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“お姉さん”がそう言いながら、プールサイドの端に寄り・・・体操みたいなのを始めた。



「家から飛び出してくるのも、隣の家のインターフォンを押すのも、そこからうちの方に走ってインターフォンを押すのも見てた。
だから、私も急いで走った。」



俺が固まっていると、“お姉さん”が座って足を広げてまた身体を動かしていて・・・



「お母さんとお腹の中の赤ちゃんを助ける為に、よく動けたね。」



そう、言ってくれ・・・



涙が流れた・・・。



口から、やっと声が出てくる・・・。



でも、それは・・・



それは・・・



「お母さん、死んだらどうしよう・・・。
赤ちゃんも・・・。
俺、救急車の番号が分からなくなった。
お母さんに言われるまで、動くことも出来なかった・・・。
俺のせいで、お母さんも赤ちゃんも死んだらどうしよう・・・。」



涙と一緒に出てきたのは、こんな言葉だった・・・。
さっきからずっと怖かった、こんな考えだった。



そんな俺を、“お姉さん”が立ち上がり・・・見下ろした。



「そしたら、その時考えよう。
もしも、死んでしまったとしても、それは今考えることじゃないから。
その時に何を思うのか、途中である今、想像する必要はないから。」



そんな、そんな、ことを言って・・・。



小さく、笑った。



「私の方が6歳も上だから。
そんな私からの“教え”。」



「教え・・・。」



俺よりも6歳も上の“お姉さん”がそう言うなら、そうなのかもしれない。
そう思ったら、気持ちが少し軽くなった。



お姉さんはプールに向かい、歩き始めた。



「泳ごう、一成君。」



そう言いながら、俺の方は向かず・・・



歩き始めてしまう。



そして・・・



「置いてっちゃうよ。」



と、また言われ・・・。



この“お姉さん”は本当に置いていくので、俺は慌ててついていった。
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