“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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「昨日はセクハラだったよね、ごめんね。
今後昨日みたいなことは絶対に言わないから。
純愛ちゃんが嫌だと思うことは絶対に言わない。」



砂川さんが真剣な顔でそう言って・・・



「純愛ちゃんの彼氏の所ではなく“俺の所に来て欲しい”とも絶対に言わない。
俺がもう純愛ちゃんに選ばれることがないことは改めて分かった。」



砂川さんのスーツのジャケットに包まれている私のことを真剣どころか必死な顔のように見える顔で見詰めてくる。



「何かに疲れた時だけで良い。
その時だけでも俺の所に来てくれるならもうそれでいいから。」



そんなことを言って・・・



「俺の家においで。」



そう言ってきた。



“あの日”初めて言ってくれたその言葉、そして昨日も言ってくれたこの言葉。



この言葉を今日もまた聞くことが出来て私の心は喜んでいる。
だって私は砂川さんが口にしてくれたこの言葉が凄く好きだったから。



“あの日”、砂川さんは私の心を本当の女の子にしてくれた。
砂川さんにとっては何でもないような時間だっただろうけど、私にとってはとても大切で貴重な時間になった。



“あの日”ことを思い出しながら砂川さんのことを見上げる。
やっぱり砂川さんとの昔のことを忘れることなんて私には出来そうにない。



初めて見るくらい必死な顔をしている砂川さんのことを眺めがら口にする。



「そんな簡単に私のことを家に入れようとしたらダメだよ。」



「セクハラだよね・・・、ごめんね。」



砂川さんは困った顔で笑いながら私から視線を逸らした。



「まさかまた会えるなんて思わなくて。
ホワイトデーの夜、“純ちゃん”の誕生日に会えたことにも驚いたけど、その後にうちの会社に出向してきたことにも驚いて。」



「私も驚いたよ。」



「ずっと謝りたいと思っていた。
“純ちゃん”と過ごしていた3年間、俺は“純”ちゃんに可哀想なことをしてしまっていたから。
だからもう1度会ってちゃんと謝罪をしたいと思っていて・・・それだけは思っていて。
再会するまでは本当にそれだけを思っていたんだよ・・・。」



「もう3年も前のことだから謝罪なんていらないよ。
それに私が勝手に勘違いをしていただけだから。」



「今付き合っている彼氏は大丈夫?
その人とは勘違いじゃないの?」



「うん、勘違いじゃない。
ちゃんと言葉にして貰えた。」



「セックスは出来ないのに?」



そう言われ、私の“彼氏”である佐伯さんの姿を思い浮かべる。



「私の彼氏はエッチが出来ない身体なの。」



「・・・昔の俺もそうだったけどね。」



「砂川さんは本当は出来たでしょ。
相手が私だから出来なかっただけだよ。」



「俺の家においで。
“純愛ちゃん”の話を今度はちゃんと聞きたいから。
こんな時間に俺の家に来て彼氏と何かあった?」



「うん、あった・・・。」



私は鞄を震える手で開け、そこから可愛いメモ用紙を取り出した。
そして震える手のままそれを砂川さんに向かって差し出した。



「まだ寒い?」



ワイシャツだけの砂川さんが緊張で震えている私の手からメモ用紙を引き抜き、それを普通に見下ろした。



「誓約書?」



「うん・・・。」



「・・・随分と簡素な誓約書だね。
この字、佐伯さん?」



「うん・・・。」



「甲と乙の関係により今後何らかの事態が起きた際、その全てにおいて甲が責任を負うことはなく乙がその全ての責任を負う・・・。」



砂川さんが誓約書の文言を読み終え、少しだけ考えた様子になった。



「フワッとし過ぎて全く内容がないけど、佐伯さんは敢えてこうしたのかな?」



「そうだと思う・・・。」



緊張し過ぎて歯までカタカタと震え出してしまい、自然と涙を流しながら砂川さんを見上げる。



「砂川さん、今日は34歳の誕生日でしょ・・・?」



「ああ、うん、そうだね。」



「私から誕生日プレゼントを渡していい・・・?」



聞いた私に砂川さんの瞳が少しだけ揺れた。



「うん・・・。」



「私、砂川さんと最後にエッチをした3年前から誰ともエッチをしてないの・・・。」



「うん・・・。」



「昨日の砂川さんからのセクハラは会社に訴えないから、私の砂川さんへのセクハラも訴えないで?」



「昔から訴えるつもりはなかったよ。」



「昔の話じゃなくて今の・・・これからの話。」



「これから?」



不思議な顔で私のことを見下ろす砂川さんにカタカタと音が鳴る口を必死に動かす。



「私のセカンドバージンを貰ってくれませんか?」



この言葉を口から出す。



昔は“バージン”だったけれど、昔も同じことを砂川さんに嘆願した。



「砂川さんの誕生日プレゼントに私のセカンドバージンを貰ってくれませんか?」



大きく揺れる瞳で私のことを見詰める砂川さんから逃げるように顔だけは逸らした。
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