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それを見て私の心は嫌な風に動いた。
砂川さんが見せてきたスマホの画面から目を逸らしてから笑顔を作る。
「砂川さん、変わったね。
私の誕生日に“おめでとう”なんて言える人じゃなかったのに。
そもそも私の誕生日覚えてたんだね。」
これが“最後の最後”だと思うと止まることなく口から勝手に言葉が出てきてしまう。
「親会社に行って良かったね。
良い意味で変わったよ。
女の人のことを理解して考えて、寄り添うような未来を想像出来るようになって良かったね。」
“羽鳥さんと出会えて良かったね。”
その言葉だけは無理矢理飲み込んだ。
その言葉を口にしたら一瞬で泣いてしまうことは分かったので、必死に飲み込んだ。
「でも、私のトコロに戻って来るなんてバカだね。
そこは相変わらず優しすぎて、そこまでくるとバカだなと思っちゃう。
砂川さん結構格好良くて仕事も出来て、そのうえ女の人の扱いまで上手になったら奥さんが心配しちゃうこともあるんじゃない?」
やっぱり泣きそうになってきたので慌ててレジの方を向き直しまた歩き始めた。
私の後ろを砂川さんがついてくる気配を感じながら深呼吸を繰り返していく。
そしたら・・・
「そうか、そこまでは考えてなかった。
これから気を付けるよ。」
嬉しそうな声でそう言って・・・
「変われていたようでよかったよ。
出来れば昔の俺のことは忘れて欲しい。」
砂川さんのその言葉には深呼吸していた鼻から空気が吸えなくなった。
だから息を止めてレジまで歩き続ける。
“あの頃”の砂川さんのことを思い出しながら歩き続ける。
私が勘違いしてしまっていただけだけど、こんな私のことをちゃんと楽しくしてくれちゃんと幸せにしてくれていた“あの頃”の砂川さんのことを思い出してしまいながら。
泣かないように瞬きもせずに歩き続ける。
それくらい精一杯歩き続ける。
なのに、砂川さんが続けてしまった。
もう何も聞きたくはないのに続けてきた。
「出来れば昔のことは全て忘れて欲しい。」
勘違いだったとしてもちゃんと楽しくて、ちゃんと幸せだった砂川さんとの“あの頃”のことを忘れるように言われてしまった。
それを言う為にわざわざ戻ってきたのだとやっと分かった。
初めて見る怖いくらい真剣な顔で“待ってて”と言っていた姿を思い浮かべる。
私のことを送ってくれる為の言葉ではなかった。
息を上げながら私のトコロに戻って来てくれたのは、私のことを“女の子”のように送ってくれる為ではなかった。
“あの頃”のことを口止めする為に私のトコロにわざわざ戻ってきただけだった。
その為に私のことを送るなんていう言い訳を口にしただけだった。
私はまた勘違いをしてしまっていた。
それで私の“女の子”の心はまた喜んで、こんな時間まで砂川さんのことを待ってしまっていた。
ちゃんと分かっていたはずなのに。
砂川さんは昔から私のことを“女の子”として好きなわけではなく、ただの優しさだけで私と一緒にいてくれただけなのに。
「砂川さんから言われなくてもとっくに全て忘れてるので安心してください。
ご馳走様でした。
終電がなくなったのでタクシーで帰ります。
お疲れ様でした。」
これからレジでお会計をする砂川さんのことを振り返ることも待つこともせず、店を1人で出た。
1人で出た店の外はもう3月の中旬だけどとても寒い夜だった。
それで思い出した。
去年の今日も一昨年の今日も夜はとても寒かったことを。
そして、砂川さんと一緒に過ごした年の今日は、夜の寒さなんて気付かなかったことを。
「“最後の日”よりも最悪な最後なんだけど・・・。」
寒さを振り切るように早足で大通りまで歩いた。
砂川さんが見せてきたスマホの画面から目を逸らしてから笑顔を作る。
「砂川さん、変わったね。
私の誕生日に“おめでとう”なんて言える人じゃなかったのに。
そもそも私の誕生日覚えてたんだね。」
これが“最後の最後”だと思うと止まることなく口から勝手に言葉が出てきてしまう。
「親会社に行って良かったね。
良い意味で変わったよ。
女の人のことを理解して考えて、寄り添うような未来を想像出来るようになって良かったね。」
“羽鳥さんと出会えて良かったね。”
その言葉だけは無理矢理飲み込んだ。
その言葉を口にしたら一瞬で泣いてしまうことは分かったので、必死に飲み込んだ。
「でも、私のトコロに戻って来るなんてバカだね。
そこは相変わらず優しすぎて、そこまでくるとバカだなと思っちゃう。
砂川さん結構格好良くて仕事も出来て、そのうえ女の人の扱いまで上手になったら奥さんが心配しちゃうこともあるんじゃない?」
やっぱり泣きそうになってきたので慌ててレジの方を向き直しまた歩き始めた。
私の後ろを砂川さんがついてくる気配を感じながら深呼吸を繰り返していく。
そしたら・・・
「そうか、そこまでは考えてなかった。
これから気を付けるよ。」
嬉しそうな声でそう言って・・・
「変われていたようでよかったよ。
出来れば昔の俺のことは忘れて欲しい。」
砂川さんのその言葉には深呼吸していた鼻から空気が吸えなくなった。
だから息を止めてレジまで歩き続ける。
“あの頃”の砂川さんのことを思い出しながら歩き続ける。
私が勘違いしてしまっていただけだけど、こんな私のことをちゃんと楽しくしてくれちゃんと幸せにしてくれていた“あの頃”の砂川さんのことを思い出してしまいながら。
泣かないように瞬きもせずに歩き続ける。
それくらい精一杯歩き続ける。
なのに、砂川さんが続けてしまった。
もう何も聞きたくはないのに続けてきた。
「出来れば昔のことは全て忘れて欲しい。」
勘違いだったとしてもちゃんと楽しくて、ちゃんと幸せだった砂川さんとの“あの頃”のことを忘れるように言われてしまった。
それを言う為にわざわざ戻ってきたのだとやっと分かった。
初めて見る怖いくらい真剣な顔で“待ってて”と言っていた姿を思い浮かべる。
私のことを送ってくれる為の言葉ではなかった。
息を上げながら私のトコロに戻って来てくれたのは、私のことを“女の子”のように送ってくれる為ではなかった。
“あの頃”のことを口止めする為に私のトコロにわざわざ戻ってきただけだった。
その為に私のことを送るなんていう言い訳を口にしただけだった。
私はまた勘違いをしてしまっていた。
それで私の“女の子”の心はまた喜んで、こんな時間まで砂川さんのことを待ってしまっていた。
ちゃんと分かっていたはずなのに。
砂川さんは昔から私のことを“女の子”として好きなわけではなく、ただの優しさだけで私と一緒にいてくれただけなのに。
「砂川さんから言われなくてもとっくに全て忘れてるので安心してください。
ご馳走様でした。
終電がなくなったのでタクシーで帰ります。
お疲れ様でした。」
これからレジでお会計をする砂川さんのことを振り返ることも待つこともせず、店を1人で出た。
1人で出た店の外はもう3月の中旬だけどとても寒い夜だった。
それで思い出した。
去年の今日も一昨年の今日も夜はとても寒かったことを。
そして、砂川さんと一緒に過ごした年の今日は、夜の寒さなんて気付かなかったことを。
「“最後の日”よりも最悪な最後なんだけど・・・。」
寒さを振り切るように早足で大通りまで歩いた。
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