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「綺麗・・・。」
“満開”のハナカイドウの木を眺めながら自然とその言葉を口にした。
そしたら・・・
「あの花、何て名前だっけ?」
昔何度も何度も聞かれた質問を砂川さんからまたされた。
それにも自然と笑いながら答える。
「ハナカイドウ。」
「そうだ、ハナカイドウだ。
やっと思い出した。」
「思い出せてないから、今私が教えたんですけど。」
「このやり取り懐かしいね。」
「本当はちゃんと覚えてたの?」
「いや、全く。
俺には花の名前とか全く興味がないからね。
おいで。」
砂川さんが座布団から退きすぐ隣に座り直した。
日本酒の一升瓶とお猪口も自分の方へ移動させ座布団に私のことを座らせようとしてくる。
それを見て落ち着いている胸を感じながら普通に笑う。
「そこは私が座って良いトコロじゃないよ。
そこは砂川さんが結婚する人の場所。」
私はこの庭園が大好きだった。
特にハナカイドウが咲いている時期の庭園は本当に本当に綺麗で。
淡いピンク色が広がる空間をこの縁側で砂川さんと並んで眺めながら過ごす時間が何よりも好きだった。
その時のことを思い出しながら、今は立ったまま夜の中で輝く満開のハナカイドウを眺める。
「あの色でライトアップをされてると満開のハナカイドウに見えるね。
春だけじゃなくて夏も秋も冬も夜にはハナカイドウが満開に見えるんだろうね。」
あの家の縁側から満開のハナカイドウを砂川さんと並んで眺める度、砂川さんと結婚をしたら奥さんとしてここからこの景色を見られるんだなと幸せな未来を思い浮かべていた。
そしていつか砂川さんと私の間には小さな命も生まれて、その命も満開のハナカイドウを見て喜ぶのかなと、幸せしかないようなそんなずっと先になるであろう未来まで考えてしまっていた。
そんな未来をバカみたいに妄想してしまっていた。
「砂川さんと結婚する人は幸せだね。
春だけじゃなくて毎晩この景色を見られる。」
さっき見てしまった砂川さんの隣に置かれた座布団を思い浮かべ、その座布団に羽鳥さんが座る姿を重ねた。
「ハナカイドウの名前を覚えようとしないどころか、あれが桜と同じに見えるくらいの砂川さんがライトアップまでしたんだね。
女ならきっとみんな綺麗だと思う光景だよ、頑張ったね。」
庭園のことも庭園が眺められる縁側のことも何も興味がなかった砂川さん。
でもここにいることを不快とも思っていない砂川さんのことを毎回私が誘い、この縁側に2人で並び何度も何度も何度も庭園を眺めながら多くの時間を過ごした。
私がこの庭園のことを大好きだと砂川さんは知っていたけれど、いつも業者に任せきりで自分から“何か”をすることなんてしなかった。
「変わったね・・・。」
淡いピンク色の世界の中で自然と涙が流れていく。
でも私のおまたからは真っ赤な色が流れ落ち始めたからかこの胸は穏やかではある。
「この庭園を見たら分かるよ。
砂川さんは凄く変わった。」
その座布団に座る羽鳥さんが幸せそうな顔で淡いピンク色の世界の中にいるのを妄想し、何度も小さく頷く。
そんな羽鳥さんのことを嬉しそうに、幸せそうに笑いながら見詰めている砂川さんのことまで見えてしまい、それにも何度も小さく頷く。
昔私が見た景色はやっぱりもうないのだと何度も言い聞かせる。
昔私が見た未来はやっぱりもう残っていないのだと何度も何度も言い聞かせる。
私が大好きだと思っていた彼氏の砂川さんは最初から存在しなかったのだと何度も何度も何度も言い聞かせる。
私ではダメだった。
私では全然ダメだった。
私ではやっぱり砂川さんでも全然違った。
昔と同じ庭園のように見えるけれど全然違う庭園になった場所を見ながら必死に自分に言い聞かせる。
必死に言い聞かせていた時、砂川さんの静かな声がこの縁側に響いた。
「“純”ちゃんはこの庭園が大好きだったから。」
砂川さんが静かにそう言って・・・
「俺と結婚しようか。
そしたら春だけじゃなくて夏も秋も冬も満開のハナカイドウで花見が出来るよ。」
淡いピンク色の世界の中、そう続けた。
“満開”のハナカイドウの木を眺めながら自然とその言葉を口にした。
そしたら・・・
「あの花、何て名前だっけ?」
昔何度も何度も聞かれた質問を砂川さんからまたされた。
それにも自然と笑いながら答える。
「ハナカイドウ。」
「そうだ、ハナカイドウだ。
やっと思い出した。」
「思い出せてないから、今私が教えたんですけど。」
「このやり取り懐かしいね。」
「本当はちゃんと覚えてたの?」
「いや、全く。
俺には花の名前とか全く興味がないからね。
おいで。」
砂川さんが座布団から退きすぐ隣に座り直した。
日本酒の一升瓶とお猪口も自分の方へ移動させ座布団に私のことを座らせようとしてくる。
それを見て落ち着いている胸を感じながら普通に笑う。
「そこは私が座って良いトコロじゃないよ。
そこは砂川さんが結婚する人の場所。」
私はこの庭園が大好きだった。
特にハナカイドウが咲いている時期の庭園は本当に本当に綺麗で。
淡いピンク色が広がる空間をこの縁側で砂川さんと並んで眺めながら過ごす時間が何よりも好きだった。
その時のことを思い出しながら、今は立ったまま夜の中で輝く満開のハナカイドウを眺める。
「あの色でライトアップをされてると満開のハナカイドウに見えるね。
春だけじゃなくて夏も秋も冬も夜にはハナカイドウが満開に見えるんだろうね。」
あの家の縁側から満開のハナカイドウを砂川さんと並んで眺める度、砂川さんと結婚をしたら奥さんとしてここからこの景色を見られるんだなと幸せな未来を思い浮かべていた。
そしていつか砂川さんと私の間には小さな命も生まれて、その命も満開のハナカイドウを見て喜ぶのかなと、幸せしかないようなそんなずっと先になるであろう未来まで考えてしまっていた。
そんな未来をバカみたいに妄想してしまっていた。
「砂川さんと結婚する人は幸せだね。
春だけじゃなくて毎晩この景色を見られる。」
さっき見てしまった砂川さんの隣に置かれた座布団を思い浮かべ、その座布団に羽鳥さんが座る姿を重ねた。
「ハナカイドウの名前を覚えようとしないどころか、あれが桜と同じに見えるくらいの砂川さんがライトアップまでしたんだね。
女ならきっとみんな綺麗だと思う光景だよ、頑張ったね。」
庭園のことも庭園が眺められる縁側のことも何も興味がなかった砂川さん。
でもここにいることを不快とも思っていない砂川さんのことを毎回私が誘い、この縁側に2人で並び何度も何度も何度も庭園を眺めながら多くの時間を過ごした。
私がこの庭園のことを大好きだと砂川さんは知っていたけれど、いつも業者に任せきりで自分から“何か”をすることなんてしなかった。
「変わったね・・・。」
淡いピンク色の世界の中で自然と涙が流れていく。
でも私のおまたからは真っ赤な色が流れ落ち始めたからかこの胸は穏やかではある。
「この庭園を見たら分かるよ。
砂川さんは凄く変わった。」
その座布団に座る羽鳥さんが幸せそうな顔で淡いピンク色の世界の中にいるのを妄想し、何度も小さく頷く。
そんな羽鳥さんのことを嬉しそうに、幸せそうに笑いながら見詰めている砂川さんのことまで見えてしまい、それにも何度も小さく頷く。
昔私が見た景色はやっぱりもうないのだと何度も言い聞かせる。
昔私が見た未来はやっぱりもう残っていないのだと何度も何度も言い聞かせる。
私が大好きだと思っていた彼氏の砂川さんは最初から存在しなかったのだと何度も何度も何度も言い聞かせる。
私ではダメだった。
私では全然ダメだった。
私ではやっぱり砂川さんでも全然違った。
昔と同じ庭園のように見えるけれど全然違う庭園になった場所を見ながら必死に自分に言い聞かせる。
必死に言い聞かせていた時、砂川さんの静かな声がこの縁側に響いた。
「“純”ちゃんはこの庭園が大好きだったから。」
砂川さんが静かにそう言って・・・
「俺と結婚しようか。
そしたら春だけじゃなくて夏も秋も冬も満開のハナカイドウで花見が出来るよ。」
淡いピンク色の世界の中、そう続けた。
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