【R18】”純“と純愛ではない”愛“の始まり

Bu-cha

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わぁぁぁぁ───────···


幼稚園の園庭でみんなの大きな応援の声がずっと続いている。
年長さんでもかけっこの時間が始まったから。


“りい”の少し前の順番だった“じゅん”は、みんなが言っていた通り2番でゴールをしていた。
1番だったのは“じゅん”の隣を走っていた“じゅん”という男の子。


悔しそうな顔でその“じゅん”に向かって何かを言っていた“じゅん”が、ゴールの向こう側から“りい”に向かって叫んできた。


「りい!!!!!転ぶなよ!!!!!」


かけっこで転んだことなんてない“りい”にそんなことを言ってきて、“りい”はムカつきながらスタートの場所に立った。


そして・・・


勢い良く前に駆け出した。


かけっこは結構得意だった。


幼稚園に入る前までは“全然速くない”と思っていたけど、“めい姉”と“じゅん”が速すぎるだけで“りい”はみんなと比べると結構速かった。


お母さんに“可愛い姿”は見せられなくても、”格好良い姿”だったら見せても良いかなと走り始めた時に思った。


お母さんが言うには、王子様が見付けてくれるのはもっとお姉さんになってからだと言っていたし。


お母さんが言うには、王子様が迎えに来てくれるのはもっともっとお姉さんになってからだとも言っていたし。


「理衣!!!頑張れ!!!!!」


お父さんの声が聞こえて、ちゃんと写真を撮っているかチラッと見てみた。


チラッと見てみた、その時・・・


「・・・・・・・・・・・・っっっ」


転んだ。


転んだ・・・。


かけっこで転んだことなんてないのに。


痛い・・・。


痛い・・・。


手も足も痛い・・・。


「ぅぅぅ~・・・・・・っっっ」


幼稚園で泣くのなんて恥ずかしいけど、泣いた。
一生懸命我慢をしながらだけど、泣いた。


だって、転んだ。


だって、痛い。


”りい“のことを応援する声の中に笑い声まで聞こえてきて、もっともっと泣いた。


お父さんのせいだ。


“じゅん”のせいだ。


お父さんと“じゅん”が悪い。


写真を撮るって言ってきたお父さんが悪い。


“転ぶなよ!”ってわざわざ言ってきた“じゅん”が悪い。


全部全部、全部全部・・・


全部・・・


お母さんが悪い。


“りい”の髪の毛を結べないお母さんが悪い。


運動会なのに来てくれないお母さんが悪い。


病気になったお母さんが悪い。


入院したお母さんが悪い。


「うぅぅぅぅ~・・・・・・・っっっ」


“りい”はこんなに悪い子じゃなかったのに。


”りい”はこんなに意地悪じゃなかったのに。


こんなんじゃ“りい”はプリンセスになれない。


こんなに悪い子の所に王子様なんて来てくれない。


こんなに悪い子の所に王子様なんて迎えに来てくれない。


“りい”はプリンセスになれない・・・。


“りい”はお母さんみたいな可愛いドレスを着たプリンセスになって、王子様と結婚式をやれない。


“りい”はプリンセスになりたかったのに。


”りい”はお母さんみたいなプリンセスになりたかった・・・。


そう思いながら、地面に倒れていた。


髪の毛だけじゃなくて、手も足も、顔も地面につけながら、倒れていた。





そしたら・・・

































「大丈夫?」




聞いたことのない声がして。




「立てる?」




誰かが“りい“のことを立たせようとしてきて。




「怪我しちゃった?」




こんなに悪い子な“りい“の、怪我の心配までしてくれて。




「何か病気してる?
走る前に泣きそうな、苦しそうなをしてたよ?」



そう言われて・・・



それで、気付いた。



「びょうき・・・しれる・・・・・。」



”りい“も病気をしていた。
だからこんなに苦しかった。
だからこんなに痛かった。



毎日毎日毎日毎日、毎日とにかく苦しくて痛かった。
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