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父さんとの電話を切った後に土手に寝転がった。
いくらか心臓の痛みはなくなり、強い風を感じながら夏の夜の空を見詰める。
黒いと思っていたその色はよく見ると黒くはなかった。
こんなに弱い黒では上書きなんて出来なかったはずで。
その弱い黒の上に“会長”の姿が浮かんできてしまう。
大人になった“会長”の姿が。
俺の“天使”ではない“会長”の姿が。
“いつか私をモデルに描いてよ、ニャン。”
浮かんでいるのは“カヤ”ではないのにその声が聞こえてくる。
いつだって聞こえてきた“カヤ”の声が残っている。
“上手くいくよ、大丈夫。”
いつだって俺を励まし続けてくれた“カヤ”の声が響いてくる。
“天使”ではなかったのに・・・。
俺を画家にする為に現れてくれた“天使”ではなかったのに・・・。
大人になった“会長”の姿を夏の夜の弱い黒の上に浮かべ、過去の出来事に囚われる。
囚われ続ける。
だってあまりにも深く強く“カヤ”が刻み込まれてしまっている。
俺の魂にまで刻み込まれてしまった。
“天使”ではなく“悪魔”でもいいから俺は“カヤ”に会いたい。
“あの頃”の“カヤ”に会いたい。
“カヤ”に会えない“明日”なんて考えられないくらい、それくらい“カヤ”が深く強く俺の中にいる。
「怒らないから出て来て・・・。」
“ニャン”の代わりどころか“朝”の代わりとして俺と一緒にいた“カヤ”。
“天使”ではなくて“悪魔”だったのかもしれない“カヤ”。
でも・・・
「俺は“明日”もカヤに会いたい・・・。」
夏の夜の弱い黒に浮かぶ大人になった“会長”を眺めながら呟いた。
呟いた、その瞬間・・・
ヒョコッと現れた・・・。
夏の夜の空と大人になった“会長”の手前に、ヒョコッと現れた。
めちゃくちゃ良い女が現れた。
俺のタイプど真ん中だった“カヤ”を一瞬で上書きしてしまう程の女が現れた。
夏の夜の空も大人になった“会長”の姿も一瞬で上書きしてしまう程の女が現れた。
それくらいだった。
それくらい俺の身体も心臓も魂も震えた。
深く強く刻み込まれていた“カヤ”を上書きし、その女が俺の魂ごと掴んできた。
それくらいだった。
それくらいの“作品”だった。
この女の顔面というキャンバスにのっている色は、それくらいの“作品”だった。
「カヤのその顔がめちゃくちゃタイプだからセックスしたい。」
本当に好きな女の子とか覚悟を決めたセックスとか、“天使”とか“悪魔”とか、そんなことは何も思い浮かばなかった。
ただただ、目の前にいる綺麗な大人の女性になった“カヤ”とセックスがしたかった。
この“カヤ”に掴まれた魂が震える程、猛烈に“カヤ”とセックスがしたかった。
“あの頃のカヤ”も“夏の夜のカヤ”も“天使”も“悪魔”も綺麗サッパリ消えてなくなる程、それくらいだった。
それくらいに掴まれた。
囚われていた過去の出来事が一瞬で消え去る程、それくらいに“今”の“カヤ”に掴まれた。
いくらか心臓の痛みはなくなり、強い風を感じながら夏の夜の空を見詰める。
黒いと思っていたその色はよく見ると黒くはなかった。
こんなに弱い黒では上書きなんて出来なかったはずで。
その弱い黒の上に“会長”の姿が浮かんできてしまう。
大人になった“会長”の姿が。
俺の“天使”ではない“会長”の姿が。
“いつか私をモデルに描いてよ、ニャン。”
浮かんでいるのは“カヤ”ではないのにその声が聞こえてくる。
いつだって聞こえてきた“カヤ”の声が残っている。
“上手くいくよ、大丈夫。”
いつだって俺を励まし続けてくれた“カヤ”の声が響いてくる。
“天使”ではなかったのに・・・。
俺を画家にする為に現れてくれた“天使”ではなかったのに・・・。
大人になった“会長”の姿を夏の夜の弱い黒の上に浮かべ、過去の出来事に囚われる。
囚われ続ける。
だってあまりにも深く強く“カヤ”が刻み込まれてしまっている。
俺の魂にまで刻み込まれてしまった。
“天使”ではなく“悪魔”でもいいから俺は“カヤ”に会いたい。
“あの頃”の“カヤ”に会いたい。
“カヤ”に会えない“明日”なんて考えられないくらい、それくらい“カヤ”が深く強く俺の中にいる。
「怒らないから出て来て・・・。」
“ニャン”の代わりどころか“朝”の代わりとして俺と一緒にいた“カヤ”。
“天使”ではなくて“悪魔”だったのかもしれない“カヤ”。
でも・・・
「俺は“明日”もカヤに会いたい・・・。」
夏の夜の弱い黒に浮かぶ大人になった“会長”を眺めながら呟いた。
呟いた、その瞬間・・・
ヒョコッと現れた・・・。
夏の夜の空と大人になった“会長”の手前に、ヒョコッと現れた。
めちゃくちゃ良い女が現れた。
俺のタイプど真ん中だった“カヤ”を一瞬で上書きしてしまう程の女が現れた。
夏の夜の空も大人になった“会長”の姿も一瞬で上書きしてしまう程の女が現れた。
それくらいだった。
それくらい俺の身体も心臓も魂も震えた。
深く強く刻み込まれていた“カヤ”を上書きし、その女が俺の魂ごと掴んできた。
それくらいだった。
それくらいの“作品”だった。
この女の顔面というキャンバスにのっている色は、それくらいの“作品”だった。
「カヤのその顔がめちゃくちゃタイプだからセックスしたい。」
本当に好きな女の子とか覚悟を決めたセックスとか、“天使”とか“悪魔”とか、そんなことは何も思い浮かばなかった。
ただただ、目の前にいる綺麗な大人の女性になった“カヤ”とセックスがしたかった。
この“カヤ”に掴まれた魂が震える程、猛烈に“カヤ”とセックスがしたかった。
“あの頃のカヤ”も“夏の夜のカヤ”も“天使”も“悪魔”も綺麗サッパリ消えてなくなる程、それくらいだった。
それくらいに掴まれた。
囚われていた過去の出来事が一瞬で消え去る程、それくらいに“今”の“カヤ”に掴まれた。
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