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「ピンク色の鮫・・・。」



ずっと黙っていた矢田さんが、急にそんな言葉を呟いた。
宝田がその言葉にぴくりと反応していたのが分かる。



「松居先生の娘さんのお葬式にいた女の子・・・。
松居先生のお孫さん・・・。
ピンク色の鮫・・・まだ持っているのかな・・・。」



矢田さんがそんな訳の分からないことを聞いてきて、私は思わず首を傾げてしまった。



そしたら、宝田が・・・



「まだ持っているそうですよ。
松居会長から聞きました。
鮫島桃子が大切に大切に、そのピンク色の鮫を抱き締め続けて育て上げたそうです。
この現実世界を泳ぐには目立ちすぎるようなピンク色の鮫を。」



私よりも松居会長の喋り相手になっている宝田が、そう答えた。



「そうなんだ・・・。
高校1年生のお母さんが、凄いね・・・。
沢山の人に支えて貰っただろうけど、凄いね・・・。
子どもの身体だけではなく心も育てることはとても難しいことだからね。
じゃあ・・・鮫島光一君も持ち続けてるってことかな、金色の鮫を。」



矢田さんが今度はそう聞いてきて・・・。
私は宝田の方を見ると、宝田が首を横に振った。
そして、鋭い目付になって矢田さんを見た。



「鮫島光一は、雷(かみなり)の鮫になりました。」



「雷?」



「はい、天野雷(らい)。
その方が、鮫島光一に新たな光を・・・それも、痺れるくらいに強すぎる光を与えたようです。」



集中プロジェクトに来ていたナイトメディカルケア・コンサルティングのプロジェクトリーダーだった天野さんの名前が出た途端・・・
矢田さんは目も口も大きく開けて・・・



「なんであいつがここで出てきた!?」



と、叫んだ。
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