“純”の純愛ではない“愛”の鍵

Bu-cha

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数日後



お洒落なカフェではなくチェーン店のカフェ。
私の目の前に座る望が可愛い顔で私の顔をジーッと見詰め、明らかに観察してくる。



それには小さく吹き出してから突っ込む。



「表情を読み取ってるのバレバレだから!!」



「えぇぇ!?今のバレバレだった!?
凄く上手く出来てると思ってたのに!!」



「今ので!?
私の方がビックリだから!!
そんなに心配してくれなくてもちゃんと楽しいし幸せ。」



私は望にだけ砂川さんとのことを打ち明けた。
高校1年生の時にマナリーと同じクラスになった望。
最初に望と友達になったのはマナリーだった。
誰よりも本気で私に愛を渡してくれるマナリーは、女の子と友達になることが難しいタイプで。



そんなマナリーと望はすぐに友達になり、気が付いた時には私とも田代とも友達になっていて、更に気が付いた時には当たり前のように幼馴染みの私達の中にいた。



そして、幼馴染みのマナリーや田代には何となく言えないような話を望にはすることが出来ていた。



今回は今までの話の中で間違いなく1番大きな話。



「前回は“結婚とか出来ないのかな”って言っていたソっちゃんに彼氏さんが出来て、私も嬉しいよぉ!
何だか不思議な彼氏さんみたいだけどソっちゃんが楽しくて幸せならそれで良いもんね!」



「うん。ありがとう。」



「社内恋愛かぁ、いいなぁ。」



「社内の人ではあるけど社内では本当に普通。
私とその人が並んでた所で誰も私達が付き合ってるだなんて思わないもん。」



「じゃあ2人だけの秘密な感じか~!
2人だけでドキドキキュンキュンしちゃうとか興奮しちゃうね」



「そういうのはないよ、向こうは私のことが“そういう好き”じゃないから。」



「そうなのかなぁ、話を聞いてるとそんな感じはしないけど。」



「普通の男友達よりは勿論“そういう感じ”ではあるけど、そこに恋心はないから。
でも私への“純愛”は感じられてる。」



「“純愛(じゅんあ)”だもんね。」



「ヤバい、田代が言うようなことを言っちゃった!!」



「私も~!!やだ~!!」



可愛い顔と可愛い笑い声で笑う望と一緒に私も笑う。
望の首には金の細いチェーンが掛けられていて、チェーンの先は洋服の中に隠れている。
そこには望の好きな人である小関の“家”の長男から受け取った第二ボタンがある。



「ソっちゃん、本当におめでとう!!
私でよければいつでも何でも聞くからね!!」



隠れている第二ボタンがある所を眺めていた時に望からそう言われ、私は笑い返しながら口にした。



「あの会社で望の為に出来ることを私なりにやってくるから。
望が少しでも幸せになれる為に、私は私に出来ることをやってくる。」



「ありがとう、ソっちゃん。
私の幸せは小関の“家”が財閥の為に存在出来ていることと、小関の“家”の人達が幸せでいること。
ソっちゃんがあの会社の営業としてお金を稼いでくれて凄く嬉しい。」



「あの財閥のこととか小関の“家”とかは関係なく、望自身が幸せになって欲しいと私は・・・私達は思ってるよ。」



「うん、ありがとう。」



望がいつもの笑顔ではなくぎこちない笑顔で笑う。
これを私達が言うと望はいつもこんな感じで笑う。
本人としてはちゃんと笑えているつもりなのだろうけれど、私達は知っている。



望は“そういう家”に生まれた。
自分自身の幸せよりも財閥の繁栄と小関の“家”の人間の幸せを1番に考えるように。
望のお兄さんはそういう完璧な秘書に見えたけれど、私達は望がそういう子ではないとよく知っている。



望の好きな人である小関の“家”の長男、その友達の星野 青(ほしの じょう)。
あの人が望の心の奥底に仕舞っているような小さな願いを引き上げていたと。



高校の時に1度だけ見掛けたことがある青さんのことを思い出しながら、今日も望に聞いてみる。



「最近の一平(いっぺい)さんはどんな感じ?」



小関の“家”の長男について今日も聞く。
財閥の分家の“家”の秘書にはなり切れなかった・・・なり切らないで済んだ、“普通”の望が顔を輝かせながら今日も一平さんのことを私に話していく。



それには今日も青さんに感謝をしていく。



「青さんから返事は来た?」



「全然来ないよ!!
青さんが大学に入ってから返事がなかなか来なくなって、私が高校生になって青さんが大学2年生になってからは全然返事くれなくなっちゃった!!」



「ちゃんと疑問系で送ってみなって。
どうせ日記みたいなメッセージを送ってるんでしょ?」



「疑問系で送ってた時も返事が来なかったから、もう良いんだもん。
既読にはなってるから一応読んではいるみたいだし。
それに・・・」



望が胸にある第二ボタンを洋服の上から握った。
出会った時から望はこの仕草をよくしている。



「青さんにはもういっぱい貰ったから。
返し切れないくらいの恩を、昔いっぱい貰ったから。」



そう言って嬉しそうに笑いながら第二ボタンを握る望。
その顔を見て私は必死に笑顔を顔に貼り付けた。
泣きそうになるのを必死に堪える。



私達は知っている。



私達は知ってしまっている。



望が大切に持ち続けているその第二ボタンが一平さんの物ではないと。
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