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「2人とも名刺持った?」



「はい。」



羽鳥さんからの確認に私は返事をした。
でも佐伯さんからの返事はなくて。
不思議に思いながら隣に立つ佐伯さんを見上げると、お洒落な名刺入れを持ってそれを持ち上げていた。



羽鳥さんに連れられ会議室へと向かう。
リクルートスーツではなく、膝丈の長さのタイトスカートのワンピースと高めのヒールの靴、黒い長めの髪の毛は少しだけ巻いてみた。
ノートとボールペン、名刺入れを持ってドキドキとしながら歩いていく。
今日の為に買ったこの姿で歩いていく。



隣に並ぶ佐伯さんをチラッと確認する。
佐伯さんは今日も黒色のノースリーブのサマーニットを着ていて、胸元は開けずに鎖骨の上まで隠れている。
サマーニットは胸のところで大きく膨らみ、タイトスカートからはくびれもお尻も太ももも凄いのがとにかくよく分かる。



可愛いけれどちゃんと大人な顔、そこに今日もお化粧が綺麗にされていて、お昼休みに必死に直した私の顔よりもやっぱりずっと可愛くて綺麗な顔をしている。



私の10年後みたいな佐伯さんのことを見て、和泉かおりの若い頃にソックリな佐伯さんのことを見て、先生はどう思うのか凄く怖いと思った。



そして、今でも充分格好良い先生ことを見て、佐伯さんがどう思うのかも凄く凄く怖いと思った。



凄く凄く怖いけれど・・・



先生は私のことも見てくれるはずで。



だって、口の悪い先生のご飯を私は作れる。
それだけなら佐伯さんにも負けない。



それに今日は初めてこんな格好をして先生の前に立つ。
今年23歳になる私は大人になった。
先生だって少しはビックリしてくれるはずで。
少しは私のことを大人の女として見てくれるはずで。



私のことを大人の女として認識してくれるはずで。



少しでも。



少しだけでも・・・。



そんな期待を胸に、羽鳥さんの後ろに続き会議室へと入った。
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