13 / 27
1
1-13
しおりを挟む
わぁぁぁぁ───────···
幼稚園の園庭でみんなの大きな応援の声がずっと続いている。
年長さんでもかけっこの時間が始まったから。
“りい”の少し前の順番だった“じゅん”は、みんなが言っていた通り2番でゴールをしていた。
1番だったのは“じゅん”の隣を走っていた“じゅん”という男の子。
悔しそうな顔でその“じゅん”に向かって何かを言っていた“じゅん”が、ゴールの向こう側から“りい”に向かって叫んできた。
「りい!!!!!転ぶなよ!!!!!」
かけっこで転んだことなんてない“りい”にそんなことを言ってきて、“りい”はムカつきながらスタートの場所に立った。
そして・・・
勢い良く前に駆け出した。
かけっこは結構得意だった。
幼稚園に入る前までは“全然速くない”と思っていたけど、“めい姉”と“じゅん”が速すぎるだけで“りい”はみんなと比べると結構速かった。
お母さんに“可愛い姿”は見せられなくても、”格好良い姿”だったら見せても良いかなと走り始めた時に思った。
お母さんが言うには、王子様が見付けてくれるのはもっとお姉さんになってからだと言っていたし。
お母さんが言うには、王子様が迎えに来てくれるのはもっともっとお姉さんになってからだとも言っていたし。
「理衣!!!頑張れ!!!!!」
お父さんの声が聞こえて、ちゃんと写真を撮っているかチラッと見てみた。
チラッと見てみた、その時・・・
「・・・・・・・・・・・・っっっ」
転んだ。
転んだ・・・。
かけっこで転んだことなんてないのに。
痛い・・・。
痛い・・・。
手も足も痛い・・・。
「ぅぅぅ~・・・・・・っっっ」
幼稚園で泣くのなんて恥ずかしいけど、泣いた。
一生懸命我慢をしながらだけど、泣いた。
だって、転んだ。
だって、痛い。
”りい“のことを応援する声の中に笑い声まで聞こえてきて、もっともっと泣いた。
お父さんのせいだ。
“じゅん”のせいだ。
お父さんと“じゅん”が悪い。
写真を撮るって言ってきたお父さんが悪い。
“転ぶなよ!”ってわざわざ言ってきた“じゅん”が悪い。
全部全部、全部全部・・・
全部・・・
お母さんが悪い。
“りい”の髪の毛を結べないお母さんが悪い。
運動会なのに来てくれないお母さんが悪い。
病気になったお母さんが悪い。
入院したお母さんが悪い。
「うぅぅぅぅ~・・・・・・・っっっ」
“りい”はこんなに悪い子じゃなかったのに。
”りい”はこんなに意地悪じゃなかったのに。
こんなんじゃ“りい”はプリンセスになれない。
こんなに悪い子の所に王子様なんて来てくれない。
こんなに悪い子の所に王子様なんて迎えに来てくれない。
“りい”はプリンセスになれない・・・。
“りい”はお母さんみたいな可愛いドレスを着たプリンセスになって、王子様と結婚式をやれない。
“りい”はプリンセスになりたかったのに。
”りい”はお母さんみたいなプリンセスになりたかった・・・。
そう思いながら、地面に倒れていた。
髪の毛だけじゃなくて、手も足も、顔も地面につけながら、倒れていた。
そしたら・・・
「大丈夫?」
聞いたことのない声がして。
「立てる?」
誰かが“りい“のことを立たせようとしてきて。
「怪我しちゃった?」
こんなに悪い子な“りい“の、怪我の心配までしてくれて。
「何か病気してる?
走る前に泣きそうな、苦しそうなをしてたよ?」
そう言われて・・・
それで、気付いた。
「びょうき・・・しれる・・・・・。」
”りい“も病気をしていた。
だからこんなに苦しかった。
だからこんなに痛かった。
毎日毎日毎日毎日、毎日とにかく苦しくて痛かった。
幼稚園の園庭でみんなの大きな応援の声がずっと続いている。
年長さんでもかけっこの時間が始まったから。
“りい”の少し前の順番だった“じゅん”は、みんなが言っていた通り2番でゴールをしていた。
1番だったのは“じゅん”の隣を走っていた“じゅん”という男の子。
悔しそうな顔でその“じゅん”に向かって何かを言っていた“じゅん”が、ゴールの向こう側から“りい”に向かって叫んできた。
「りい!!!!!転ぶなよ!!!!!」
かけっこで転んだことなんてない“りい”にそんなことを言ってきて、“りい”はムカつきながらスタートの場所に立った。
そして・・・
勢い良く前に駆け出した。
かけっこは結構得意だった。
幼稚園に入る前までは“全然速くない”と思っていたけど、“めい姉”と“じゅん”が速すぎるだけで“りい”はみんなと比べると結構速かった。
お母さんに“可愛い姿”は見せられなくても、”格好良い姿”だったら見せても良いかなと走り始めた時に思った。
お母さんが言うには、王子様が見付けてくれるのはもっとお姉さんになってからだと言っていたし。
お母さんが言うには、王子様が迎えに来てくれるのはもっともっとお姉さんになってからだとも言っていたし。
「理衣!!!頑張れ!!!!!」
お父さんの声が聞こえて、ちゃんと写真を撮っているかチラッと見てみた。
チラッと見てみた、その時・・・
「・・・・・・・・・・・・っっっ」
転んだ。
転んだ・・・。
かけっこで転んだことなんてないのに。
痛い・・・。
痛い・・・。
手も足も痛い・・・。
「ぅぅぅ~・・・・・・っっっ」
幼稚園で泣くのなんて恥ずかしいけど、泣いた。
一生懸命我慢をしながらだけど、泣いた。
だって、転んだ。
だって、痛い。
”りい“のことを応援する声の中に笑い声まで聞こえてきて、もっともっと泣いた。
お父さんのせいだ。
“じゅん”のせいだ。
お父さんと“じゅん”が悪い。
写真を撮るって言ってきたお父さんが悪い。
“転ぶなよ!”ってわざわざ言ってきた“じゅん”が悪い。
全部全部、全部全部・・・
全部・・・
お母さんが悪い。
“りい”の髪の毛を結べないお母さんが悪い。
運動会なのに来てくれないお母さんが悪い。
病気になったお母さんが悪い。
入院したお母さんが悪い。
「うぅぅぅぅ~・・・・・・・っっっ」
“りい”はこんなに悪い子じゃなかったのに。
”りい”はこんなに意地悪じゃなかったのに。
こんなんじゃ“りい”はプリンセスになれない。
こんなに悪い子の所に王子様なんて来てくれない。
こんなに悪い子の所に王子様なんて迎えに来てくれない。
“りい”はプリンセスになれない・・・。
“りい”はお母さんみたいな可愛いドレスを着たプリンセスになって、王子様と結婚式をやれない。
“りい”はプリンセスになりたかったのに。
”りい”はお母さんみたいなプリンセスになりたかった・・・。
そう思いながら、地面に倒れていた。
髪の毛だけじゃなくて、手も足も、顔も地面につけながら、倒れていた。
そしたら・・・
「大丈夫?」
聞いたことのない声がして。
「立てる?」
誰かが“りい“のことを立たせようとしてきて。
「怪我しちゃった?」
こんなに悪い子な“りい“の、怪我の心配までしてくれて。
「何か病気してる?
走る前に泣きそうな、苦しそうなをしてたよ?」
そう言われて・・・
それで、気付いた。
「びょうき・・・しれる・・・・・。」
”りい“も病気をしていた。
だからこんなに苦しかった。
だからこんなに痛かった。
毎日毎日毎日毎日、毎日とにかく苦しくて痛かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる