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3年前の私だったらとっくにお会計を済ませて1人で店を出ていた。
砂川さんは“そういう人”だから私から“先に帰る”という連絡だけをして、砂川さんに何があったのかと聞くことも何で戻ってきてくれなかったのかと問い詰めることもなく、1人で駅まで歩いて帰っていたと思う。
この店から駅まで歩く時間を考えると、私が乗る電車の終電にそろそろ間に合わなくなる。
それが分かっていても、私はこの席から立ち上がることは出来なかった。
数分前に聞いた砂川さんの言葉が私の頭の中から消えることなく回り続ける。
1度終わってはまた戻って、また終わったのに何度も戻ってくる。
「もう、終わり・・・。」
小さく笑いながら呟き、強く目を閉じテーブルに突っ伏した。
「何処まで行ったの・・・?」
羽鳥さんと並びこの店を出て行った砂川さんの後ろ姿を思い浮かべながらその言葉を口にした。
そしたら・・・
「タクシー乗り場まで行ったよ。」
記憶の中の砂川さんの声ではなく、本物の砂川さんの声が私の頭の中まで届いてきた。
でも私は顔を上げることが出来ずにテーブルに突っ伏したまま。
顔なんて上げられなかった。
こんなに泣いてしまっている顔なんて見せたら心配させてしまうから。
砂川さんはとても優しい人だから。
砂川さんは“そういう人”ではあるけれど、昔から砂川さんの本質は凄く優しい人だった。
そんなの私は昔から知っている。
羽鳥さんに自慢されなくても私だって昔から知っている。
私は羽鳥さんも気付いていないかもしれない砂川さんの本質だって知っている。
砂川さんはとてもとても優しい人で・・・
そして、それと同じくらい酷い人でもある。
婚約者である羽鳥さんを送った後に別の女の元に戻ってきてしまうくらい“酷い人”。
身体“だけ”の関係が散々あった女の元に戻ってきてしまうなんて、なんて酷い男なのだろう。
止まった涙を確認した後にゆっくりと顔を上げ砂川さんのことを見上げた。
そしたら、驚いた。
戻ってきた砂川さんは息が上がっていたから。
息が上がっている砂川さんなんてエッチをしていた時だって見たことがない。
砂川さんは“そういう人”だった。
砂川さんは、とにかく“そういう人”で。
“そういう人”だったはずの砂川さんは私のトコロに戻って来る為に息を上げてくれた。
そのことが私の心を凄く嬉しくしてしまう。
そんなことでも私の心は凄く凄く嬉しくなってしまう。
私はそれくらいだった・・・。
それくらいに男の人から“何か”なんてして貰ったことのない女だった・・・。
だから許せてしまう。
だからすぐに笑顔になってしまう。
私はこの優しくて酷い男である砂川さんのことが好きだった。
約3年経った今でも“好き”を終われていないくらいに、私は砂川さんのことが“男の人”として凄く好きだった。
砂川さんと私の関係は終わったはずなのに、優しくて酷いこの人は息を上げながら私のトコロに戻ってきてしまった。
私の心を喜ばせているなんて知らずに。
私の“女の子”としての心がこんなにも喜んでしまっているなんて全く知らずに。
「タクシー乗り場、遠すぎじゃない?」
敬語ではなく“普通”の口調で笑い掛けた私に砂川さんも“普通”に笑った。
「タクシー乗り場が長蛇の列でさ。
並びながらタクシーを呼んだけどそっちも全然来なくて。
羽鳥さんは電車で帰るって何度も言ってたけど、こんな時間に電車で帰らせるわけにはいかないから。」
「うん、タクシーの方がいいよ。
羽鳥さんは“普通”の女の人じゃないでしょ?」
この時間でも電車で帰るのが当たり前の私が砂川さんから視線を逸らしながら立ち上がった。
「お会計はまだしてないよね?」
「してないよ。
砂川さんが奢ってくれるって言ったでしょ?」
「うん、でも・・・」
砂川さんはテーブルに置かれていた伝票を手に取った。
「純ちゃん、もう帰ったかと思ったよ。」
そう言って・・・
困った顔で笑った。
「電話も繋がらないし、さっき俺が送ったメッセージにも返信がなくて・・・。
ずっと読んでくれてもいないよね。」
砂川さんは“そういう人”だから私から“先に帰る”という連絡だけをして、砂川さんに何があったのかと聞くことも何で戻ってきてくれなかったのかと問い詰めることもなく、1人で駅まで歩いて帰っていたと思う。
この店から駅まで歩く時間を考えると、私が乗る電車の終電にそろそろ間に合わなくなる。
それが分かっていても、私はこの席から立ち上がることは出来なかった。
数分前に聞いた砂川さんの言葉が私の頭の中から消えることなく回り続ける。
1度終わってはまた戻って、また終わったのに何度も戻ってくる。
「もう、終わり・・・。」
小さく笑いながら呟き、強く目を閉じテーブルに突っ伏した。
「何処まで行ったの・・・?」
羽鳥さんと並びこの店を出て行った砂川さんの後ろ姿を思い浮かべながらその言葉を口にした。
そしたら・・・
「タクシー乗り場まで行ったよ。」
記憶の中の砂川さんの声ではなく、本物の砂川さんの声が私の頭の中まで届いてきた。
でも私は顔を上げることが出来ずにテーブルに突っ伏したまま。
顔なんて上げられなかった。
こんなに泣いてしまっている顔なんて見せたら心配させてしまうから。
砂川さんはとても優しい人だから。
砂川さんは“そういう人”ではあるけれど、昔から砂川さんの本質は凄く優しい人だった。
そんなの私は昔から知っている。
羽鳥さんに自慢されなくても私だって昔から知っている。
私は羽鳥さんも気付いていないかもしれない砂川さんの本質だって知っている。
砂川さんはとてもとても優しい人で・・・
そして、それと同じくらい酷い人でもある。
婚約者である羽鳥さんを送った後に別の女の元に戻ってきてしまうくらい“酷い人”。
身体“だけ”の関係が散々あった女の元に戻ってきてしまうなんて、なんて酷い男なのだろう。
止まった涙を確認した後にゆっくりと顔を上げ砂川さんのことを見上げた。
そしたら、驚いた。
戻ってきた砂川さんは息が上がっていたから。
息が上がっている砂川さんなんてエッチをしていた時だって見たことがない。
砂川さんは“そういう人”だった。
砂川さんは、とにかく“そういう人”で。
“そういう人”だったはずの砂川さんは私のトコロに戻って来る為に息を上げてくれた。
そのことが私の心を凄く嬉しくしてしまう。
そんなことでも私の心は凄く凄く嬉しくなってしまう。
私はそれくらいだった・・・。
それくらいに男の人から“何か”なんてして貰ったことのない女だった・・・。
だから許せてしまう。
だからすぐに笑顔になってしまう。
私はこの優しくて酷い男である砂川さんのことが好きだった。
約3年経った今でも“好き”を終われていないくらいに、私は砂川さんのことが“男の人”として凄く好きだった。
砂川さんと私の関係は終わったはずなのに、優しくて酷いこの人は息を上げながら私のトコロに戻ってきてしまった。
私の心を喜ばせているなんて知らずに。
私の“女の子”としての心がこんなにも喜んでしまっているなんて全く知らずに。
「タクシー乗り場、遠すぎじゃない?」
敬語ではなく“普通”の口調で笑い掛けた私に砂川さんも“普通”に笑った。
「タクシー乗り場が長蛇の列でさ。
並びながらタクシーを呼んだけどそっちも全然来なくて。
羽鳥さんは電車で帰るって何度も言ってたけど、こんな時間に電車で帰らせるわけにはいかないから。」
「うん、タクシーの方がいいよ。
羽鳥さんは“普通”の女の人じゃないでしょ?」
この時間でも電車で帰るのが当たり前の私が砂川さんから視線を逸らしながら立ち上がった。
「お会計はまだしてないよね?」
「してないよ。
砂川さんが奢ってくれるって言ったでしょ?」
「うん、でも・・・」
砂川さんはテーブルに置かれていた伝票を手に取った。
「純ちゃん、もう帰ったかと思ったよ。」
そう言って・・・
困った顔で笑った。
「電話も繋がらないし、さっき俺が送ったメッセージにも返信がなくて・・・。
ずっと読んでくれてもいないよね。」
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