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「長峰、日本酒は俺と2人の時に呑むようにって昔から言ってるよね?」



宝田がめちゃくちゃ怒った顔でそう言ってくる。



「しかも、“駿と雪”を俺とじゃなくて真琴さんと呑もうとしてるとか・・・。
真琴の方の日本酒だったらまだしも・・・。」



宝多のお父さんが作った日本酒には、“ゆきのうえ商店街”で生まれた天使達の名前がつけられている。



怒りまくっている宝田の顔を見て、私はなんだか興奮してくる。
いつも涼しい顔をしている宝田がこんなに顔を崩しているから。
笑っている顔も好きだけど、ここまで顔を崩されるともっと好きな顔に感じる。



でも、怒りまくっている宝田に、私もムカつく気持ちにもなってはくるので口を開く。



「宝田、日本酒になると拘り強すぎだから!!」



「それはなるだろ!!!
物心がついた頃から日本酒に囲まれて生きてきたんだぞ!?
父さんが酒蔵に行くのにも連れていかれてたし!!」



「だからって、私にも押し付けてこないでよ!!」



「・・・それを言うなら・・・っっ」



宝田がそこまで言って、慌てたように口を閉じた。
それを見て・・・私は小さく笑う。



「私も押し付けてるから・・・それは同じか。」



「いや、別に押し付けられてないから。」



そう言ってから、宝田は真琴が注いだお猪口に入っている“駿と雪”を一気に呑んだ。
それを見てから、私も“駿と雪”を呑んだ・・・。



「美味しい・・・。
詳しいことは分からないし言えないけど、“駿と雪”が1番好き・・・。」



宝田のお父さんが作る純米酒は、この“駿と雪”を基準に作っていった。
味も値段も、“駿と雪”を中心に。



「当たり前だろ、“ゆきのうえ商店街”の天使達の中心には俺と長峰がいるんだから。
それは1番美味しいに決まってるだろ。」



宝田がそんなことを言って、お猪口を持ったままの私の右手を掴んだ。



「真琴、ちょっと神社行ってくるから。」



「ここはやっぱり神頼みになるよね~。」



兄妹で爆笑している中、私は少し焦りながら宝田に引かれて宝多米店を出た・・・。
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