“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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「俺は“彼女”の婚約者じゃないよ。」



砂川さんは困った顔で笑いながら答えた。



この笑顔は知っている。
何度も何度も何度も見た笑顔。
「エッチがしたい」と言う私に砂川さんは何度も何度も何度もこの笑顔で笑っていた。



私はまた砂川さんのことを困らせている。
“婚約者”なのだと今はまだ答えられないらしい。



「砂川課長。」



優しくて可愛らしい声が砂川さんのことを呼ぶのが聞こえた。
そっちに視線を移すと砂川さんのすぐ後ろに“羽鳥一美さん”が美しく立っている。



「この方は?」



「・・・増田生命の営業部の女の子です。」



“羽鳥一美さん”からの問い掛けに少し間を空け、砂川さんが私のことを説明した。
そんな砂川さんのことを“羽鳥一美さん”はジッと見上げた後・・・



私の方を見て美しすぎるくらい美しい笑顔で笑い掛けてきた。



「私は増田ホールディングスの経理部の羽鳥です。」



そう言いながらスーツのジャケットから名刺入れを取り出し美しい動きで私に名刺を差し出してきた。
それには慌てて立ち上がり私も名刺を“羽鳥一美さん”に差し出す。



「増田生命の園江(そのえ)と申します。
今は営業部ではなく経理部に配属されております。」



私の名刺を“羽鳥一美”さんは真剣な顔で見下ろし、綺麗に整っている口をゆっくりと動かした。



「園江さん・・・。
アパレル事業の営業部、園江課長の妹さんですか?」



真剣な顔で私のことをパッと見上げ、綺麗な目で私のことを真っ直ぐと見てくる。



「はい、兄はアパレル事業の方におります。」



「やっぱり~・・・!!」



“羽鳥一美さん”は何故か物凄く嬉しそうな顔で砂川さんのことを見上げた。
そんな“羽鳥一美さん”のことを砂川さんは困った顔で笑っていて、私以外の人の前でこんな風に表情を変えた砂川さんのことを私は初めて見た。



「園江さん!私達と一緒にお食事をしませんか?」



「羽鳥さん、それは・・・。
この子はデートをしていますし。」



さっき“デートじゃない”と答えたばかりなのにまた“デート”だと言って、“羽鳥さん”の提案を必死に回避しようとしている砂川さん。
こんなに狼狽えている砂川さんの姿を羽鳥さんの前でも見せるらしい。



「デートなんですか・・・?」



羽鳥さんがあまりにも残念そうな顔で聞いてくるので私は無言で首を横に振った。



「デートじゃないそうですよ、砂川課長!
園江さんとご一緒しましょうよ!!」



砂川さんと私がどんな関係だったのか何も知らないであろう羽鳥さんがまた砂川さんにそう言った。



私は困った顔で笑い続ける砂川さんの顔をぼんやりと眺めるしか出来なかった。
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