20 / 202
2
2-6
しおりを挟む
先生とそんな会話をしながら用意してくれたご飯を全て食べ、持ってきてくれていた水で薬も飲んだ。
それを見届けた先生は安心した顔で小さく笑い、お盆を持って寝室を出ていった。
少しだけ開いている寝室の扉の向こう側、そこからカチャカチャという食器を洗う音が聞こえてきて、その音を聞きながら眠くなってきたようにも思う。
眠くなってきたようにも思うけど・・・
でも・・・
でも・・・
私は布団から慌てて上半身を起こし、それから立ち上がろうとした。
でも身体に力が入らなくて・・・。
それにも慌てながら叫んだ。
「先生・・・っ吐きそう・・・っ」
叫んだはずの声は思ったよりも出ていなくて、でももうこれ以上は大きな声は出せなくて。
両手で口を押さえてしまったし、大きな声どころか小さな声ももう出せないくらいで。
口を押さえながら必死に立ち上がろうとしていた時、寝室の扉が勢い良く開いた。
涙が溜まってきた目でそっちを見ると、先生が洗面器を持ってきてくれていた。
そしてそれを持ったまま私の前にしゃがんでくれ、洗面器が私の顔の下に来たのを確認し・・・
私は吐いてしまった。
先生が初めて作ってくれた料理も、買ってきてくれた桃缶も、吐いてしまった・・・。
それだけではなく・・・
「スーツ・・・ごめんなさい・・・クリーニング代・・・」
先生のスーツにまでついてしまい、苦しみながらもその言葉だけは出した。
絶対に高級なスーツだろうし、ちゃんと手入れをしているのも知っているし、なんならスーツを汚されてムカついていた所も見ている。
「そんなの気にすんな。
気持ち悪いのがなくなるまで全部出せよ。」
先生の口からそんな優しい言葉が出て来て、私の背中を優しくて擦ってくれる。
それを苦しい中でもしっかりと感じて、何の涙かもうよく分からない涙を流しながらまた吐いた。
「作りすぎたな、ごめんな。」
先生に止められていたにも関わらず全て食べた私が悪いのに、先生がそんな優しい謝罪をしてくれる。
「せっかく作ってくれたのに、ごめんなさい・・・。」
「夜もまた作るから。」
そう言って・・・
私の頭をワシャワシャと撫でてきた。
「一瞬だけ事務所に行ってくるから大人しく寝てろよ!?」
私に新しいスウェットを渡してくれたり、洗面所に連れていってくれたり、部屋の中を綺麗にしてくれた先生。
寝室の少しだけ開いている扉から「行ってくる」と声を掛けてきた先生は、やっと新しいスーツに着替えていた。
その姿はやっぱり気取っているように見えてしまうけれど、嫌な男とは思わなかった。
「うん、行って。」
短くそう答えると、先生は無言で私のことをしばらく見詰め・・・
「行ってきます。」
少しだけ苦笑いをして玄関へと歩いていった。
それを見届けた先生は安心した顔で小さく笑い、お盆を持って寝室を出ていった。
少しだけ開いている寝室の扉の向こう側、そこからカチャカチャという食器を洗う音が聞こえてきて、その音を聞きながら眠くなってきたようにも思う。
眠くなってきたようにも思うけど・・・
でも・・・
でも・・・
私は布団から慌てて上半身を起こし、それから立ち上がろうとした。
でも身体に力が入らなくて・・・。
それにも慌てながら叫んだ。
「先生・・・っ吐きそう・・・っ」
叫んだはずの声は思ったよりも出ていなくて、でももうこれ以上は大きな声は出せなくて。
両手で口を押さえてしまったし、大きな声どころか小さな声ももう出せないくらいで。
口を押さえながら必死に立ち上がろうとしていた時、寝室の扉が勢い良く開いた。
涙が溜まってきた目でそっちを見ると、先生が洗面器を持ってきてくれていた。
そしてそれを持ったまま私の前にしゃがんでくれ、洗面器が私の顔の下に来たのを確認し・・・
私は吐いてしまった。
先生が初めて作ってくれた料理も、買ってきてくれた桃缶も、吐いてしまった・・・。
それだけではなく・・・
「スーツ・・・ごめんなさい・・・クリーニング代・・・」
先生のスーツにまでついてしまい、苦しみながらもその言葉だけは出した。
絶対に高級なスーツだろうし、ちゃんと手入れをしているのも知っているし、なんならスーツを汚されてムカついていた所も見ている。
「そんなの気にすんな。
気持ち悪いのがなくなるまで全部出せよ。」
先生の口からそんな優しい言葉が出て来て、私の背中を優しくて擦ってくれる。
それを苦しい中でもしっかりと感じて、何の涙かもうよく分からない涙を流しながらまた吐いた。
「作りすぎたな、ごめんな。」
先生に止められていたにも関わらず全て食べた私が悪いのに、先生がそんな優しい謝罪をしてくれる。
「せっかく作ってくれたのに、ごめんなさい・・・。」
「夜もまた作るから。」
そう言って・・・
私の頭をワシャワシャと撫でてきた。
「一瞬だけ事務所に行ってくるから大人しく寝てろよ!?」
私に新しいスウェットを渡してくれたり、洗面所に連れていってくれたり、部屋の中を綺麗にしてくれた先生。
寝室の少しだけ開いている扉から「行ってくる」と声を掛けてきた先生は、やっと新しいスーツに着替えていた。
その姿はやっぱり気取っているように見えてしまうけれど、嫌な男とは思わなかった。
「うん、行って。」
短くそう答えると、先生は無言で私のことをしばらく見詰め・・・
「行ってきます。」
少しだけ苦笑いをして玄関へと歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる