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高校3年、夏休み



「明日何か予定ある?」



602号室の自分の部屋のベッドの上であぐらをかき、窓から夏の夜の空を見上げながらカヤに今日も聞いた。



『勉強もあるし家の手伝いとかがあるかな。』



お互いに受験勉強もある、カヤは神社の手伝いもある。
今年の夏休みは2人ともほとんど高校に行くことはなかった。



「昼飯でも夜飯でもいいから一緒に食おうよ。」



『ごめんね、ちょっと出来そうになくて。』



「カヤの家の方まで行くから。」



『・・・ごめんね?
学校がまた始まったら駅まで一緒に帰ったりファミレスでご飯を食べるのに付き合えるから。』



「夏休み始まったばっかりだろ。
カヤの家まで行くよ、少し話したいし。
家が嫌なら神社は?」



『お父さんに女の私と仲良くしてるのバレないように気を付けてたのに。』



そう言われ・・・



「あの商店街にはじいちゃんとばあちゃんも住んでるからなー・・・。
父さんが最近更に煩くなってるんだよ。」



ベッドの上の棚に置かれた大量のコンドームに苦笑いをする。
昨日新之助にあげたばっかりなのに。



「“高校生だからな、1回のセックスでそんなにやるのか!”とか言って、ガキがガキを作らないようにって性教育の時間がマジで長くなった・・・。」



『ねぇ、私にそんな下ネタ話さないでよ?』



「あ、わり。気ぃ抜いてた。」



『もぉ~っ』



怒りながらもクスクスと可愛い声がスマホから聞こえてきて、俺もそれに釣られて笑った。



そして夏の夜の空を見上げ続けながら自覚する。



今年の夏休みになって初めて自覚をした。



高校1年の夏から毎日のように学校で会っていたカヤと会えなくなり、嫌になるくらい、苦しすぎるくらいに自覚をした。



俺はカヤのことがめっっっちゃ好きらしい。



カヤが俺の“本当に好きな女の子”になっていたらしい。



『またニャンにメッセージを送るから。』



「うん・・・」



『また電話もするし。』



「今日は俺からしたけどな。」



『明日は私からするから。』



「うん、待ってる。」



そう答えて耳に当てているスマホを握り締めた。



高校生の俺には“覚悟を決めたセックス”はまだ出来ないと思いながら・・・。



『ニャン、またね。』



その言葉をスマホの向こう側から今日も言ってくれ、その言葉に焼き付くような胸の痛みが少しだけ和らいだ。



「うん、また。」




.
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