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どんな反応になるのか不安だったけど、真知子は真剣な顔のまま頷いた。



そして、また口をゆっくりと開けた。



「次の質問です。」



それにはホッとした。
あのよく分からない質問だけで面接をしているわけでないと分かり、ホッとした。



「ここは、ステージです。」



俺は、笑いを堪えるのが必死になる。
またこういう系の質問なのかと、笑いそうになる。



「音楽のステージです。
これから、音楽を演奏します。
小太郎君はオーケストラの楽団員の1人です。」



「はい・・・。」



「目の前には大勢の観客、周りには他の楽団員。
これから、演奏が始まります。
でも、小太郎君は何かを待っています。
何かを・・・小太郎君は待っています。
何を待っていますか?
小太郎君は、何を待っていますか?」



そんなことを聞かれ、またイメージする。



待っている・・・。
俺は、何かを待っている・・・。



観客席に誰かが来るのを・・・?
それとも、自分の中の何かの感情を・・・?



何も出来ない俺が、これから演奏をする・・・。
演奏出来るのか、不安だった。
これから演奏をするのが怖かった。



目の前に座る沢山の観客も、周りに座る楽団員達も、なんだか怖く感じてしまう。



そんな中、俺は待っている・・・。



待っている・・・。



そうだ、待っている・・・。



待っている・・・。



俺は、口をゆっくりと動かす・・・。



















「指揮者・・・。」









そうだ、俺は指揮者を待っていた。
指揮者を待っていた。
何も出来ない俺は、不安で、恐怖でいっぱいの俺は、指揮者を待っていた。






指揮者が現れるのを、待っていた・・・。






そんな俺を落ち着かせ、俺を自然と演奏させるくらいの力を持つ、指揮者が現れるのを待っていた・・・。







俺は、待っていた・・・。







何も出来ない俺は、待っていた・・・。







「採用です、小太郎君。」







真知子がすげー可愛い笑顔で、そう言った。







「ガンガンいくぞ、小太郎。」







クリスマスツリーをバックに、真知子の隣に座るこの男・・・社長を見る。
凛太郎ではなく小太郎と話してくれる社長を見る。







「ガンガンいくぞ。
ガンガン冒険に行って、ガンガン演奏するぞ。
城は整えてやるから。
絶対に崩れない城を整えてやるから。」






その言葉に、笑う・・・。







俺は、笑う・・・。







笑いながら、答える・・・。







「ガンガン、いくか・・・。」







こんなことを言われたら、ガンガンいきたくなる。
何も出来ないはずなのに、ガンガンいきたくなる。







嬉しそうに笑っている真知子を見る。







「すぐに冒険も演奏も始めてやるよ。」
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