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1年前の決起会。
あの日からオーシャンとあたしの仲は公認となり、あの秘書の男性が言った通りオーシャンがあの男の会社に出向していたということに本当になっていた。
何をどうやったのかは分からないけど・・・
「俺は黒いことも汚いことも沢山したからな・・・。
明ちゃんと一緒にいるのが俺で本当にいいのか不安になるよね。
明ちゃんはあまりにも明るくて綺麗だから。」
オーシャンがまたこんなことを言っている。
そう言って、オーシャンはなかなか結婚に踏み出せないらしい。
あたしは女になったばかりだしそんなに早く結婚したいわけではないけど、この発言には毎回モヤモヤはする。
「全部が全部良い人なんてそういないから。
みんな何かしら何処かしら悪い部分もある。
あたしの“かぞく”もそうだった。
みんながあの男を殺すために黒くも汚くもなった。」
「うん・・・。」
「オーシャン、あたしは“普通”の家庭の女の子じゃない。
あたしがみんなから明るいって言ってもらえるのは、そういう家庭で育ったから。
世の中の暗い部分を詰め込んだような狭くて暗い部屋の中で育ったから。」
「うん・・・。」
「だから、あたしは明るくなれた。
そういう環境で育ったから。
あたし自身は明るくて綺麗に見えるのかもしれないけど、あたしは“普通”の家庭の女の子じゃないよ、オーシャン。」
オーシャンと手をしっかりと繋いだまま、先にあたしが海に一歩踏み出す。
去年の今頃、オーシャンがあたしに一歩踏み出させてくれた海に。
そして、オーシャンに振り返る。
動かす。
空気を、動かす。
明かりの空気を、動かす。
「何度黒くなっても、何度死んでも、何度でもあたしが明かりを射し込ませる。
大きな海に、あたしの大きな海・・・オーシャンに。」
「・・・木葉が広げてくれた俺の海なんだ。」
「決起会の後すぐに会いたいってオーシャンに言われて連れて行ったら、2人で握手したかと思った瞬間に抱き合ってたから結構嫉妬したよね!!」
「木葉は“ゲイ”だからね。」
そんな衝撃的な発言をオーシャンがサラッとしてきて・・・
「木葉は高校時代の3年間、彼女よりも俺のことの方が好きだったからね。
実際に何度か言われてたし。」
「なにそれ!?知らないんだけど!!」
「木葉はよく言ってたよね?
自分が“ゲイ”だって。」
「それは喋り口調があたしの真似だったからだよね!?」
「・・・俺はそんなところ見たことないけど、そうなの?」
そんなことを言いながら、面白そうな顔で笑って海の中に一歩踏み出していた。
そして・・・
筋肉隆々の身体であたしを抱き締めた。
「結婚、もう少し先でもいいかな?
木葉の妹、男友達、女友達だったから・・・。
恋人の期間ももう少し満喫したい。
あと・・・」
剛士が三度目は定の目にしてくれ、あたしとオーシャンは恋人になれた・・・。
でも・・・
また鼻から垂れてきた鼻血に気付き慌てて鼻を抑える。
「明ちゃんの鼻血がまだまだ出てくるし、まだ恋人同士にも慣れてないみたいだしね。」
そう言われると、そうで・・・。
あたしはこの前女になったばっかりだから、まだまだ恋人同士には慣れない・・・。
「明ちゃんにまた鼻血出させちゃったし、仲直りしにいく?」
海にお互い1歩しか入っていないのに、オーシャンがそんなことを言い出した。
“仲直り”・・・。
それはオーシャンが前の恋人としていたことではなくて・・・。
まさかの、オーシャンの両親の仲直りの仕方だった。
これには苦笑いで・・・。
「明ちゃんの真っ白な水着姿は可愛すぎて。
黒いロングドレスも綺麗だけど、真っ白は可愛すぎて。」
「白は“アヤメ”の色なんだけどね。」
「“アヤメ”ちゃんはいるよ、明ちゃんの空気の中に。
だから女の子の時は、“アヤメ”ちゃんの空気も纏う。」
そんな嬉しいことを言ってくれ、涙が流れていく・・・。
「あたし、最近泣き虫キャラになっちゃった・・・。」
「明ちゃんは昔から可愛い女の子だからね。」
「そう言ってくれるのはオーシャンだけ・・・。」
鼻血を流したまま、オーシャンの筋肉隆々の身体を抱き締め返した。
あの夏、あたしは海にいった。
恋い焦がれていた海に。
あたしの大好きな大好きな大きな海に。
オーシャンに・・・。
人生で初めて、女の子としてオーシャンにいった・・・。
可愛い女の子にはなれなかったと思っていたけど・・・
守ってもらえるような可愛い女の子にはなれないと思っていたけど・・・
お兄ちゃんからもオーシャンからも、救いだしてもらえるような女の子だったのだと知れた・・・。
あたしは女の子だった・・・。
ちゃんと、ちゃんと、ずっと・・・
ずっとずっと・・・
女の子だった・・・。
「そうだ、明ちゃんそろそろ英語の勉強してくれる?」
「英語の勉強?なんで?」
「藤岡ホールディングス、海外への仕事を増やしていくらしい。
“うちには良い海も良い風もあるし、秘書は船も運転できる”って副社長が言ってて。
いずれ俺を海外勤務にしたいとか言い出してるんだよね。」
大きな海、オーシャン・・・。
激しすぎる海を持つオーシャンのお相手になったので、これからはあたしも命懸けで海を渡っていかないといけなくなった・・・。
でも、あたしは“普通”の可愛い女の子ではないから・・・。
どんな海だって、きっと渡っていける・・・。
明るく楽しく・・・
たまに泣きながらでも、強く・・・。
「コーヒー牛乳とフレンチトースト作ってくれるならあたしも一緒に行く~!!!」
end......
あの日からオーシャンとあたしの仲は公認となり、あの秘書の男性が言った通りオーシャンがあの男の会社に出向していたということに本当になっていた。
何をどうやったのかは分からないけど・・・
「俺は黒いことも汚いことも沢山したからな・・・。
明ちゃんと一緒にいるのが俺で本当にいいのか不安になるよね。
明ちゃんはあまりにも明るくて綺麗だから。」
オーシャンがまたこんなことを言っている。
そう言って、オーシャンはなかなか結婚に踏み出せないらしい。
あたしは女になったばかりだしそんなに早く結婚したいわけではないけど、この発言には毎回モヤモヤはする。
「全部が全部良い人なんてそういないから。
みんな何かしら何処かしら悪い部分もある。
あたしの“かぞく”もそうだった。
みんながあの男を殺すために黒くも汚くもなった。」
「うん・・・。」
「オーシャン、あたしは“普通”の家庭の女の子じゃない。
あたしがみんなから明るいって言ってもらえるのは、そういう家庭で育ったから。
世の中の暗い部分を詰め込んだような狭くて暗い部屋の中で育ったから。」
「うん・・・。」
「だから、あたしは明るくなれた。
そういう環境で育ったから。
あたし自身は明るくて綺麗に見えるのかもしれないけど、あたしは“普通”の家庭の女の子じゃないよ、オーシャン。」
オーシャンと手をしっかりと繋いだまま、先にあたしが海に一歩踏み出す。
去年の今頃、オーシャンがあたしに一歩踏み出させてくれた海に。
そして、オーシャンに振り返る。
動かす。
空気を、動かす。
明かりの空気を、動かす。
「何度黒くなっても、何度死んでも、何度でもあたしが明かりを射し込ませる。
大きな海に、あたしの大きな海・・・オーシャンに。」
「・・・木葉が広げてくれた俺の海なんだ。」
「決起会の後すぐに会いたいってオーシャンに言われて連れて行ったら、2人で握手したかと思った瞬間に抱き合ってたから結構嫉妬したよね!!」
「木葉は“ゲイ”だからね。」
そんな衝撃的な発言をオーシャンがサラッとしてきて・・・
「木葉は高校時代の3年間、彼女よりも俺のことの方が好きだったからね。
実際に何度か言われてたし。」
「なにそれ!?知らないんだけど!!」
「木葉はよく言ってたよね?
自分が“ゲイ”だって。」
「それは喋り口調があたしの真似だったからだよね!?」
「・・・俺はそんなところ見たことないけど、そうなの?」
そんなことを言いながら、面白そうな顔で笑って海の中に一歩踏み出していた。
そして・・・
筋肉隆々の身体であたしを抱き締めた。
「結婚、もう少し先でもいいかな?
木葉の妹、男友達、女友達だったから・・・。
恋人の期間ももう少し満喫したい。
あと・・・」
剛士が三度目は定の目にしてくれ、あたしとオーシャンは恋人になれた・・・。
でも・・・
また鼻から垂れてきた鼻血に気付き慌てて鼻を抑える。
「明ちゃんの鼻血がまだまだ出てくるし、まだ恋人同士にも慣れてないみたいだしね。」
そう言われると、そうで・・・。
あたしはこの前女になったばっかりだから、まだまだ恋人同士には慣れない・・・。
「明ちゃんにまた鼻血出させちゃったし、仲直りしにいく?」
海にお互い1歩しか入っていないのに、オーシャンがそんなことを言い出した。
“仲直り”・・・。
それはオーシャンが前の恋人としていたことではなくて・・・。
まさかの、オーシャンの両親の仲直りの仕方だった。
これには苦笑いで・・・。
「明ちゃんの真っ白な水着姿は可愛すぎて。
黒いロングドレスも綺麗だけど、真っ白は可愛すぎて。」
「白は“アヤメ”の色なんだけどね。」
「“アヤメ”ちゃんはいるよ、明ちゃんの空気の中に。
だから女の子の時は、“アヤメ”ちゃんの空気も纏う。」
そんな嬉しいことを言ってくれ、涙が流れていく・・・。
「あたし、最近泣き虫キャラになっちゃった・・・。」
「明ちゃんは昔から可愛い女の子だからね。」
「そう言ってくれるのはオーシャンだけ・・・。」
鼻血を流したまま、オーシャンの筋肉隆々の身体を抱き締め返した。
あの夏、あたしは海にいった。
恋い焦がれていた海に。
あたしの大好きな大好きな大きな海に。
オーシャンに・・・。
人生で初めて、女の子としてオーシャンにいった・・・。
可愛い女の子にはなれなかったと思っていたけど・・・
守ってもらえるような可愛い女の子にはなれないと思っていたけど・・・
お兄ちゃんからもオーシャンからも、救いだしてもらえるような女の子だったのだと知れた・・・。
あたしは女の子だった・・・。
ちゃんと、ちゃんと、ずっと・・・
ずっとずっと・・・
女の子だった・・・。
「そうだ、明ちゃんそろそろ英語の勉強してくれる?」
「英語の勉強?なんで?」
「藤岡ホールディングス、海外への仕事を増やしていくらしい。
“うちには良い海も良い風もあるし、秘書は船も運転できる”って副社長が言ってて。
いずれ俺を海外勤務にしたいとか言い出してるんだよね。」
大きな海、オーシャン・・・。
激しすぎる海を持つオーシャンのお相手になったので、これからはあたしも命懸けで海を渡っていかないといけなくなった・・・。
でも、あたしは“普通”の可愛い女の子ではないから・・・。
どんな海だって、きっと渡っていける・・・。
明るく楽しく・・・
たまに泣きながらでも、強く・・・。
「コーヒー牛乳とフレンチトースト作ってくれるならあたしも一緒に行く~!!!」
end......
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