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それから数日後・・・。



「なんか、やっぱり凛太郎さんの方がいいかも・・・。」



高級ホテルでもなんでもないホテルのベッドの上で、女が言い出した。
それはそうだ。
そういう風に思わせるように、トーンダウンさせていったから。



凛太郎の笑顔で、困ったように笑う。



「ごめん、俺・・・兄貴より7歳もガキだからね。」



「そうだよね~・・・。」



女がベッドの上に寝転がりながら、何やら考えている。



「凛太郎さんともまだ別れてないから、凛太郎さんの方に戻ってもいい?
私から最近連絡してなかったから、凛太郎さんからも連絡来ないけど・・・。
でも、別れ話とかはしてないんだよね。」



それはもう、兄貴の中では終わっている。
兄貴は優しすぎるから、別れ話とかは出来ないはず。
だから、俺がこんな方法で別れさせるしかなかった。



「そうなんだ。
俺、兄貴に言ってないし、これからも言わないから。」



「ありがとう!!
・・・小太郎君でも良かったんだけどね。
あのお家の子だし。
でも、1回目のエッチが1番良くて・・・それからは手抜きになってきたでしょ?」



女がそう言って、シャワーを浴びに行った。



その音を聞きながら女の言葉を思い出し、声を少し出して笑った。



それはそうだ、そういう風に思わせるように、トーンダウンさせていったから。
兄貴は・・・ああいうこともとにかく優しいらしい。
そして、つまらないことに、その最中は何も喋らないらしい。



なので、凛太郎になりながら、奥底の俺があの女に言った。
“可愛い”や“綺麗”や“好き”とか、言った。
1回目だけは、言った。



震える手を、ポケットに急いで入れる。
震えた手のまま、強く、強く、握り締める。
真知子の唇の柔らかさの記憶を、握り締める。



「真知子、頑張れよ・・・。」



こんな俺と“友達”になってくれた真知子・・・。



俺は、こんなにデキが悪いのに。



俺は、こんなに性格が悪いのに。



俺は、こんなに性格が悪いことを隠せないのに。



俺は、こんなにも、こんなにも、人格が破綻しているのに・・・。



こんな俺と、真知子だけは“友達”になってくれた・・・。



“友達”になってくれた・・・。



真知子を見詰めていた兄貴の真剣な顔を思い出す。
きっと、大丈夫だ・・・。
きっと、きっと、大丈夫だ・・・。



俺が、応援する・・・。



絶対に、応援する・・・。



痛いくらいに握り締めた両手から、真知子の唇の柔らかさの記憶を取り出す・・・。



よかった・・・。



よかった・・・。



真知子の初めてのキスだけは、俺がもらえた・・・。



よかった・・・。



よかった・・・。



それだけでいい・・・。



もう、それだけでいいんだ・・・。
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