【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha

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翌日



「なんか、目ぇ腫れてません?」



青さんの会社の1番小さな会議室で、柳瀬君の隣に座っている佐藤君が私が席に座った瞬間にそう聞いてきた。



それには柳瀬君が手元にあるタブレットを操作しながら口を開く。



「佐藤先輩、そういうことは気付いても言わない方がいいですよ。」



「いや、でもさ、加藤さんの体調とかメンタルも心配だし。
加藤さんって結構演技派なのにここまで"絶不調です!!”って出されたら、"仕事よりも遊ぼう!?”って俺はなる。」



「お嬢様の調査には加藤さんの日記と加藤さんからのヒヤリングはめちゃくちゃ重要なポイントになってくるので、俺らの頭にも叩き込んでおかないといけないのに遊んでる余裕なんてないですから。
それに今日は増田ホールディングスの経理部にいる加藤さんの"友達”にも急遽来てもらえることになってますし。
そろそろ来るんじゃないですか、遅刻してますけど。
加藤さんも加藤さんの"友達”も、社会人なら遅刻はしない方が良いですよ。」



「私は青さんから"今日顔ブスじゃね?”って喧嘩売られたから喧嘩しちゃったんだもん。
でも私の"友達”は普段は遅刻なんてするタイプじゃないよ。
日曜日なのに急に呼び出したのはこっちだし、そこはそんなに怒らないでよ。」



「じゃあ!加藤さんの"友達”が来たらみんなで何処か遊びに行きましょうよ、日曜日ですし!
そこで遊びながら色々とヒヤリングしますから!
加藤さん、行きたい所とかやりたいこととかあります?」



「俺は午後から部活なんですけど。
貴重な午前の時間を使ってこっちは来てるんですから、加藤さんの体調やメンタルのケアにまで付き合っていられません。
加藤さん、もう30歳の大人なんですから自分のケアはご自身でしてくださいよ。」



「分かってるよ・・・。
ちょっと・・・生理中なだけ。」



「柳瀬、女の子にそういうことを言わせたらダメだって。」



「今の俺っすか!?
加藤さんの方を注意してくださいよ!!」



もう血なんてほとんど出ていないのにそう言い訳をした私のことを柳瀬君が指差し、佐藤君と言い合いをしていく。



2人のどうでもいい喧嘩を聞きながら心の中で自分に言い聞かせる。



"頑張れ・・・。”



”頑張れ、私・・・。”



"一美さんの為に歩かないと・・・。”



”一美さんの幸せの為に、私がちゃんと歩かないと・・・。"



私は加藤望。
小関の”家"の秘書、加藤の”家"に生まれた。



だから頑張らないといけない。



この地獄みたいな世界で、死んだようにでも頑張って歩き続けなければいけない。



私と一緒に歩いてくれる人がいなくても・・・。



青い空なんて見えなくても・・・。



輝く星なんて見付けられなくても・・・。



歩き続けなければいけない・・・。



「私は物心がついた時には土曜日も日曜日も働いてた。
家族と遊びに行ったこともなければ”友達"と遊びに行ったこともない・・・。」



青さんが強引に連れて行ってくれた温泉を思い出し、自然と笑った。



「でも、”ほぼ家族"で”ほぼ友達"の青さんがこの前連れて行ってくれた温泉は、楽しかった。」



私の言葉に佐藤君も柳瀬君も静かになり、佐藤君はボイスレコーダーのスイッチを入れた。



それを確認し、私はまた喋り出す。



「一美さんは私とは違って、修学旅行にも行ってたし友達と遊びに行ったりもしてた。
お花見だって友達と凄い所でしてて、私にお土産は渡せないけどお土産話は沢山聞かせてくれた。
一美さんから聞くどの話も私にはない物で、私には一美さんのどの話もキラキラして見えた。
一美さんか生きる世界は・・・一美さんが見ている世界は、私がこの目で見ている世界よりもずっと輝いているだろうなって思ってた。
でもそれはきっと、一美さんも私から聞く”普通”の学校生活に同じことを思っていたと思う。
私にはね、きっとね、一美さんの友達よりも凄い"友達"がいるの。 
どんなに恥ずかしくても何度も何度も転んだ私に手を差し伸べてくれた、凄い凄い”友達"がいてね。
お兄ちゃんからの審査も余裕て通ってくれた凄い”友達"がね、”ダメ秘書"な私の自慢なの。」



心からそう思いながら、呟いた。



「私もお花見とか、してみたかったなぁ・・・。」



桜を見ても”綺麗"なんて特に思ったことはないけれど、今年の桜が散った今思うことは”お花見がしたかった"という、そんな望みだった。
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