“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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数分後



高級そうなダイニングテーブルの椅子に座りテーブルに並んだ中華料理を見下ろす。



「俺の家、昔は全ての部屋が畳だったからテーブルも座卓だったよね。
やっぱりダイニングテーブルの方が食べやすい。」



「昔は赴きのある家で好きだったよ。」



「今の家はあんまり好きじゃない?」



「うん、全然好きじゃない。」



“いただきます”のポーズを取りながらその言葉を口にした。



「でも一般的にはこっちの家の方が好きな人が多いと思うよ。
私の意見なんて気にしなくていいよ。」



砂川さんが作ったエビチリを取り皿に盛り付け、すぐに口に入れた。



そして・・・



「・・・・・・ぅっっっま。」



分かっていたけれどその衝撃は強すぎて、この舌もこの鼻も一気に喜び胸も身体も身震いした。



「今日は純愛ちゃんが好きな物だけを並べたよ。
純愛ちゃんって野菜は好んで食べないからね。」



「麻婆豆腐にも野菜入ってるじゃん。」



「長ネギね。」



砂川さんが麻婆豆腐を取り皿に取り分けてくれて私の目の前に置いた。



「取り分けることなんて昔は・・・・・ぅっっっま。」



嫌味を言っている途中で麻婆豆腐を口に入れると嫌味は全部喉を通ってお腹におさまった。



「純愛ちゃんももう昔みたいに若くはないから食べる量は調整しなね。
俺は最近少し胃もたれするようになってきた。」



「私身体はマジで丈夫。」



「生理前以外は?」



「うん。」



春巻きを食べるとパリッパリの皮の中からトロットロの餡が溢れてきて・・・



「あっっっっつ・・・でも、うっっっま・・・!!」



“春巻きの中にも野菜が入ってるじゃん”と心の中で言い訳をした時、砂川さんが心配そうな声を出してきた。



「婦人科で検査を受けたりしてる?」



「何の?」



「子宮とか?」



「会社の健康診断は受けてるよ。
女の先生が医者だと毎回何となく嫌だから私は男の先生の方が良いんだよね、子宮頚がん検査。」



「子宮頚がんだけ?」



「うん、他は乳がん検診もしてるよ?」



「それだけじゃなくて1度ちゃんと検査をした方が良いと思うよ?」



「何の検査?」



「だから、子宮の。」



「子宮頚がん以外に何の検査があるの?」



「色々とあるみたいだから。
毎月じゃないにしても生理痛で動けなくなるくらい痛いなら1度病院で診て貰った方が良い。」



そんな怖いことを物凄く心配している顔で言われ・・・



「怖いんだけど・・・。」



急に物凄く怖くなってきた。



「俺からしてみたら純愛ちゃんの方が怖いから。
男の先生の所じゃなくて女性の先生に診て貰ってよ。
普通は女性の先生が良いと思うくらいの検査なんでしょ?」



「女の先生に診て貰う方が怖いから。
私のおまたを女の先生にガン見されてるとかカーテンの向こう側でどんな顔をしているのか分からないからめっちゃ怖い。」



「何が怖いの?」



「興奮してたらと思うと怖くない?」



「・・・ああ、温泉に行くと必ず他の女性客からジロジロと見られて興奮されてたか。」



「私も砂川さんと一緒でもう銭湯とか温泉とかマジで無理!!」



「今度部屋に温泉がついている所に旅行に行こうか。」



「何言ってるの?バカじゃないの?」



「じゃあ・・・婦人科には俺が付き添うから。
怖くても1度ちゃんと検査をしよう。」



「それこそ何言ってるの?
砂川さんに付き添われて婦人科なんて行くわけないじゃん。
誰かに見られて変な誤解をされたらどうするの?」



「俺は別に構わないけど。」



「わ・た・し!!!
私のことも考えてよ!!!
それに砂川さんが結婚する人のことも!!!
どれだけ自己中なの!!!」



“ごめんね”とすぐに謝罪してくるかと思ったけれど砂川さんは何も謝ってこない。



しばらく2人で無言で中華料理を食べ・・・



「病院には行ってね。」



険しい顔でそのことをまた言われ、それにはやっぱり怖い気持ちになった。



「折角美味しい中華料理を食べてるのに怖いことを言ってこないでよ。」



「そうか、ごめんね。」



今度はすぐに謝罪をしてきた砂川さんに頷きながら砂川さんが作ってくれた中華料理を食べていく。



泣きたくなるくらいに懐かしく、そして泣きたくなるくらいに美味しいと思う中華料理を。



確かにあの中華街で買ったどの料理よりも味は美味しい。



でも・・・



あの中華街で佐伯さんと砂川さんと3人で食べた料理だって凄く美味しく感じた。



頭が痛くて生理前によりイライラしていたとしても、凄く凄く美味しく感じた。



そう思っていた時・・・



「やっぱり、俺が作る料理の方が美味しい。」



自信満々の砂川さんの声にはムカつきながら口を開く。



「中華街で食べた料理も美味しかったから。」



「あれが?俺の料理より?」



「砂川さんの料理よりとは言わないけど、あれはあれで凄く美味しかった!」



「いや、それは絶対に嘘でしょ。」



「これは嘘じゃないもん。」



「純愛ちゃんは嘘をよくつく悪い子・・・あ、悪い女だっけ?悪い女だからな~。
こんなに悪い女だとショックを受けたくらいに悪い女だから。」



「そうだよ、私は悪い女を目指してるの。」



「悪い女の純愛ちゃんも好きだけどね。
それはそれで興奮する。」



「何で・・・!?」



「だって俺、“純ちゃん”よりも営業成績が上だった男だし。
仕掛けてこられるとそれはそれで興奮してくる。」



「どんな興奮なのそれ・・・。」



「普通に性的興奮だけど。」



「バカ・・・。」



楽しそうに笑う砂川さんの顔をダイニングテーブルのこちら側から見る。



本当に楽しそうに笑っていて。
凄く凄く嬉しそうに笑っていて。
昔と同じような時間が流れていて。



こんなにも全然違う場所なのに昔と同じように感じてしまうトコロで・・・。



“美味しい”と思う。



“やっぱり凄く美味しい”と思う。



“砂川さんと一緒に食べるご飯は凄く凄く美味しい”と思ってしまう。



“こんなに美味しいご飯を食べられた日は“最後の日”以来初めて。”



その言葉は何度も何度も飲み込んだ。



何度も何度も何度も飲み込んで、どんどん痛くなってきた下腹部を片手で押さえた。



下腹部だけではない、おまたまで痛くなっていることに今回も気付きながら。
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