“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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初めて感じる感覚・・・。
でも“凄く気持ち良い”というわけでもなく、“何か変な感じ”という感覚・・・。



砂川さんが私の胸の先を口に含み、舌先で私の胸の先を優しく転がすように舐めてくる。
そんなことをしてくる砂川さんの顔を見下ろしてまた泣きたくなった。



羽鳥さんにもこんなことをしているのだと分かり、泣きたくなってくる。



“どう思っているんだろう”と思う。



私のこんな胸を、砂川さんはどう思っているんだろう。



“本当は”、どう思っているんだろう。



私も営業職として働いてきたから知っている。



自分に興味を持たせる方法、相手の不安要素の汲み取り方、相手を喋らせる方法、相手の心を気持ち良くさせる方法。



自分の営業成績だけを意識していたわけではなく、ちゃんとお客様のことを考えて営業活動はしていたけれど・・・



私だって出来る。



本当のことではない嘘をついたり演技をすることが。



私だって昔散々砂川さんにやっていた。



“彼氏”だと思っていた砂川さんに私と一緒にいて“楽しい”と、“幸せ”だと、そう思って貰えるように、私だって散々やっていた。



「“純ちゃん”、可愛い・・・。」



砂川さんが“純ちゃん”と呼び、そんな嘘をつきながら私の胸の先を舌で舐めてくる。



「“純愛ちゃん”・・・。」



砂川さんが私のことを“純愛ちゃん”と呼ぶ。



そして・・・



「・・・・・ン」



私の胸の先から口を離した砂川さんが私の唇にまた唇をつけてきた。



深いキスをした後にまた唇をゆっくりと離し、私のことを熱が籠ったような目で見下ろしてくる。



「好きだよ・・・。
凄く好きだよ・・・。」



砂川さんにとって“可哀想”な私にそんな嘘をついてくる。



こんな演技までしてくる。



嘘をつき、演技までして、私のことを大切するエッチをしてくれる。



明るい部屋の中、こんな私のことを見詰める砂川さんのこの瞳の先には誰がいるんだろう。



「今コンタクトしてる?」



「うん、してるよ?」



「凄いね、砂川さん。
増田生命の営業であの順位だったくらいだもん、やっぱり凄いね。」



「純愛ちゃんにそう言って貰えると嬉しいよ。
あの経理部の女性社員達は俺の営業成績を全く信じてくれないからね。」



「砂川さん、ホールディングスの経理部に異動した時は“め~~・・・・っちゃ変わった人”だったらしいからね。」



「そこまでではなかったよ。」



「そうなの?そう聞いたけど。」



「誰がそんなことを言ってたの?」



そう聞かれ・・・



私は完全に嘘をつく。



「羽鳥さん。」



答えた私に砂川さんは“普通”の顔で笑った。



「それは嘘だよね?
“彼女”だけは俺の営業成績を信じてくれていたくらいだから。」



その言葉を聞き、私はすぐそこにある砂川さんの胸を両手で押した。



「羽鳥さんに信じて貰えてるのに私とこんなことをしてるんだ?」



「驚かれるだろうけど、ちゃんと説明をしたら“彼女”は分かってくれるよ。」



私の上から全然退いてくれない砂川さんの胸をもっと強く押し上げる。



「この前会った時、羽鳥さんって砂川さんのことより私にラブだったよ?」



「それは気付かなかった。」



楽しそうに笑っている砂川さんから視線を逸らし、砂川さんの胸を握り締めた右手で叩いた。



そして目をギュッと閉じ、口から出した。



「私の友達で望っていたの覚えてる?
望って小関の“家”の秘書なの。」



「そうなんだ?それは初めて聞いた。」



「羽鳥さんって望のお兄さんのことが好きだったんだよ。」



本人は自覚がなかったようだから嘘になるかもしれないけれど、羽鳥さんの今の婚約者である砂川さんに、そう言い放った。



強く閉じていた目を恐る恐る開くと、砂川さんは“普通”の顔で私のことを見下ろし続けている。



そして・・・



「俺には言ってもいいけど、うちの会社では言わないであげてね。」



“普通”の優しい顔で笑いながら、私に笑いかけてくる。



全然揺るがない。



私の存在だけではなく私の言葉にも全然揺るがない。



イライラする。



ムカムカする。



それは砂川さんに対してなのか羽鳥さんに対してなのか、それとも自分自身に対してなのか。



よく分からないくらいグチャグチャな感情。



「何で泣いてるの?」



砂川さんが苦しそうに笑いながら私の涙を拭っていく。
優しい砂川さんの手を感じながら、私は言った。



「やっぱり嫌だ・・・。」



小さく呟いた私に砂川さんの瞳は小さく揺れた。



「嫌だ・・・。」



何が嫌なのか自分でもよく分からないけれど、とにかく嫌だったのでそのことだけは口にした。



「俺じゃ嫌だ?」



砂川さんの胸を叩いた私の右手の拳を砂川さんが優しく包んだ。



「気持ち良くなれなかったかな、ごめんね・・・。」



「全然気持ち良くない・・・。」



「そうか・・・ごめんね・・・。」



瞳を大きく揺らしている砂川さんが私の拳を強く握り、また覚悟を決めたような顔で私のことを見詰めてくる。



「心を込めて、純愛ちゃんのことを大切にするセックスなら出来るから。」



そう言われて・・・



砂川さんにとって“可哀想”な私は大きく泣いた。



「やっぱり嫌だ・・・っ!!
私、やっぱり嫌だ・・・・っっ!!!」



欲しくなってしまいそうになる。



砂川さんには何も求めたことはないはずなのに、今、私は砂川さんのことが欲しくなってしまいそうで。
羽鳥さんと婚約している砂川さんのことがこんなにも欲しくなってしまいそうで。



「怖い・・・・・っっ」



大きく泣き続ける私のことを、砂川さんは険しい顔で揺れる瞳で見下ろしていた。



開けないで欲しい・・・。



“最後の日”、あの家の鍵を閉めて仕舞ったはずの砂川さんへの“愛”。
昔と全然違うはずのこの家の中には残っていないはずなのに、砂川さんの嘘と演技で動き出してしまいそうになっている。



「私の命と身体は彼氏のモノなの・・・っ。
だから入ってこないで・・・っ!!!
私の心にも身体にも入ってこないで・・・!!!」



大きく泣きながら砂川さんへの“愛”に叫んだ。



目には見えないけれどきっとこの家にまだ残ってしまっている。



だからだと思う。



だから私の心に戻ってこようと動きだし、砂川さんを私の身体に戻そうとしているのだと思う。



全然気持ち良くないはずなのに、私の下着は信じられないくらい濡れてしまっているから。



「砂川さんのバカ・・・。」



涙と一緒に出した言葉に、砂川さんは凄く優しく笑った。



「全部俺のせいだから。
純愛ちゃんは何も悪くないから。
帰ろう、車で送っていくよ。」



誓約書を交わしている砂川さんが凄く凄く優しい声でそう言った。



そんな言葉まで“愛”の鍵になってしまいそうになる。



「鍵を、開けないで・・・。」



私の身体から離れ、床に落ちているスーツを着ていく砂川さんのことを眺めながら小さく呟いた。
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