上 下
108 / 122
9

9-17

しおりを挟む
「・・・わ!!!!」



慌てて剛士君の後ろをついていくと、剛士君の大きくなった身体の向こうからお父さんの驚いた声が聞こえた。
剛士君が裸で出てきたからだと思う。



「剛士君、おはよう・・・。
あれ・・・瞳に服渡したけどな・・・。」



「剛士君、あの・・・これ、服!」



「瞳のお父さん・・・写真、撮ってくれませんか?
俺の身体・・・どうなってますか?」



剛士君が怖いくらい真剣な顔でお父さんを見る。
そんな剛士君を・・・お父さんは目を少し輝かせながら見た・・・。



1階の写真屋、アヤメさんが立っていた場所に剛士君も裸で立つ。
そんな剛士君をお父さんが壁ギリギリまで下げたカメラを通して見る・・・。



すぐにシャッターの音が聞こえるかと思ったら聞こえなくて・・・。



お父さんはもう1度肉眼で剛士君を見た後、またカメラを通して剛士君を見て・・・それから今度は私の方を見てきた。



「本当に・・・アヤメちゃんだったの?」



「うん、アヤメさんだったよ?」



「何で分かったの・・・?
僕にはその・・・下半身の感じが毛がなくてなんとなく同じだな~くらいにしか思えなくて。」



お父さんがそう言ったら、立っていた剛士君が吹き出して大笑いをした。
それに私もお父さんも笑い・・・お父さんが笑いながらもカメラを通し剛士君を見て、目を輝かせてシャッターを押した。



その瞬間、私も瞬きをした。



「傷痕は随分と綺麗になったよ。
でも・・・まだ残ってる。
本当に申し訳ないけど、そんな剛士君が凄い魅力的だよ。」



「あの男の手の残像はほとんど見えない。
でも忘れることは出来ないからな。
きっと死ぬまで忘れられない。」



「それでいいんだよ。
むしろ、それ“が”いいんだよ。
僕も奥さんが死んでしまった時は死ぬまで忘れられない。
きっとその時、心に深い穴が空いたから・・・僕は分かるようになったんだと思う。」



お父さんがシャッターを何度も押しながら裸の剛士君を見る。



「カメラを通して、ケガをしている人が分かるようになった。」



初めて聞く話しに驚きながらも私は瞬きを繰り返す。



「剛士君のその傷痕は、それ“が”いいんだよ。
だから剛士君は優しい子で人を思いやれる子なんだよ。
少しもケガや傷痕がない人の方が怖いと僕はいつも思っている。
ケガをしたことがない人は、他人のケガにも気付けないしそのケガがどれ程痛いのか想像も出来ないからね。」



「それは・・・何となく分かります。
俺の友達にも1人そんな奴がいますから。」



剛士君はそう言って優しい笑顔で笑い・・・



「瞳のお父さんってフリーのカメラマンなんですよね?
瞳が妊娠したら、落ち着くまで藤岡ホールディングスの“思い出カメラマン”として定期的に来て貰うこと出来ますか?」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

恋せよ乙女のオカマウェイ!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:400

社内恋愛狂想曲

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:424

孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる

BL / 完結 24h.ポイント:1,365pt お気に入り:691

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,531pt お気に入り:1,465

氷の公爵はお人形がお気に入り~少女は公爵の溺愛に気づかない~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:603pt お気に入り:1,595

処理中です...