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「そんなわけないじゃん。
朝人も見掛けたことくらいはあるかな?
私って会社の男の人達から“佐伯ちゃん”って呼ばれてるくらいなんだよ?
佐伯さんがあんな感じだからさ、佐伯さんの子どもの頃みたいだってからかわれて。
やめてって言ってるのに誰もやめてくれない。」



「見掛けたことはある。
お前が怒りながら文句言ってて、言われてみれば確かに男どもはすげー楽しそうにしてた。
興味ある女をからかって反応見て喜んでるんだろうな。」



「ないない、絶対そういうんじゃない。
金曜日の飲み会だって私は端にポツンッと座ってて、みんな佐伯さんと羽鳥さんを囲ってたからね?」



「あれは観賞用だろ。
お前の会社の奴らも自信家が多いだろうし、ワンチャン狙ってみただけだろ。」



「そんなレベルでもなかったからね?
私なんてただ悪口言われただけで、若松さんが隣に座ってくれるまでは本当に1人でポツンッとしてたんだから。」



「あっそ。
でもお前も周りもまだ若いからな。
どうせ付き合ったり別れたり、また他の奴と付き合ったり別れたりを繰り返すんだろ。」



「朝人はそんな感じだったの?」



「当たり前だろ。
面倒になるほどモテたからな。」



「付き合う時はどうやって付き合ってたの?」



「女の方からめちゃくちゃ近寄ってくるから、その流で。」



「近寄るって、どうやって?どんな風に?
心の距離みたいなやつ?
それとも物理的な距離?」



「どっちもだな。
あからさまに分かりやすく近寄ってくる。」



朝人からの答えを聞き、それにはもっと自信がなくなった。
だって、私はあからさまに分かりやすく朝人に近寄っている。
変な話、おまたまで広げて近寄ったくらいだった。



あの時の“普通”だった朝人の顔を思い出し、私はまた泣きそうになってきた。
それを我慢し、クレープを口に全て詰め込み、全てを飲み込んでから、朝人に言った。



「どうやって近寄ればいいの?
具体的に教えてよ、朝人。」
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