“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

文字の大きさ
78 / 166
5

5-14

しおりを挟む
砂川さんの新しい家、砂川さんから開けられた鍵で扉を開け入った場所。
あのネコのマグカップだけが残されていると思っていたのに、まさか私の物が全て残されているという場所。



砂川さんに促されリビングのソファーに座る。
皮のソファーは座った瞬間ひんやりとしたけれど、すぐにそれも気にならなくなった。



「寒い?床暖房付けようか?」



「・・・うん。」



「女の子は身体を冷やさないようにした方がいいらしいからね。」



昔はそんなことを気にしたこともなかった砂川さんはそんな知識を披露しリビングを出ていった。



「羽鳥さんが言ってたの・・・?」



1人になったリビングで呟いた。



「このソファーに羽鳥さんも座ってるの・・・?」



ソファーの目の前にある大きなテレビ、そこには緩い格好をしている“男”が黒い姿で写っている。
綺麗に化粧をしたはずなのにテレビの黒でその色は消されてしまっている。



「あれ、でも・・・」



1つ気が付いて鞄から鏡を取り出した。



「泣いたんだった・・・。」



何度か泣いた私の顔は化粧が落ちて汚くなっていた。
それを指先で拭いたけれど全然綺麗にならない。



「はい、部屋着を持ってきたよ。
部屋着でゆっくりしなね。」



砂川さんの声がリビングに戻ってきて視線を移すと、昔私が着ていた部屋着を本当に持っている。



そして何故かソレに顔をつけ・・・



「あれから洗ってないけど大丈夫かな、カビ臭くないといいけど。」



私は全然気にしないようなことを砂川さんは気にした。



「砂川さんって匂いに敏感だからね。」



「純愛ちゃんだって結構分かる方でしょ。」



受け取った部屋着に自分も顔をつける。
砂川さんも顔をつけていた昔の私の部屋着に。



そしてその匂いを吸い込み・・・



「なんか・・・新しい匂いがする。」



昔使っていた柔軟剤の匂いではなく、何となく新しい匂いがした。



「よく分かったね、新しいタンスに仕舞ってた。」



「そんな保管方法だったの?
段ボールにでも入れておけば良いのに。
砂川さんの頭ってどうなってるの?」



「結構良い頭なはずだけど。」



「勉強とかの方じゃなくてさ、人としての方。」



キッチンに行き恐らく飲み物を準備している砂川さんに言った。
今はシステムキッチンになっていて砂川さんの姿が真正面から見える。



「俺は“め~・・・・っちゃ変な人”なんじゃない?」



「それは昔でしょ?
今は変わったんじゃないの?」



「約30年間も生きてきてそう簡単には変われない。
凄く気を付けることは出来るけど。
普段は我慢しているけどこの前も、“匂いがキツいから香水は止めて欲しいとお願いしましたよね”って経理部内で嘆いたよ。」



「女性社員が多いもんね、みんな香水つけてるんだ?」



「絶対につけているはずなのにつけていないって言い張ってる。」



「確かに経理部の部屋って何となく良い香りはするけど香水っぽい匂いとも違ったよ?」



「・・・身体につける香水みたいな話はしてた。
それで保湿をしているとかなんとか。」



「それ香水じゃなくて普通にボディクリームじゃない?」



「匂いがつている時点で香水と大差ない。
経理部の部屋は臭くて耐えられない時があるから未だに真冬でも昼休みには窓を開けて換気をしていてよく怒られてる。」



「今の時期だと花粉がヤバそうだね。
でも花粉よりも砂川さんの方がヤバい人だね。」



その話は面白かったので普通に笑いながら膝に置いた部屋着を見下ろした。
昔着ていた普通のスウェット。
足元が床暖房により温かくなってきたからか身体もじんわりと温かくなってくる。



綺麗に畳まれているスウェットの上を少しずらすとズボンも出て来て、そして上とズボンの間には生理用品のパンツが挟まっていた。



昔なら1番上に置かれていたであろう生理前パンツがスウェットの間に仕舞われていた。



「でも、砂川さんはちゃんと変わったよ・・・。
変われて良かったね・・・。
変えて貰えて良かったね・・・。」



羽鳥さんの美しい姿を思い浮かべながら呟く。



静かに広げたスウェットは当たり前のように私のサイズ。
女が着るとは思えないような大きいスウェット。



こんなのを羽鳥さんに見付かってもまさか女が着るとは思わないはずで。



でも・・・



生理用パンツを見下ろしながら乾いた笑い声を漏らした。



「どんな言い訳をするの、バカじゃないの・・・。」



でも“結構良い頭”でもあるので、こんなのどんな言い訳でも出来るのかもしれない。



「はい、ホットミルクティー。」



ソファーの前の低いテーブルに砂川さんがホットミルクティーを置いた。
昔私が使っていたネコのマグカップ。



そしてコトッ───────...と、私のマグカップの隣に砂川さんのマグカップも置いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...