・・。
多分、見た目で分かるような障がいが残ったんだなと思って・・・。」
「そう・・・・・なんだ・・・・。」
”え、私がさっき見た写真、めちゃくちゃ元気そうな奥さんと子どもだったけど・・・。
2人ともジャージを着て、なんか高速道路の下みたいな所でバスケットゴール前で写真撮ってたけど・・・。"
頭の中でもう1度さっき見た写真を思い出してみるけれど、やっぱり2人とも特に見た目で分かるような障がいはなかったように思う。
「子どもから初めて”パパ"って呼ばれたのは結構後でな、あいつその時の話を今でも言うもんな。
俺も自分のことのように嬉しくてちょっと・・・結構泣いて、俺は・・・竜也のことも竜也の嫁さんのことも子どものことも、かなりな身内みたいに勝手に思ってる・・・。
あんな状況の中での婚姻届に、親でもなく姉貴でもなく憧れの義理の兄貴でもなく、俺に証人欄を頼んできたくらいの可愛すぎる奴だし。
でも・・・竜也にとっては俺ってマジで他人なんだなと思うと無性に寂しくなる時がある。」
「そ・・・・・・だよね・・・・。」
うっすらと泣いているような青さんに、念の為聞いてみた。
「青さんってさ、人妻のことを口説いたことあったりする?」
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
放課後の保健室
一条凛子
恋愛
はじめまして。
数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。
わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。
ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。
あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる